葛城家にはミサトとシンジの他にも同居している生物がいる。
しぶとく生き残ったカブトガニモドキが3匹。
名前を、ジョナサン、ジョージ、ジョセフと言う。
本当にオスなのかは不明だ。
彼ら(?)だけではない。
あの一週間、後に『葛城ミサト邸サルベージ計画』と言われる日々の殆どを最前線で過ごした鳥類、
その名もペンペン。
フルネームは、ペンペン=ド=チャーリー=チャーチル=ペラドゥンナ=ピーター=タランティーノ=プルプルワーズ八世である。
世にも珍しい温泉ペンギンである。
決して今まで書き忘れていた訳ではない。
信じてくれ。
私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!
ACT.03=B
A transfer
or
My first quarrel.
writen by:MIYASOH
相も変わらず第3東京市立第2中学校。
何処から見ても第3東京市立第2中学校である。
文句の付けようもない事実。
相も変わらず2年A組。
(中略)
相も変わらず3バカトリオ・・・・・・・おや?
ジャージ馬鹿とボンヤリした馬鹿の顔に包帯が巻いてある。
「トウジ、シンジ、どうしたんだよ。その顔」メガネ馬鹿―――ケンスケが登校したばかりの2人に尋ねた。
「いやー、センセと途中で行き会って歩いとったらチョード三中の奴らが絡んできおってな。まあ時間もないさかいパッパッパーって片付けたろと思ったんやけどな、いやこれがなかなか強敵で。本格的にボコられる前にギリギリトンズラこいたわけや」トウジが盛大に身振り手振りを加えつつ説明をする。
「でもトウジがいてくれて助かったよ。」
「ふーん。でもおかしいな。今まで三中の奴らが他のとこの生徒に手を出すなんてなかったんだけどな」
「トップが替わったんかも知れんな」トウジが眉間にしわを寄せる。
「鈴原!どうせ逃げるなら最初から逃げなさいよ!」ヒカリが近寄ってきてトウジを叱る。
「な、なんや!イインチョには関係ないやろ!それに一発も殴らんで逃げるなんて男の沽券に関わるわ!」トウジが言い返す。
「・・・・・・・・・・!!」
「・・・・・・・・・・・!!」
シンジとケンスケが口喧嘩をする2人を見てクスリと笑う。
ツンツン
シンジの肩が突かれる。
レイだ。
先週退院してまた学校に通いだしたのである。包帯はまだ取れてない。
「・・・・・・・・・お揃い」そう言って自分の頭に巻かれている包帯を指差し、ニヘラと笑う。
「・・・・・・・・・そ、そうだね」シンジが答える。
「・・・・・・・・・相田くんも」そう言って鞄から包帯を出してケンスケに渡す。
「・・・・・・・・・イインチョさんも」
「おーい席付け―。出席取るぞー」一時間目の教師がやって来た。
ガラリ
教室のドアを開ける教師。
沈黙。
ピシャリ
すぐドアを閉めて廊下を引き返す教師。
それを見つめる40人からの包帯まみれの生徒。
レイは幸せそうだった。
ペーペペペ、ペッペッペペ、ペーペペペペー
教室に電子音が響き渡る。
『ああ、人生に涙あり』である。
セカンドインパクトを経験しても未だ変わらぬ某時代劇の主題歌である。
『マンネリではない。文化だ』そんなフレーズが似合う番組だ。
レイの携帯電話だ。
「・・・・・・・・・はい、はい。・・・・・・・・問題ありません。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ラーメンが良いです」
ピッ
「・・・・・・・・・・碇くん。非常収集。・・・・・・・・・先、行くから」
シンジの方を向きそう告げるレイ。
ちなみに夕飯の献立のリクエストも聞かれたらしい。
「「ただいま東京地方を中心とした関東、中部の全域に特別非常事態宣言が発令されました。すみやかに指定のシェルターに避難してください。繰り返します。ただいま・・・・・・」」
街中のテレビ、ラジオからはずっとこんなアナウンスが流れていた。
ゆっくりと海上を浮遊する使徒。
膨らんだ涙滴型の頭部、殆どなんの抑揚もない棒状の胴体。その境目には赤いコアがある。
首の所から生えている腕らしき物は合掌でもするかのように合わせられている。
ネルフの発令所のメインモニターに映る使徒。
「目標を光学で補足!」
「総員第一種戦闘配置」冬月が宣言する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
地響きをさせてジオフロントに収容されるビル。
それと入れ替わりせり上がってくる兵装ビル。
「第3新東京市戦闘形態に移行します!兵装ビル現在対空迎撃システム稼働率48%!」
「碇司令の居ぬ間に第四の使徒襲来。意外と早かったわね」ミサトが不敵な表情で呟く。
「前は15年、今回は3週間のブランクですからね」日向がモニターから目を離さず答えた。
「どうせなら200年くらいブランクがあったら良かったんだけどな」狩野がぼやく。
「それだったら別に100年でも良いじゃないですか」日向が混ぜっ返す。
「馬鹿だなー。100年後ならまだオレ生きてるかもしれないだろ?保険でもう100年付け足しといたんだよ」
どうやらこの男の頭には平均余命と言う言葉がないらしい。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン
兵装ビルから発射されるミサイル。
しかし使徒は気にせず飛び続ける。
「税金の無駄使いだな」冬月が呟く。
同感だ。
「葛城くん、EVA初号機発信準備!」
「はっ!シンジ君用意はいい!?」マイクに向かって問うミサト。
「大丈夫です」モニターに映るエントリープラグ内のシンジが答える。
どうやらLCLの注水には慣れたらしい。
・・・・・・・・3号はまた溺れたようだ。
