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2008-07-22

国会に出てきた『奴隷条約』 その5 国会に出てきた『奴隷条約』 その5 - Stiffmuscle@ianhu を含むブックマーク はてなブックマーク - 国会に出てきた『奴隷条約』 その5 - Stiffmuscle@ianhu 国会に出てきた『奴隷条約』 その5 - Stiffmuscle@ianhu のブックマークコメント


参議員内閣委員会 平成14年12月12日

155-参-内閣委員会-12号 平成14年12月12日


○委員長(小川敏夫君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。

 戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案を議題とし、参考人の方々から意見を聴取いたします。

 参考人を御紹介いたします。

 中央大学法学部教授横田洋三君、神戸大学大学院国際協力研究科助教授戸塚悦朗君、以上の方々でございます。

 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところを当委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。

 本法律案につきまして、両参考人から忌憚のない御意見をいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の進め方について申し上げます。

 まず、両参考人から、横田参考人、戸塚参考人の順に、お一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず横田参考人からお願いいたします。横田参考人。


○参考人(横田洋三君) 委員長、ありがとうございます。おはようございます。

 本日、参考人として、戦時性的強制被害者問題の解決促進に関する法律案につきまして、私の意見を述べる機会を与えられまして大変感謝いたします。また、この法律案の発議者、そして賛成者、いわゆる慰安婦問題につきまして真摯に解決の方向に向けて御尽力してこられたということについては心より敬意を表したいと思います。

 最初に、私の本案件、すなわちいわゆる慰安婦問題につきましてどういうかかわりを持ってきたかという背景をごく簡単に御紹介させていただきたいと思います。

 まず、この問題が国際的な場面で取り上げられましたのは、私が代理委員として出ておりました国連の人権促進保護小委員会の場で一九九一、二年のころでございます。そこでこの問題が、もう一人の参考人として今朝出席しておられる戸塚先生その他の方々の御活躍もありまして、人権小委員会の場でずっと議論、審議が続けられてきているという背景がございます。

 なお、この人権小委員会における審議の状況につきましては、本日お配りしました私の原稿でございますけれども、「国連人権小委員会における「慰安婦」問題審議の状況」というものを御参照いただきますと有り難いと思います。

 二番目には、私は専門として国際法それから国際人権法を研究してまいりました。この立場から慰安婦問題というのは極めて重要な問題提起をしておりまして、我々国際法学者が真剣に取り組み、適切な答えを出していかなければいけない問題だと考えておりまして、その点からもこの問題に関心を持っておりました。

 三番目に、そういった経緯もございまして、一九九五年に日本政府がイニシアチブを取りまして作りました女性のためのアジア平和国民基金、いわゆるアジア女性基金でございますけれども、これの設立当初から運営審議会、これは理事会に対する諮問委員会でございますけれども、それの委員を仰せ付かりまして、この中で私なりのいわゆる慰安婦問題についての正しい答えに向けての努力をしてきたつもりでございます。なお、現在私はこの運営審議会の委員長も務めさせていただいております。

 このアジア女性基金の活動等につきましては、やはり本日追加資料としてお配りいたしましたこの白いパンフレットがございますが、「女性のためのアジア平和国民基金」という表題でございますけれども、これを随時御参照いただきますと有り難いと思います。

 まず、本法律案につきまして私の基本的な考え方を述べさせていただきたいと存じます。

 本法律案は熟読いたしました。そして、一般論として妥当な内容を含んでいると判断いたしました。しかし、本法律案をこのまま国会で採択し、その規定に従って政府が一連の措置を取ることについては、私の個人的判断は適当ではないという意見でございます。

