時に、西暦2015年。

 西暦2000年にシバかれたセカンドインパクトっちゅーどえりゃー災害によってな、もーそりゃ大変だったんじゃ。南極の氷は融けはるし、地軸はわやくちゃになりはるし、ぎょーさん街が沈みよるし、地震は起こるは雷は鳴るは火事んなって半鐘は鳴るは親父はやって来るは・・・・・・・。もーそりゃ大変だったんじゃ。もーそりゃ大変だったんじゃ。

 まあ、でも人間っちゅーんは逞しゅーてな、何年もすりゃ何とか前とほぼ変わらん生活を送れるよーなったちゅーわけや。

 30億からの人がお隠れになってもーたけどな。

セカンドインパクト・使徒戦争を生き延びた謎の老人、

フランクリン=ナイスセーター氏の手記より抜粋



私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!

ACT.01=A
使徒、襲来
あるいは
父の替わりの乳じゃなく、なんかデカイのが迎えにきた


writen by:MIYASOH



 「まいったなあ」公衆電話の受話器を置くと少年は呟いた。

 年のころなら13,4歳。美少年と言うわけではないが中性的な面影をしてる華奢な少年だ。中学校の制服らしい白のワイシャツと黒いスラックスを穿いていた。



 Voooooooooooom



 少年の上空を国連軍のV−TOL、つまり戦闘機が飛んでいく。

 「こんな事ならやっぱり来るんじゃなかったかなあ」

 そう呟くと少年は胸ポケットから1枚の写真を取り出した。

 タンクトップにホットパンツと言うなかなか色っぽい格好をした美女が写っていた。キスマークと『ワタシが迎えにいくから待っててね 葛城ミサト』というメッセージ、さらにそのこぼれんばかりのの近くには『ココに注目』と書かれていた。あーもういい乳してやがるなコノヤロー!

 「待ち合わせは無理かなー。でもなーこんなデカイ乳綺麗なお姉さんが迎えに来てくれるなんてなー」少年はやや前かがみになって鼻の下を伸ばしていた。

 そう!少年はムッツリ(ムッツリ助平の略)だったのだ!

 「ほっといてよ!・・・・・・でもなー、この人父さんとどういう関係なんだろう。まさか『シンジ、この人が新しいお母さんだ』とかいわれるのかな。そしてそして一緒に暮らす事になって『シンジクン、最近お父さん仕事ばかりでワタシ寂しいの』とかいう展開になっちゃって。それでそれで『ダダダダダ、ダメですよお義母さん。ぼ、僕たち義理とは言え親子じゃないですか』とか僕は言うんだけど・・・・・・」少年は妄想の世界にトリップしていた。

 やはりムッツリだ。



 ドゴーン、ドゴーン



 少年の独り言が18禁フィールドを展開する直前に轟音が響いた。間一髪だ。危うくこのページが発禁処分を喰らうところだった。ありがとう轟音!ありがとう謎の巨大生物!

 謎の巨大生物?

 山の合間から謎の巨大生物が歩いてきてた。

 巨大生物は大体人型をしていた。肩はまるで水泳選手のように張り出しており、首はなく胸の真ん中に仮面らしき物が据えてあった。その仮面の下に赤い球体が鎮座ましましていた。

 何処から見ても立派な謎の巨大生物。もしあれを謎の巨大生物ではないという人がいたら連れてらっしゃい。アタシがとんと意見差し上げやしょう。

 謎の巨大生物は国連軍の攻撃を受けてもビクともしなかった。

 「本当に来るんじゃなかった」少年が呟いた。

 奇遇である。

 ワタシ(ナレーター)もそう思った。















 巨大なディスプレイに移動物体とその予想進路が映し出されていた。

 「正体不明の物体は本所に対して進行中」

 「目標を映像で確認。メインモニターにまわします」メガネのオペレーターが告げる。

 メインモニターに映る謎の巨大生物。相もかわらずの暴れっぷりである。

 「・・・・・・・・・・15年ぶりだな」白髪・長身・初老と3拍子そろった男が直立不動のまま呟いた。

 「ああ、間違いない」ヒゲ・悪人面・中年とやはり3拍子そろった男が椅子に座り口の前で手を組んでそれに答えた。

 「使徒だ」ヒゲが断定した。

 以後、謎の巨大生物を『使徒』と称します。皆さん一つ賢くなりましたね。















 相変わらず効きもしない攻撃を繰り返す国連軍。使徒の腕から光の槍が伸びて戦闘機を撃墜する。バカヤロー!そんな事に使う金があったら他のところにまわせ!税金払ってんだぞ!

