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リッチな人生を創る「ウィッシュリスト100」の魔法

プレジデント3月 3日(水) 10時 0分配信 / 経済 - 経済総合
Makio Mukai●1972年慶應義塾大学医学部卒業。妻・千秋氏は日本初の女性宇宙飛行士。著書に『君について行こう』(正・続)、『謎の1セント硬貨』『4001の願い』(共訳)ほか。
■「マキオちゃん、面白い本があるわよ」

 2001年、アメリカで暮らしている女房(宇宙飛行士の向井千秋)が、友人が入院したある病院の書籍コーナーで本を見つけ、「マキオちゃん、面白い本があるわよ」と私に送ってくれた。アメリカの病院の書籍コーナーで見つけたくらいだから、もちろん英語の本だ。
 題名は『the wish list』。日本語に訳せば「人生でやりたいことリスト」といったところだ。そして内容はといえば、短い願い事が全部で6000、ささやかなものから夢物語まで淡々とリストアップしてあるだけ。私の女房は、いろんなことをして、しょっちゅう私を驚かせる。一見、この本がどこにでもあるフツーの本に思えたのも私の誤解だった。家で寝転がって読んでいるうちに、すっかりのめり込んでしまったからだ。

 まず何といっても、リストアップされた願い事の一つ一つがおもしろい。たとえばこんな感じだ。「リビエラの豪華なホテルでロマンチックな週末を過ごせるご身分になっちゃう」「突然思いついた旅行を今すぐ実行」「誰の助けも借りずに新しいソフトをコンピュータに取り込めるようになる」「特許をとる!」「海底に潜って、難破して海底に横たわる16世紀のスペインの軍艦でも見てみる」「砂漠でオアシスを見つける」。
 どこからどう見ても荒唐無稽な絵空事のオンパレードだ。だが、読み進むうち、このリストの本当の価値は別のところにあることに私は気づいた。つまり、人がこの世に生まれてきたことの意味まで考えさせられてしまうのだ。私は思った。これを女房と2人で訳したらどうだろう。さっそく国際電話をかけて、女房に言った。
「これ、2人で訳さない?」
 女房は間髪入れずに答えた。
「すごくいいアイデア。やろう!」

 女房と私はリストを半分にして3000ずつを訳し、編集は私が担当した。訳した願い事を改めて眺めてみると、同じ内容のものも少なくなかった。私は一晩で全項目に目を通して、重複しているものやアメリカ人にしかわからないギャグを除き、一見同じでも微妙に意味の異なるものは削らずにあえて一緒に並べた。
 気に入ったものはレイアウトで文字を大きくして目立たせた。たとえば、「お金目当てに結婚したのに、結婚相手に恋してしまう」「ピエロであり続ける」「何もしないで1日を過ごす」なんてささやかなのも悪くない。なかでも1ページ丸々を使って特大の文字にしたのは、「誰かのヒーローになる」という願い事だ。誰かは奥さんでも、息子や娘でも、それ以外の誰かでもいい。一生の間に「誰かさん」のヒーローになんてなれたら、男冥利に尽きるし、それだけで生まれてきた甲斐がある。

 こうして編集し直したリストに、女房と私は最後に自分たちの200の願い事を追加した。女房はあっという間に100の願い事を書いてメールで送ってきた。私ももちろん願い事を100挙げるつもりでいたが、女房のリストを見て気が変わった。その結果、女房と私の200のやりたいことリストはこんなふうになった。
「千(千秋):いつもニコニコしていたい。万(万起男):ニヒルな男と言われたい」「千:地球の重力から解き放たれたい。万:地に足をつけて生きたい」「千:自分を客観的に見つめたい。万:周囲の人々を客観的に判断したい」「千:いつも生き生きとした夫を見ていたい。万:女房より先に死にたくない、……女房を孤独にしたくない」


■人生の目標が見つからない人はどうするか

 実は私には長年続けている習慣がある。それは1日1回、最低2分間、自分の将来について真剣に考えることだ。どのようなことでもいいし、すぐ先のことでも遠い将来のことでもいい。ある日には来週、また別の日には来年、10年後にやっておきたいことを思い浮かべて、それらを実現する方法をシミュレーションするのだ。
 始めたのは20代の頃だ。ある人が別の人に「1日に1回、自分の将来を考えろ」と言うのを、たまたま耳にしたのだ。以来、1日も休まずに続けている。どんなに仕事が大変な日も、長期の旅行をしているときも、何といったって女房の宇宙旅行の日も。変化したことといえば、50代になって半身浴を始めてからは場所が風呂場に定まったことくらいだ。
 半身浴用の風呂桶に入れる椅子に座って2分間。考え終わったらその場で本を読むのも日課だ。時には読書をせずにそのまま30分間、考え続けることもある。最近よく考えるのはあと3年で定年退職してからのことだ。

 日常の中で立ち止まる時間をつくって先のことを考える。そのちょっとした習慣に、充実した人生を生きることができるか、それとも流されて終わるかがかかっている。そして、真の意味でリッチな人生を送るには、まずは目標を見つけることだ。これは間違いなく必要だし、真実だ。
 多くの人は言われるまで気づかないが、どんなささやかな目標でも、ほとんどの人は実現できていない。そもそも毎日考えたって、すべてがうまくいくわけではない。それなのに何も考えていなかったら最悪だ。しかも考えていれば軌道修正もできるが、考えていなかったらそれさえできない。
 遠大な目標を立てて四苦八苦することを心配するかもしれない。だが毎日シミュレーションをしていれば、実現不可能な目標なんて絶対に立てることはない。私自身、10年後に1000億円を貯金するなんて、まず考えない。こうなると気になるのは目標の高さの加減だが、逆に毎日考えていれば、流行の洋服や目先の小金のことしか思い浮かばない人というのもまずいない。

 それでは目標の立て方に悩む人はどうするか。ここで登場するのがウィッシュリスト、つまり願い事のリストだ。ちょっと長くなるが、冒頭で触れた共訳本の序文に、気になる人のためのヒントがあるのでそれを引用しよう。ちなみに、これも私と同様、女房が原作者バーバラ・アン・キプファーの序文から引用したものだ。
「『生きているうちに、私は……をしたい』。あなたは、こうした言葉を何回くらい口にしたことがありますか? そうした願いはすべてどうなったのでしょうか? どこへいってしまったのでしょう? 願いを抱くというのはすばらしいことです。願いというのは心の底から湧き出てくるものなので、ある重要なことについての情報を持っているのです。自分とは何者なのか、自分は何者になれるのかということについてです。願いを抱き続けるということは、幸せを追い求めるために必要な力を私たちに与えてくれることになるのです。それこそが、この『願いのリスト』が何のためにあるのかという問いかけに対する答です。時が過ぎ、あなたはきっと気付くでしょう。幸せとは一体どういうことなのかというあなた自身の考えが変化していることに。本当に大切なものとは何なのかというあなた自身の価値観が変化していることに。そして、あなた自身が人生で何を達成してきたのかということに」
 思いつく端からでいい。つまらないことでいい。まずは目の前の紙に願い事を100、書き出してみてはいかがだろうか。

【日常カイゼンのコツ】
point1…日常の中で時間をつくって、先のことを考える
point2…目標を実現する方法をシミュレーションする
point3…紙に願い事を100、書き出してみる


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慶應義塾大学医学部准教授、病理診断部部長
向井万起男

西川修一=構成
小原孝博=撮影


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  • 最終更新:3月 3日(水) 10時 0分
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