NEWS RELEASE
マニア消費者層はアニメ・コミックなど主要5分野で2,900億円市場
〜「オタク層」の市場規模推計と実態に関する調査〜

2004年8月24日
株式会社野村総合研究所

 株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、社長:藤沼彰久、以下NRI)はこのほど、特有の消費行動を示す日本のマニア消費者層(いわゆる「オタク層」)の市場規模推計と実態に関する調査を、主要5分野(アニメ、コミック、ゲーム、アイドル、組立PC)について行いました。今回の推計で、5分野全体におけるマニア消費層の消費規模は約2,900億円に達することがわかりました。コンテンツに関連する4分野(アニメ、アイドル、コミック、ゲーム)の産業全体の市場規模は約2兆3,000億円であり、このうちマニア消費層の割合は、金額ベースで11%を占めることになります。マニア消費者層の市場に対する影響力と消費規模は、もはや「ニッチ」とは言えなくなっています。
 
●国内主要5分野のマニア消費者層の規模推計(各分野の人口は重複もあり)
分野 人口 推計市場規模 参考とした主な指標
アニメ 20万人 200億円 タイトルあたりDVD売上枚数
アイドル 80万人 600億円 コンサート動員数、CD初出売上
コミック 100万人 1,000億円 同人誌即売会参加者数、雑誌購読率
ゲーム 家庭用 57万人 450億円 ゲームプレイ時間、ネットワークゲーム参加率、特定雑誌出版部数
PC 14万人 190億円
ネットワーク 3万人 10億円
アーケードなど
(注1)
6万人 130億円
4分野計 2,580億円  
組立PC リッチ 3万人 300億円 特定パーツの出荷数、特定雑誌出版数、秋葉原のパーツショップの売上
ジャンク 2万人 20億円
合計 のべ285万人 2,900億円  
(注1)アーケードゲームとはゲームセンターで提供されるゲームのこと。ここではボードゲーム、カードゲームも含む

 また、マニア消費者層はインターネット利用率と情報発信能力が高く社会的影響力が強いことや、関連する分野をまたがり集団を形成していることも明らかになりました。この層は、「独自の価値観に基づいて、金銭および時間を優先的に配分する消費行動」、「自己流の解釈に基づく世界観の再構築と二次的創作活動」、を繰り返しながら、理想像を追求しています。つまり、マニア消費者層は、購買意欲が高いだけでなく、コミュニティー形成の核、次世代技術の革新の場、新商品の実験対象としての価値も高く、近未来の商材を見極める意味で産業的視点からの期待される役割が大きい母集団であると言えます。NRIでは今後も、車、AV機器、旅行などの分野にも対象を広げたマニア消費者層の行動実態の調査分析を進め、そのビジネス的価値を示唆していきます。



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野村総合研究所 広報部 野村、瀬戸 TEL:03-6660-8370 E-mail:kouhou@nri.co.jp


(参考資料)各分野のマニア消費者層の定義と特徴

●アニメマニア
 TVアニメやOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)、アニメ映画の視聴を日課とするアニメ好きな層。TVアニメ番組を週2桁以上録画する人が多く、PCやHDDレコーダーを積極的に活用するなど、ITリテラシーは相対的に高い。年齢層は15歳〜40代までで、男性が中心。全体市場(アニメDVD市場を想定)の約13%が、アニメマニア層による市場となっている。コンテンツを共有していることが多いコミックマニア、ゲームマニアとの重なり度合いが高い。また、アニメ録画、PCゲームといった軸から、PCマニアとの相関も強い。

●アイドルマニア
 特定のアーティストやタレントに対して強いあこがれや共感を持ち、情報収集や応援活動を生活の中で高い優先度で積極的に行う層。マニア層は男女別に主に形成され、年齢は10〜30代。基本的に「現場系」(アイドルと空間と時間を共有したい人、時間面の負担が重いため10〜20代の若年層が多い)と「コレクター系」(資金面の負担が重いため20〜30代に分布)の2タイプおよびその複合系からなる。

●コミックマニア
 同人誌即売会に参加する、あるいは同人誌を執筆する層。10〜40代まで幅広く分布。少年系、少女系、アダルト系などジャンルが細分化。コミックでのキャラクターが活動の中心であり、その表現形態はさまざまな形を取る。派生系としてコスプレ、同人小説などがある。アニメマニアやゲームマニアとの重なりが大きい。
 同人誌で展開されるパロディーが、プロ漫画家を生む土壌として出版業界から半ば公認されているのが特徴。

●ゲームマニア
 生活時間のほとんどをゲームに費やしているヘビーユーザー層。13〜24歳の若年層と30代に分布。
 家庭用ゲーム市場が最も大きいが、ビッグタイトルの寡占化が続き新しいジャンルの創造がなく、沈滞気味。コアユーザーは高齢化が進み、ネットゲームや、新機軸ゲームが登場するPCゲームに流れている。ゲームメーカーとの情報交換密度が非常に高く、ゲームの拡張や改造にも参画している。

●組立PCマニア
 文書作成などPC本来の使用目的を忘れ、組み立てる行為が目的化している層。余暇時間や可処分所得の多くをPC組立に投下。圧倒的に男性中心。「リッチマニア」と「ジャンクマニア」に大別される。
 リッチマニアは主に18歳〜30代に分布。秋葉原電気街のPCパーツショップで新製品を初期価格で購入する。新製品へのリーチ力が求められるため、比較的都市部に多く在住。インストールしベンチマークが取れたら、翌週には中古ショップで売り抜け、次のパーツを物色する。リッチマニア市場で流行したものは、1〜2年遅れでメーカー製PCに取り込まれる傾向があり、PCメーカーにとっては自発的に繰り返されるテストマーケティング市場と見ることができる。
 ジャンクマニアは、主に15〜18歳(少数)、40代(メイン)に分布。秋葉原電気街の裏通りで、在庫処分の激安パーツや中古パーツを収集。こちらも都市部に在住。ロースペック機に最低限の機能追加を繰り返すため、不要パーツの資産価値は小さく、消費サイクルも長い。



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