 もくもくと煙を上げながら墜落してくる戦闘機。

 気のせいかすごく近くに落ちてくるように見える。

 被害妄想だろうか。

 「被害妄想じゃないよ・・・・・・」少年が呆然と呟いた。





 戦闘機が地面と熱い抱擁を交わす。






 光。






 爆音。






 衝撃は来なかった。

 赤いミニクーパーが急ブレーキをかけて目の前に止まっていた。

 「碇シンジだなっ!死にたくなかったら早く乗れ!」

 なんてこった。ミニクーパーのドアを開けて叫んだのはさっきまで少年が妄想していたデカイ乳綺麗なお姉さんではなく白髪で中年の巨漢だった。















 「目標は依然健在。現在も第3新東京市に向かい、進行中」ロン毛のオペレーターが淡々と告げる。

 「総力戦だ。厚木と入間も全部挙げろ」

 「出し惜しみはなしだ!!なんとしても目標をつぶせ!!」

 「戦車隊出動ー!!皆殺しだー!!!」てんやわんやの国連軍上層部。



 グオオオオオオオオ



 使徒に向かって発射される大型ミサイル。



 それを片手で受け止めて引き裂く使徒。



 光。



 メインモニターには爆炎の中を悠然と歩き続ける使徒の姿。

 「何故だ!直撃の筈だぞ!」

 「なんてこった!もう1度言う。なんてこった!」

 相変わらずてんやわんやの国連軍上層部。

 「やはりATフィールドは健在か」

 「ああ、使徒を相手に通常兵器は役に立たんよ」指を鼻に突っ込みながら会話するヒゲと初老の男。完全に国連軍上層部を馬鹿にしている。

 「N2地雷を使え!コノヤロー!」上層部の1人が受話器に向かって怒鳴った。















 使徒から高速離脱する戦闘機群。それは沈没船から逃げ出すネズミの群れに似ていた。

 「なんか戦闘機が追い抜いて行きますよ」少年が窓から空を見上げて言った。

 「なに!」慌てて後ろを振り返る巨漢。ハンドルが疎かになっている。

 「おぉい!待ってくれよ!N2地雷使う気かよ!バカヤロー!」巨漢は叫ぶとアクセルを踏み込んで車を加速させた。

 「幸せになる前に死んでたまるかぁっ!!!!」魂の叫び。



 でも、



 間に合わなかった。





 光。





 爆音。






 衝撃。





 熱。





 痛み。






 「いいやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 それが誰の悲鳴だったかは不明である。

 ゴロゴロと横転を繰り返すミニクーパー。

 最終的には横倒しの格好で止まった。

 ノロノロと車から這い出る2人。煤で汚れていた。

 お互いに顔を見合わせて溜息をついた。










 「残念ながら君達の出番は無かったようだな」強大な電磁波によってブラックアウトするモニターから眼を離し、さっきのお返しとばかりに指を鼻に突っ込みながらヒゲに向かって勝ち誇る上層部の1人。他の上層部の皆さンはお互いに抱き合ってたり、泣いていたり、ワイフの写真にキスをしてたり、失禁してたりと歓喜の表現に忙しそうだった。















 「せーの!」



 ガゴン



 横転したミニクーパーを力を合わせて元に戻す2人。

 「いやー、生きてるって素晴らしいね。愛車はスクラップ寸前、顔は煤だらけ、でも生きてるって素晴らしいね!あーでも本当に助かったわ」盛大に礼を言う巨漢。アメリカ流にハグ(抱擁)して背中をバシバシと叩く。

