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くらし

ワクチン“後進国”日本 新型インフルで浮き彫り 

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昨年12月、新型インフルエンザワクチンを接種する医師。品薄状態は年末ごろまで続いた=神戸市内(撮影・長嶺麻子)

 昨年以降、国内でも大流行を引き起こした後、ほぼ沈静化してきた新型インフルエンザ。この間、新たに出現した感染症ということもあって、さまざまな混乱が生じた。その象徴ともいえるのが、接種回数をめぐる方針が二転三転するなどしたワクチン対策。そこから見えてきた、日本の特殊なワクチン事情について、専門家に取材した。(網 麻子、武藤邦生)

 「国際的に希少なワクチンを日本が買ってしまうのは残念だ」。昨年7月、世界保健機関(WHO)の進藤奈邦子医務官は記者会見で、輸入によって必要な新型インフルエンザワクチンの約半分を賄おうとする日本の姿勢を批判した。

 当時、国が見積もった、国内製造可能量は1700万人分程度。2千万人分近くを輸入で補う方針を示していた。

 その後の接種回数の変更などで、結果的に国産で手当てできる人数は大幅に増えたものの、それでも全国民の半数以下で、「十分な生産体制がないのが明らかになった」と大阪大付属病院(大阪府吹田市)感染制御部の朝野(ともの)和典教授。新型ワクチンを製造する財団法人阪大微生物病研究会(同市)など国内4社はすべて小規模で、海外で製薬大手が大量生産しているのとは対照的だ。

 脆弱(ぜいじゃく)な生産体制の背景には、インフルエンザに限らず、ワクチン全般にわたって“後進国”とされる日本の現状があるという。

     ◆      

 1980年代末から、新三種混合(MMR)ワクチンで副作用による被害が多く発生したことなどで、副作用に対する不安感が根強く、国際的な流れから遅れた日本。ヒブ、B型肝炎、肺炎球菌などのワクチンは、WHOが全世界に接種を推奨し、多くの国で対象者が無料で受けられるのに対し、国内では任意接種で有料となっている。国内のワクチン市場も全医薬品の約1%と小さい。

 ワクチンに精通する兵庫医科大病院(西宮市)小児科の服部益治教授は「今回の事態を、遅れを取ったワクチン政策を根本から考える契機にしなくてはならない」と強調する。感染症に詳しい近畿医療福祉大(兵庫県福崎町)の勝田吉彰教授は、特に世界的な大流行を起こす危険性の高いインフルエンザのワクチンについて、「国内で全部を賄えるだけの生産体制が不可欠。今回は輸入に踏み切ったが、強毒型の鳥インフルエンザが流行すれば(品不足に陥って)海外大手が輸出を規制することも十分考えられる」と危機感を募らせる。

     ◆      

 ワクチンは「公衆衛生」とされる。ポリオ(小児まひ)やはしかなどの感染症に対して、人類はワクチン接種を行うことで、発症率を大幅に引き下げてきた歴史がある。新型インフルエンザワクチンの効果はそれほど高くなく、国は「流行阻止は保証されていない」とするが、過去の季節性ワクチンのデータから、ある程度の流行抑制効果はあるとみられる。

 可能な限り高い安全性の確保が前提になるが、神戸市立中央市民病院(同市中央区)感染症科の林三千雄医長は「国は副作用の補償制度の充実などに取り組み、国民はワクチンについて理解を深め、日ごろから必要な予防接種をしっかり受ける習慣をつける必要がある」とし、人々の意識の転換も促す。

(2010/02/27 16:17)


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