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【百貨争鳴・プレ2011年問題への戦略】(下)業態進化急ぐ

昨年完成した1期棟の北側で2期工事が進む阪急百貨店梅田本店。2年後には売り場面積8万4千平方メートルの巨大百貨店が誕生する

地場の巨艦店 商品開発強化

「百貨店という名称は捨てたほうがよいのでは」

4年後の平成26年に国内最大の売り場面積(約10万平方メートル)に生まれ変わる近鉄百貨店阿倍野店。建て替え後の店舗計画に絡み、同社内でこんな議論が持ち上がっている。

言い出したのは、かつて自ら建て替え計画の責任者を務めた飯田圭児社長。百貨店離れが進むなか、魅力ある新たな施設をアピールするため、あえて百貨店の名称を外すことも検討すべき、という狙いだ。

すでに名古屋店は「近鉄パッセ」の愛称で親しまれ、過去には京都近鉄百貨店京都店(19年に閉鎖)が「プラッツ近鉄」と名称変更したこともある。だが、百貨店の象徴でもある本店ですら名称変更をも辞さない姿は、業界内で勝ち残るための並々ならぬ決意の表れにほかならない。

大阪2011年問題とも称される百貨店の増床競争の後半戦を飾るのは、26年に開業する近鉄阿倍野店と、24年の2期工事完了で8万4千平方メートルに増床する阪急百貨店梅田本店。両社とも大阪に本社機能を置く数少ない地場の大手百貨店だけに、増床後の売り場面積では先行する他社を上回る大規模旗艦店となる。

とはいうものの、増床で器が大きくなっても中身が同じでは、単なる拡大コピーに過ぎない。建て替えと並行して、売り場の魅力を高める鍵となるバイヤーの能力強化も進めている。

「君らは“商売”が好きか」。阪急阪神百貨店取締役の安川茂・阪神百貨店本店長は、現場の社員と顔を合わせるたび、こう質問を投げかける。消費者と直接接して得られるニーズの動向の機微は、商品政策の命綱だけに「バイヤーこそ商売の現場にいるべし」というのが安川氏の持論だ。

阪急阪神百貨店では、昨年秋の機構改革で、商品政策(MD)部門を強化するとともに、各支店もファッション関連の商品部長やバイヤーを設置し、百貨店が独自に調達から販売までを行う自主編集売り場の向上に乗り出した。

阪急阪神百貨店の新田信昭社長は「問屋やアパレルメーカーに仕入れから売り場作りまで依存する体質が百貨店の同質化を招き、消費者離れの一因になった」と危機感を隠さない。阪急梅田本店の増床が終わる24年までに、MD改革に一定のめどをつける考えだ。

一方、近鉄百貨店は22年度から業種の異なる企業に社員を2年間派遣し、他業界のノウハウを学ぶ「社外研修制度」を導入する。製造業や商社などのノウハウを取り込み、自前の商品開発など売り場の業容拡大を図るのが狙い。堀田正樹専務は「既存の取引先の枠の中だけで仕入れをしていると、新しい商品の開発力が弱くなる」と指摘する。

百貨店の増床は売り上げ拡大の近道だが、同時に維持コストなどの負担も増す。軒並み増床した百貨店同士が、限られた消費のパイを奪い合えば、採算の悪化は避けられない。激烈な増床競争の中で、百貨店に消費者を呼び戻し、業態を進化させる戦略が求められている。

(この連載は内田博文が担当しました)

【写真説明】昨年完成した1期棟の北側で2期工事が進む阪急百貨店梅田本店。2年後には売り場面積8万4千平方メートルの巨大百貨店が誕生する=大阪市北区(内田博文撮影)

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