 「いえ・・・・・ボクの方こそ助かりました。・・・・・・・・・葛城さん」少年は認めるのがすごく嫌そうだったけどこの巨漢をあのデカイ乳と認識しようとした。

 なんという忍耐力。これが彼流の処世術なのだろうか。

 「・・・・・・・・・・は?」

 「あ、あの葛城さん。ボクには上手く言えないんですけど自分の幸せに向かって真っ直ぐに進むのって良い事だと思います!」良いこと言ったぞ、少年!

 「チョット待て」

 「たしかに写真のようなダイナマイトバディの方が嬉しいですけど、でも葛城さんはそんな自分のあまりにも女を意識させられる体を嫌って今の『胸毛もギャランドゥも装填完了!出撃だぁー!!』な体になったんでしょう!」どんどんボルテージが上がっていく少年。

 「待てっつの」

 「ボクも!ボクも自分が嫌いなんです!でも葛城さんの生き様を見て、『努力すればきっと自分の好きな自分になれる!』って気がついたんです!!父さんも!父さんもボクにそれを気付かせる為に葛城さんと出会わせてくれたんですね!!本当にありがとうございます葛城さん!!!ありがとうございます!!!」涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら葛城(?)に抱きつく少年。なんと言う感動的なシーン!今1人の少年の心が補完されようとしている!!

 「いいから待てって言ってるだろ、ガキ!!」葛城(?)が抱きついて泣いている少年をムリヤリ剥がす。

 「お前に言いたい事が2つある!
 1つ目はオレには胸毛が生えていない事!
 2つ目はオレにはギャランドゥも生えていない事!!
 そして3つ目!オレは葛城ミサトじゃない!!!
 あ、3つか」このネタ著作権は問題ないのか?

 「・・・・・・・・・・・へ?」呆然とする少年。当然である。やっと今まで心の中にあったモヤモヤを晴らしてくれる人に出会ったと思っていたのにそれが全て自分の早合点だったのだから。

 「オレは葛城の同僚で・・・・・・・つまりお前の父親の六分儀先輩―碇ゲンドウの部下でな。彼女は今日ずっと本部にいなきゃいけない用事が入ってな、それでオレが迎えに来たんだ」ゆっくりと諭すように話すニセ葛城。

 「ま、そんなわけでよろしくな、碇シンジ」ニヤリと笑って右手を差し出すニセ葛城。

 「・・・・・・・・・え?あ!はい。こちらこそよろしく。えーと・・・・・」おずおずと右手を差し出すシンジ。

 「狩野、狩野テンシュウだ」

 ガッチリと握手を交わす2人。














 「爆心地にエネルギー反応!!」女性オペレーターの声が歓喜に打ち震えていた国連軍上層部の皆さンを現実に引き戻す。

 「何だと!!」鼻から指も抜かずに叫ぶ軍人。

 「映像まわします!」回復するメインモニター。

 そこには黒い皮膚を焼け爛れさせながらも活動中の使徒の姿。

 胸部にある仮面は下から生えてきた2つ目の仮面に押しのけられていた。

 「我々の切り札が・・・・・・・・・・」2度目の失禁。

 「なんて事だ」思わず握りつぶしてしまったワイフの写真ごと拳を机に叩きつける軍人。

 「なんてこった!もう1度言う。なんてこった!」

 「化け物め!!」やっと気がついたんですか?