さすがに2回目なので誰も気にしていない。
この世界、中途半端なボケでは生き残れないのだ。
諸行無常。
第334地下避難所。
「ああ〜〜〜!一回で良いから戦闘シーン見てみたいよな〜〜」ケンスケがテスタパターンしか放送しないテレビチューナーに向かってぼやく。
「アホゥ!無理に決まっとるやろ」トウジがケンスケの隣に腰を下ろしながら言った。
「でもさー、次何時敵が来るか分かんないんだぜ。・・・・・・・・・・なあ、内緒で外出ちゃおうぜ」ニヤリ。
悪魔が微笑むとしたらこんな微笑みであろう。
「ナニ言っとんのやアホゥ!!・・・・・・・・・ワッシらが外にいたらセンセが思いっきり戦えへんじゃろアホ!!」
「でも、見たいよなー」
それっきりだった。
ガゴン
EVA初号機が地上に姿を現した。
使徒はゆっくりと腕を開き、体を垂直にさせる。
頭部は前を向いたままだ。
差し詰め戦闘形態とでも言うつもりなのだろう。
しゃらくさい。
「シンジ君!さっきも言ったけど目標のATフィールドを中和しつつパレットガンで攻撃。いいわね!」ミサトが確認する。
「はい!」
ババババババババババババババババ
次々と発射される劣化ウラン弾。
次々と使徒に着弾する。
ババババババババババババババババ
まだ撃ち続ける初号機。
ババババババババババババババババ
もうもうと立ちこもる爆煙。
「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ」
シンジは青い顔をさせながらうわ言の様に繰り返していた。
ついに着弾の煙で使徒の姿が見えなくなる。
「撃ち方やめ!!」ミサトが叫んでいる。
「落ち着け!!いったん止めろシンジ!!」狩野の声も聞こえる。
カキンカキンカキン
弾切れを示すランプが点く。
「はっ!て、敵が見えない!」やっと我に返ったシンジ。
ハア、ハア、ハア
シンジの息づかいしか聞こえない。
ゴクリ
ムリヤリ唾を飲み込む音。
次の瞬間―――
ズシャア!!
使徒の放った鞭状の光がパレットガンを両断する。
「うわっ!!」
バランスを崩しかける初号機。
追い討ちをかける使徒。
なんとか兵装ビルの後ろに隠れる初号機。
ハア、ハア、ハア
息が上がっているシンジ。
「シンジ君!!そのままビルを盾にして接近、格闘戦に持ち込みなさい!!」ミサトの指示が飛ぶ。
「せ、接近戦なんて出来ないですよ!」シンジが声を震わせて言う。
当然だ。
ワタクシも接近戦なんて単語を聞いて失禁しかけたのだから。
危なかった。
「シンジ!あの手の武器は逆に近づいた方が怖くないんだ!!」狩野も叫んでいる。
騙されてたまるか。(3号は前回の戦闘以来少々人間不信に陥ってます)
「や、やってみます!!」
ああ!シンジまでワタクシを裏切った!!
兵装ビルを盾にして使徒に接近する初号機。
手にはプログナイフが握られている。
ズオン
すぐ隣のビルを使徒の鞭が薙ぐ。
気付かれている。
初号機はまた移動を始めた。
何度目かの移動の後、
なんとか使徒の真後ろにまで接近できた。
「いける・・・・・・」シンジが呟いた。
「シンジ君、ちょっと待っ・・・・・・・・・・」ミサトが呼び止める。しかし―――
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
シンジが特攻した。
ビクン!
伸びきるアンビリカルケーブル。
動きの止まる初号機。
ゆっくりと振り返る使徒。
眼前に迫る光の鞭。
「くそォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
シンジの絶叫。
バシュッ!!
ビー!ビー!
「アンビリカルケーブル、パージ!!」叫ぶ青葉。
「EVA内臓電源に切り替わりました!!」マヤも声を上げる。
「シンジ君!!活動限界まであと4分53秒よ!!退却しなさい!!!」ミサトの声はシンジに届いたか―――
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン、ガシン
プログナイフを構え、走る初号機。
ズオッ!!
初号機の腹部に突き刺さる光の鞭。
ガギッ!!!
使徒のコアに突き刺さるプログナイフ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「初号機活動限界まで180秒!!」
「ひょっとしてシンジ君今・・・・・」ミサトが小声で狩野に問う。
「・・・・・・・・・・・かもな」狩野も小声で答える。
「ま、これなら勝てるだろ。時間も150秒以上残ってるしな」そう言ってまたメインモニターを見やる狩野。
(・・・・・・・・・彼をどう使う?)ミサトの頭には様々な戦術が浮かぶ。
初号機の活動限界が残り100秒を目前にして、
使徒は完全に沈黙した。
「ボクは、ボクはどうやって勝ったんだ・・・・・・・・・・・・・・?」
外にでればまた割れんばかりのセミの求愛の声が聞こえるだろう。
こうして生き延びる事が出来たのだから。
今回は後半シリアスでしたね。
どーも作者のミヤソーです。
シンジとトウジが和解しちゃってるのでシェルターを抜け出さない事にしたんですけど如何でしたでしょうか?
しかし毎回(と言ってもまだ2回ですが)苦しむのが戦闘シーン。
なるべく原作と違う展開にしようと思ってるので頭を悩ませています。
次回ですけど、たぶんAパート、Bパートには分かれないと思います。(予定ですが)
シンジが家出する理由がないっぽいんですよ。
どー言う展開にしよう。
うーむ。
それではまた次回お会いしましょう!
今回のメッセージは渚カヲル君からです。
「シンジ君ハアハア。その特攻を仕掛ける時の顔も・・・・・・」
(無言で電報を握りつぶすミヤソー)