 その理由は、以下の六点でございます。

 まず第一に、これまで日本政府は一定の対応をしてきたということでございます。

 第二点は、国連での審議をある程度日本政府の対応は反映しているということでございます。

 第三点は、既に一九九五年から今日まで七年近くにわたる活動をアジア女性基金はしてきておりまして、その活動に対して国際社会の一定の評価がございます。

 第四番目には、アジア女性基金に対する多くの国民の方々の理解と支援というものがございます。

 五番目には、日本政府の対応に対する関係諸外国政府の理解と協力、これもございます。

 最後の六点でございますけれども、オランダ、フィリピン、韓国、台湾の被害者、はっきりと確認された御存命中の方々の、半数までは行きませんが、半数に近い三百六十四人がアジア女性基金の償い事業を受け取られたという事実がございます。

 こういったことを踏まえますと、私は、この法律案を国会を通して政府にこの法律案に基づく一連の措置を取らせるということには適切でない部分があるという意見を持っております。多少、この私の考え方をこれから敷衍して御説明させていただきます。

 まず、日本政府は既にいろいろな場面においてこのいわゆる慰安婦問題につきまして、とりわけ被害者となられた方々に対しまして謝罪を表明してきております。

 最初は一九九三年のいわゆる河野官房長官談話でございます。この点につきましては、この白いパンフレットの四ページの年表のところに、九三年の河野官房長官談話の一番のおわびに当たる部分の文章が書いてございますので、御参照いただけると有り難いと思います。

 さらに、一九九四年には、村山総理大臣が談話でやはり深いおわびと反省の気持ちを表明されました。

 それから、人権小委員会におきまして、日本政府のオブザーバー、これは日本政府代表ですが、人権小委員会は私ども委員とか委員代理が主要なメンバーでございますので、政府代表それからNGOの代表、これはオブザーバーという資格で討論にも参加されるということでございますが、その場におきまして日本政府のオブザーバーがやはり深いおわびと反省の気持ちを表明しました。

 それから、償い事業の一環としまして、償い金、それから医療・福祉事業、更にこれに加えましてお一人お一人の償い事業を受け取られる被害者の方につきまして総理大臣のおわびと反省の手紙が付されております。

 これらのおわびの表明は、いずれも道義的責任の立場から被害者に対して、それから被害者の属する国民に対して、政府に対してのおわびと反省の気持ちの表明でございます。

 それから二番目には、歴史の教訓とする事業ということにつきまして、事実の究明、更にははっきりと分かった問題についてできるだけ正確に国民に広く知らせるための活動を行うということ、こういうことをこれまでアジア女性基金はやってまいりました。

 それから三番目には、女性の名誉と尊厳にかかわる事業も継続してやってまいりました。これはどういう事業かと申しますと、過去に日本が行ったいわゆる慰安婦の方々に対する甚だしい人権侵害、これに深い反省をしまして、さらに、現在同様の状況が戦乱の中で起こっている、その被害者の人たちに対する私たちの気持ちそれから政府の気持ちを表明する意味で、現在起こっている問題についての研究と、それから被害者に対する救済の手を差し伸べる事業、こういったようなことについてもアジア女性基金が活動してきております。

 この法律案は、こうした日本政府の対応、とりわけアジア女性基金を作ってそれを通して政府と国民が一体となってこの問題に取り組んできたという、その実績をどのように踏まえて新しい法律案の中で政府に新たな措置を取るように要請しておられるのか、この辺が私にははっきりと見えないという感じがいたすわけでございます。

 次の点でございますけれども、アジア女性基金に対して現在におきましても根強い厳しい批判があるということはこれは事実でございます。

 しかし他方で、人権小委員会の委員の多くの方々、この方たちとは私は毎年八月、ジュネーブで会合を持ちましたときにはこの問題を含めて意見交換をしておりますが、そういう人たちの意見、さらには、度々日本でも報道されました国連の女性に対する暴力に関する特別報告者クマラスワミさん、それから、やはり戦時における女性に対する暴力の特別報告者マクドゥーガルさん、それから、最近辞められましたがごく最近まで国連の人権高等弁務官を務められたメアリー・ロビンソンさん、こういう方々が折に触れて、日本政府のこの慰安婦問題に対する対応は前向きの措置である、とりわけアジア女性基金を作って被害者のために活動していることについては前向きの評価を下されているということがございます。

