祖母(女帝)の誕生日
テーマ:誕生日本日は祖母の誕生日です。
祖母は92歳になりました。
今年もこうしてお祝いできる喜びは格別です。
それで、卒寿のお祝いをした日(3月4日の後)の写真がいくつかあったので、ご紹介。
家族だけのプライベートなお祝いです。
場所は、祖母が昔からご縁のある料亭でした。
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お料理はこんな感じ。
春を感じさせる食材と、各々に桜が置いてありました。
お部屋の絵画も桜。
嬉しい春の日でした。
私はこの頃も体調を崩していて、食欲などなかったのですが、この時は大変楽しく、また美味しくいただきました。祖母のお祝いなのに、祖母が「Joaillerieちゃん、よく食べるようになって嬉しいわ」と言ってくれて。祖母の卒寿のお祝いですし、家族団欒のひとときでもあったので、知らぬ間に食欲も増しました。
一品一品に春を感じさせる演出とお味で、皆で祖母の話をしながら、笑顔で過ごして、心からこの時間を愉しみました。今でも、実家で話す時、「あの時は本当に愉快だったね」と。このお祝い会の後、しばらく休憩してから、これまた昔からお世話になっている写真館で、祖母の写真と家族全員の写真を撮影してもらいました。私の夫も出席してくれ、祖母は大喜びしていました。
お食事会の後は、コーヒーを皆で飲みました。祖母はそこにバニラアイスクリームでした。かわいいです。
父です。全身は載せたくないので、部分だけですが。
この時、あの厳格な父が、非常にリラックスした笑顔なんですよね。
祖母や母、兄の写真も伏せます。
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さて、祖母が長寿なのも、曾祖父が100歳になるまで生きたことに関係しているんですね。「ねえさまのは遺伝だ」と祖母は弟妹から言われています。「ねえさま」と言われるように、祖母は今では親族にとっても長老です。
我が家では、「女帝」と呼んでいます。
祖母の話を少しさせてくださいね。
祖母はかの大戦がなければ、オペラ歌手になるべく本格的に歌を習っておりました。かつては市民ホール(今では何と呼ぶのでしょう)でも独唱したことがあります。祖母がかつて市長から賞を受けた際にも、たしか歌にも関連していたと記憶しています。実家には、その時の賞状や記念のお品が保存されていますね。
しかし、かの大戦があったため、租界することになり、そこで短歌を始めました。アマチュア歌人ですけれども、本も出版したこともあります。新聞の歌壇では常連だったので、我が祖母ながら尊敬してしまいます。最近は、日々感じたことを日記として歌にしていますね。
私は中国に行った際には、所謂「文宝四宝」(筆墨硯紙です)を買い求めます。例えば、北京の瑠璃廠では、中国書店をはじめとする書店を巡る際に、必ず「栄宝斎」に立ち寄り、祖母の短歌用のお道具を購入します。祖母の好みや必要なものは明確なので、お店の方にそれを説明すると、本当に親身になって選んでくれて。中国人の方々の優しさに触れることができます。
祖母は、早くに母(私の曾祖母)を亡くしており、当時では珍しいWorking Woman(働く女性)になりました。袴で通勤する姿は街でも話題だったそうです。
もともと祖母の家系は地元では名門で、働くことなど論外でした。そう思うと、祖母は開拓者なのでしょうね。
祖母の幼少時には、お正月になると、実家の屋敷の庭にて、地元の消防団による出初式が行われたそうです。少女時代から着物の重さにぐったりしながらも、じっとそれらを屋敷内から見なくてはいけなかったのだ、とよく話してくれました。昔は地域に根付いた行事が、そんな身近で行われていたんですね。
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それで、92歳になった今も、腰が痛くなければ、「欧州あたりの、パリなんかに行きたいわねぇ。」と言う祖母。すごいです。人生を逞しく生きている祖母なので、性格は豪快(でも、こう言うと「あら!」という顔をするんです 笑)。本人によれば「繊細」だそう。こう言ってのけるからこその92歳なのでしょう。
昨日は、祖母の好きな幸運のクローバーをモチーフにしたメッセージカードを送りました。お部屋に飾ることができる立体的なカードをいつも選んでいます。
季節になると、幸運のクローバーを見つけては、それを私や母に贈ってくれます。庭でそれらの「幸せ」を見つけるのも好きだそうです。すべては祖母の短歌に記されていますね。
私の結婚の際にも、色紙に短歌を書いて、何枚か贈ってくれました。今でも夫と一緒に眺めています。自宅に友人が来た際、この短歌を見て、皆必ず驚きます。
豪快な(繊細な)祖母。
私の尊敬する人のひとりです。
祖母のように、どんな大変なこと(世界大戦、それによって家族を亡くす)があっても、常に前を向いてきた(そうせざるを得なかった)意志の強さ、そしていつも自らに関わっている人々に対して気を配る優しさ、そのほかにも祖母を構成するさまざまな要素を私は尊敬しています。
身内でのお食事会の時の私です。
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いつまでも、元気で快活な祖母でいてほしい。
何よりも、また来年も祖母の誕生日を祝いたい。
この願いをこめて、カードを書いています。
いつもありがとう。
孫娘より。
来年のカードを選ぶのが楽しみです。
Joaillerie
2010年3月4日記