 峠道を軽快に飛ばすミニクーパー(廃車寸前)。

 狩野は現在生きてるだけでご機嫌なので鼻歌なんか歌ってる。

 「あのー、本当にいいんですが?こんな事しちゃって」シンジが後部座席に積まれているバッテリーを横目で見ながら尋ねた。さっき2人で路上駐車している車からガメて(盗んで)きた物だ。

 「若いな。非常時には大抵の事は許されるんだぞ。現に第2次大戦が終わった時なんてな、焼け野原に適当にロープを張って『ココはうちの土地だ!』って言った人もいるらしいしな」

 「いやでも規模の問題じゃないですよ」しつこく食い下がるシンジ。

 「大丈夫だっつの。こう見えてもオレ、あれだぜ。地方公務員だぜ」

 「もっと問題ですよ!!」

 ミニクーパー(廃車寸前)は軽快に峠道を走っていた。















 ババババババババババババ



 ヘリコプターが上空から使徒の映像を発令所に送る。

 現在、使徒は自己修復中せある。

 「予想通り自己修復中か」送られてきた映像を見ながら初老の男が言った。

 「そうでなければ単独兵器として役に立たんよ」ヒゲが答える。

 使徒の胸部から生えている仮面の目に当たる部分から光がほとばしる。

 メインモニター、ブラックアウト。しかし次の瞬間には映像が切り替わっている。

 「ほう。大したものだな。機能増幅まで可能なのか」

 「おまけに知恵も付いたようだ」初老の男が『機能増幅』という言葉に一瞬羨ましげな表情をさせながら答えた。

 「この分では再度侵攻も時間の問題だな」ヒゲが死刑宣告のような事をあっさりと言う。















 ガゴン、ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン



 ミニクーパーが車ごと巨大なエレベーターに乗る。

 「特務機関ネルフ?」シンジが怪訝そうな顔で尋ねる。

 「国連直属の非公開組織さ」

 「さっき地方公務員って言いませんでした?」再度シンジが怪訝そうな顔で尋ねる。

 「ああ。だから皆オレにさっさと国際公務員の試験に合格しろ合格しろ言うんだけどな。でもメチャメチャ難しいんだぞ。受かるわけないっつの。こちとら英語でもうアップアップしてるっつーのに」

 シンジは(こんな人が所属しているぐらいだからきっといい加減な組織なんだろうな。だから父さんも勤めていられるのかな)などと考えていた。

 「六分儀先輩の仕事知ってるか?」今度は狩野が尋ねる。表情は濃いサングラスに阻まれて見えない。

 「父の事ですか?」

 「ああ、オレが高校の頃だから・・・・・20年前からの付き合いなんでな。未だに旧姓で呼んじまうんだよ」ふと、懐かしむように口元をほころばせる狩野。

 「人類を守る。大事な仕事だと聞いています」シンジの表情がこわばる。今シンジの眼に何が映っているのか。狩野には読み取れなかった。















 国連軍上層部の面々とヒゲが向かい合っていた。

 「今から本作戦の指揮権は君に移った」

 「お手並みを見せてもらおう」さっきは失禁までしていたと言うのに偉そうに言う上層部の皆さン。

 「了解です」ヒゲは無表情で答える。

 「碇君、我々の所有する兵器では目標に対し有効な手段がないことは認めよう」

「「だが、君なら勝てるのかね」」声をハモらせながら尋ねる上層部の皆さン。小声で「せーの」と言ってタイミングを合わせていたのだがヒゲ―碇ゲンドウは聞こえない振りをしていたのだ。

 大人の余裕である。

 「そのための、ネルフです」ゲンドウが余裕の表情で赤いサングラスを押し上げながら答える。

 「期待しているよ」上層部の皆さンが立ち上がって退席する。

 「パンツ早めに変えた方が良いですよ」

 ゲンドウがとどめの一言を放った。





 さて、「J.G.S.U.P」記念すべきACT.01=Aの登場です。

 ACT.00と雰囲気が違う?ハードボイルドタッチじゃなかったのか?
 いやいやACT.00の描写が無味乾燥だったのには意味があるんですよ。

 だってACT.00ではナレーターもLCLになってたじゃないですか。


 そんなわけで今回以降はコメディタッチです。時々シリアスにもなるでしょうけど。

 それではこれからもよろしくお願い致します。


 最後に今回は冬月コウゾウ氏からメッセージを預かっています。
 「名前が出なかった」

 ま、まあオペレーターズも名前出なかったんですし・・・・・・・・・。

 それでは!



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