「ボク様」卒業への道

2010年3月1日

【24】妻のことは好きでも嫌いでもありません

大学院卒女性が大好きな高橋弘光の場合

<今週のロスジェネ既婚男>
年齢:35歳
結婚年齢:25歳
仕事:エネルギー会社社員
世帯年収:950万円
家族構成:妻、娘、息子

 絵に描いたような「幸せ」家族生活を体現している男がいる。2年前に静岡県で広い庭付きの一軒家を建て、妻と子ども(一姫二太郎)と暮らしている高橋弘光(仮名、35歳)だ。都内の職場までは新幹線で約1時間。ゆったりと座りながら朝の一人時間を楽しんでいる。「会社から通勤費用は出るけど、新幹線通勤者は珍しい。毎月1万円も自己負担しているんだよ〜」とのんびりした声で訴える高橋は悲壮感ゼロ。残業も少なく、夕食は自宅で食べることがほとんどだという。エネルギー業界って、そんなに気楽な商売なのだろうか。東京駅近くの和食店「玄界灘」で一杯やりながら話を聞くことにした。

大宮(以下、O) すみません、平日の夜に。
高橋(以下、T) 
大丈夫だよ〜。夜はたいてい空いているからね。新幹線の終電までには失礼させてもらうけど。東京駅近くの店にしてもらって助かるよ。

O 大きな鯵の開きが有名な店らしいですよ。どんどん飲みましょう。終電に乗り損ねて5万円ぐらいかけてタクシー帰りしてほしいです(笑)。
T 
勘弁してよ〜。車内で眠っちゃって乗り過ごすのも怖いんだから。

O ですよね。気がついたら名古屋だったという経験もありますか?
T 
名古屋まではさすがにないよ。でも、夜中だと一駅でも乗り過ごしたら戻れないからね。駅前のホテルに泊まったことが3回ぐらいある。駅員に事情を話すと、「明朝の始発で乗るなら差額はいらない」と事務的に言われるんだ。

のんびり暮らすためにエネルギー業界を選択

O 高橋さんみたいな新幹線通勤者はけっこういるんでしょうね。
T 
そうだね。毎朝、乗る時間も車両も決まっているから、馴染みの顔もけっこう多い。会話したりはしないけど。

O 朝はどんな風に過ごしているんですか?
T 
6時半に起床して、朝食用のサンドイッチとコーヒーを作るだけ。他のことは全部、新幹線の中でやってる。

O 奥さんは起きないんですか?
T 
奥さん(妻のこと)は子どもと一緒に7時過ぎに起きてるよ。ちょうど僕が出かける時間。眠そうな声で「いってらっしゃーい」とは言ってくれるけど。

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著者プロフィール

大宮 冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職するがわずか1年で退職。編集プロダクションを経て、2002年よりフリー。『日経ビジネスアソシエ』、『プレジデント』、『きょうの料理ビギナーズ』、『dancyu』などで執筆。バブル経済を謳歌した人々のおバカな思い出話を聞く「バブルに学べ!遊ぶ力」も連載中。著書に、『30代未婚男』、『ダブルキャリア』(ともに共著/NHK出版)がある。最近の課題は「自炊」。食生活ブログをほぼ毎日更新中。

このコラムについて

「ボク様」卒業への道

 「結婚した男には取材してくれないの? 俺だってまだまだ現役だよ…」。結婚6年目の友人(既婚、32歳)が酒の席でつぶやいた。僕が以前にやっていた連載「ロスジェネ世代の叫び!ボク様未婚男のリアル」を毎週読んでいるが、既婚者の話が出てこないので疎外感を覚えるという。知ったことか! お前は20代で同僚の美人一般職と結婚して、目下育児中だろう。何が「現役」だよ。早く帰宅してオムツを換えろ! 嫉妬交じりに罵倒しようと思ったら、友人の目が真剣なことに気がついた。何か鬱屈があるのだろうか。幸せ自慢を聞くのは苦手だが、哀愁を共有するのは嫌いじゃない。いいよ、分かった。今度はお前の話を聞くよ。
 僕の同世代は、大学3、4年生で就職氷河期を経験したことから、ロストジェネレーション(1972年〜82年生まれ)と呼ばれる。経済的な理由などから、「結婚適齢期」にもかかわらず結婚に踏み切らない人が多い。では、この世代で結婚をしている男たちはいったい何を考えているのだろうか。どうして結婚したの? 結婚してよかった? 何が不満なの? キレイゴト抜きの正直な気持ちを聞かせてくれ!

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