 それから、日本国民の多くの方々がこの基金に寄附を寄せてくださいました。この寄附にはいろいろなメッセージを付けてくださっておりますけれども、そのメッセージを読みますといろいろな御意見があることがよく分かりますが、同時に、いずれにしても日本国民として被害者の方々に深いおわびを申し上げたいという、そういう気持ちを込めてアジア女性基金に寄附をしてこられました。こういう点で、やはり国民の間に協力と支援の気持ちを持っておられる方が多数おられるということ、これもやはり考慮する必要のある点だろうと思います。

 それから、多くの関係の政府、とりわけフィリピン、オランダ、インドネシアの政府につきましては、日本政府とこの問題で幾度にもわたって協議をしてまいりまして、全体として、日本政府の対応に協力する姿勢を示してきました。

 さらには、先ほども申し上げましたけれども、実際に、韓国、台湾、フィリピン、オランダなどでは、存命中の被害者の方々三百六十四名が基金の償い事業を受け取られたと。

 こういう状況を考えますと、批判があることは事実です。それも非常に厳しい批判ですし、私もその批判には常に耳を傾け、考慮することをしてきておりますけれども、しかし他方で、こういう前向きの評価があるということも認識しておく必要があることだろうと思います。

 アジア女性基金に対する厳しい批判が今でも続いておりますが、その一番の論点は、日本政府は法的責任を認めて法的謝罪、法的補償、法的責任者の処罰をしていないということでございます。ところで、この法律案を読みますと、この日本政府の法的な責任を認めて法的謝罪、法的補償そして責任者の処罰という、被害者及び被害者を支援する団体が要求しております点につきましてはこたえるものにはなっていないという私の判断でございます。

 そうだとしますと、仮にこの法律案に基づきまして日本政府が一連の措置を取ったとしても、依然として、被害者の方々で批判的な意見をお持ちの方、そしてそれを支援しておられる方々の批判にこたえることにはならないということになろうかと思います。もし、これで批判する方々が納得するということでありますと、七年前に作られたアジア女性基金の対応も、正に今度の法律案で実現しようと思っていることに沿ったことではないかと、そういうふうに私は考えております。

 この法律案の第五条を見ますと「我が国が締結した条約その他の国際約束との関係に留意しつつ、」となっておりまして、必ずしも明確な表現ではございませんが、従来の日本政府の立場、すなわち個人の、第二次大戦中に生じた個人の請求権は平和条約その他の二国間条約によって解決済みであるというその立場に配慮している法律案のように私は理解いたしました。そうだとすると、いまだに強い批判をしておられる被害者の方、そしてその被害者を支援しておられる方々の批判、要求にこたえるものにはなっていないのではないかと、そういう判断でございます。

 私の意見は以上でございます。


○委員長(小川敏夫君) ありがとうございました。

 次に、戸塚参考人にお願いいたします。戸塚参考人。


○参考人(戸塚悦朗君) 初めに、レジュメを訂正しておきます。レジュメの中で二番目のクマラスワミというふうにありますのはマクドゥーガルの誤りですので、訂正いたします。

 初めに、大変重要な法案の審議のために、しかも人権週間という特別な時期にお招きいただきまして、ありがとうございます。

 私はこの法律案を成立させるべきであるというふうに考えます。これまで民間基金の受取に反対、拒否してきた被害者、支援団体、被害国議会がこぞって歓迎しておりまして、これはこれまでの日本の国家機関が行った提案について初めてでございます。これまでの日本政府、民間基金の措置によっては解決がなされておりません。全体としてはこれは受け入れられていないわけでありまして、国連、ILO等も解決とは見ていない、国家による補償等の措置をいまだに求めております。

 次に、具体的な内容に触れたいと思います。

 私がいわゆる従軍慰安婦問題にかかわるようになりましたのは、現参議院副議長であられる本岡昭次議員からこの問題に関する法的意見を求められたときからであります。それは一九九〇年の本岡議員のこの問題に関する最初の質問のころでありました。この点については、本岡議員の方にお願いをして先生方のところに国会審議の経過と国連、ILO等の資料集をお届けいただいておりますので、よく御存じなことだと思います。

