社説

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社説:平野博文様 情報開示が足りません

 最後まで悩みました。あなたに手紙を出すべきか、出さざるべきか。というのも、この手紙シリーズは、鳩山政権の中間総括として主要閣僚の仕事ぶりを半ば批判、半ば評価して注文をつけようというものなのですが率直に言います。あなたに関して言えばなかなか評価できる点が見つからない。それでも書こうと決めたのは、あなたの務める官房長官が実に重要なポジションだからです。

 二つに絞って言います。

 まずは、情報開示の問題です。政権交代で国民が最も期待したのは、官僚が独占していた情報の積極的な開示であり、政策決定過程の透明性の確保だったはずです。

 どうもそれが内閣としてうまく回っていない。それもあなたの担当している分野で見受けられます。例えば、官房機密費の取り扱い。あなたが就任当初の会見で「え、そんなものあるんですか」ととぼけたのには驚きましたが、その後もこの問題についての逃げ腰は自民党政権時代と何が変わったのか、首をかしげる日々でした。特に、官邸に外務省所管の外交機密費の一部が過去に上納されていた問題についての対応はいただけません。岡田克也外相ですらその存在を認めざるを得なかったのに、その片方の当事者が「官邸サイドとして調べるすべがない」(2月9日会見)では困ります。

 一事が万事。官房長官の最大の仕事は、内閣のスポークスマンとしてあらゆる懸案について政府の基本見解を示すことです。あなたを通じて国民は政府がどういう政策を考えているのか、それをどういう手続きで実施しようとしているのか、を知ることができます。民主党政権の最大の売りである政策決定プロセスの開示は、まさにあなた次第ともいえるのです。それなのに「ノーコメント」が多過ぎやしませんか。

 もう一つは危機管理の問題です。突然訪れる災害や安保上の危機に対し、内閣の中心となって迅速、的確に情報を収集し、国民に対して事態を説明し、果断な決断をするのは、一義的には官房長官、あなたの仕事です。かつて中曽根康弘首相が後藤田正晴官房長官を指名した理由の一つは、首都圏の大地震を想定したもの、と聞いたことがあります。今のところ、大きな問題は起きていないし、先日のチリ大津波への対応もシミュレーション通り進んだとみています。ただ、おさおさ準備を怠らないよう。

 追伸です。あなたが調整を引き受けた普天間移設問題は、政権にとってまさに生死を決するもの。最大の危機管理事項として、政治家としての力を全開されることを望みます。

毎日新聞 2010年3月4日 2時32分

 

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