 率直に申し上げますと、当時の私の法的見解は大変消極的なものでありました。日本法と日本の司法が持つ重大な欠陥のために、日本国内法を援用して日本の裁判所で勝訴するということは被害者にとっては極めて困難と予想したわけであります。ところが、金学順さんほかの被害者の方が名のり出られまして被害を証言し、歴史家が日本軍の関与を証明しました。そして、首相が一定のおわびをするという事態になりました。そこで、当時は私は日本にかかわる重大な人権侵害問題を国連に報告するということを課題にしておりましたので、九二年二月、この問題を国連の人権委員会に報告いたしました。これがきっかけとなりまして、被害国の支援者、支援団体と協力することになりました。ジュネーブ駐在の日本の報道関係者が極めてナショナリスティックな拒否反応、否定的反応をしたことに異様な雰囲気を感じましてかえって奮起したということもあります。結局、被害者支援の活動は十年以上も継続しました。

 その後、研究を継続した結果、日本法上、日本の国内裁判所で勝訴することは極めて困難であっても、国際法上は日本政府が国家責任を免れることの方が難しいというふうに確信するに至りました。そこで、国際法の諸問題に関しまして、IED、IFOR、JFORなどの国連NGO代表として日本軍慰安婦制度が奴隷制であり強制労働条約違反であることを指摘したほか、不処罰賠償理論を援用いたしまして日本政府の条約の抗弁を批判するなどの国際的な法的論議を起こすことに努めてまいりました。

 また、この問題の解決方式の提唱もさせていただきまして、市民、議員立法による解決への筋道を付けるという努力を継続してまいりました。その結果がこの審議につながっておるのだと思います。さらに、これらについて著書、論文を公表するなど研究活動を継続してきたこともありまして、お招きいただいたのだと思います。

 次に、何が国際法的に問題なのかということを申し上げます。

 第一に、提出資料の説明でありますが、配付資料にあります岩波講座「現代の法」掲載論文に国際法上何が問題になるのかの、九七年時点での情報の概要を書いております。その後の情報を加えまして、九九年一月時点までをかなり詳しく、お手元にあります「日本が知らない戦争責任」に書きました。しかし、残念ながら今審議の対象になっている法案はまだ存在しておりませんので、触れておりません。その後につきましては、先ほど申し上げました本岡昭次先生のお作りになった資料集を見ていただければと思います。

 これらを見ていただきますと、国際法的な問題がどこにあるのか御理解いただけると思います。更に詳しくは、週刊法律新聞の国際人権レポート、法学セミナーに掲載しました連載、「日本が知らない戦争責任」及び「これからの日本と国際人権法」などを御参照いただければと思います。

 また、日本の司法による解決が困難であるということに関連しまして、配付資料の中に参議院憲法調査会に提出いたしました私の論文が、国際法の遵守を求める憲法九十八条二項に従わない日本の裁判所の現状を説明しておりますので、それをごらんください。

 なお、この問題については、日本の大審院も、犯罪であるということを非常に早期に認めておるという証拠として大審院の判例もお手元にお届けいたしました。

 第二に、要点につきまして簡略に説明いたします。まず、国際法違反の成否が問題になります。

 第一に、一九二六年、これは奴隷条約が国際慣習法を確認して成立した年でありますが、この年までに奴隷制の禁止は慣習国際法になっていたと考えます。女性を軍需品同様に軍の所有物とした日本軍慰安婦制度は、この国際慣習法に違反しておりました。

 第二に、日本が一九三二年に批准した強制労働条約は女性の強制労働、労務を全面的に禁止していましたので、慰安婦としての性的サービスを強制した日本軍の行為は同条約違反であったと言わざるを得ません。

 第三に、人道に対する罪の構成要件は、殺りく、せん滅、奴隷化、強制的移住、その他の非人道的行為及び政治的又は人種的迫害行為から成ります。日本軍性奴隷被害者に対する日本軍の行為は奴隷化、強制的移送、非人道的行為にも当たりますし、朝鮮人、台湾人などに対する人種的迫害でもあったので、人道に対する罪にも当たります。国際法には時効がありませんので、今も国際法の違反状態が継続していると考えられます。また、人道に対する罪に当たる場合は国内法的にも時効を適用してはならないとされております。

 次に、国際法律家委員会ICJ報告書、国連人権委員会クマラスワミ報告書、国連人権小委員会マクドゥーガル報告書、ILO専門家委員会報告書はそれぞれ詳しく国際法違反があったことを認定しております。それらは先ほど申し上げた本岡先生作成の資料集に挙げられておりますので、ごらんください。

 二〇〇〇年十二月に女性国際戦犯法廷が開催されました。世界的な国際法の権威者による二〇〇一年十二月四日の判決、これは日本軍性奴隷制を裁く、女性国際戦犯法廷の全記録に、緑風出版として出版されております。この判決の国家責任に関する部分、三百六十八から四百四十三ページでありますが、には、今申し上げた以上に広範囲にかつ厳しく国際法違反を認定しております。

 次に、日本政府の条約の抗弁について申し上げます。

 第一に、日本政府はこのような国際法違反の指摘に対していつも、「日本としては、さきの大戦に係る賠償、財産請求権の問題についてサンフランシスコ平和条約などに従って誠実に対応してきた」、これは橋本首相の九六年五月九日参議院予算委員会での答弁であります、などと条約の抗弁を繰り返してまいりました。これは、平和条約及び二国間条約によってすべての国家責任が解除されたと言いたいようにも聞こえます。しかし、条約の抗弁は既に破れております。日本政府はこれに固執することをやめるべきです。

 第二に、具体的に個別条約の検討をしてみますと、これらの抗弁は崩壊してしまうことがよく分かるわけであります。

 第三に、平和条約などの条約によって性奴隷被害者の権利は放棄できないという法的見解は、国際法の権威が承認するところであります。

 時間の関係上、詳細は省略いたします。

 次に、民間基金政策では国際法違反の状態は解除されていないということを申し上げたいと思います。

 仮に、被害者すべてが国民基金による償い金を受け取っても、これは民間による措置ですから国家責任を法的に解除することはできません。その上、民間基金による解決の試みは、多くの被害者、被害国の支援団体などの拒否反応によって被害者全体との和解を達成することができませんでした。

 先ほど申し上げた国連・ILOの報告書は、民間基金に一定の評価を与えましたが、これにより国家責任が解除されたとは評価せず、被害者が求めるように日本政府に対して国家責任を果たすよう求め続けています。今後も国際世論による批判は継続すると思われます。

 先ほど申し上げた法廷の判決でありますが、その末尾で日本政府に対する具体的な勧告をいたしました。これらが実現して初めて国家責任が解除されるというふうに考えられます。これについては、レジュメの最後の「勧告」というところをごらんください。

 解決のためには、審議中の法案の立法が必要であるというふうに考えます。

 被害国の被害者支援団体は、こぞって内閣委員会で審議中のこの法案の国会提案を歓迎し、被害国の議会がその成立を望む決議を次々と審議し採択しております。日本の国家機関、国会議員もこの委員会も国家機関でありますが、によるこの問題に関する提案が歓迎されたのは初めてのことであります。

 しかし、法案に問題もあります。日本人慰安婦の方も、女性として軍による性暴力の被害を受けた点では同じですから、被害者に含むことができるようにする方がよいと思われますが、その他の点では、私が提案してまいりました暫定的な個人賠償法案等、これは特に謝罪という言葉を欠いておりましたので重大な欠陥がありますが、これよりもはるかによくできています。ですから、この法案が可決、成立すれば、この問題は解決に向けて急速に動き出すというふうに考えます。

 立法の国際的な位置付けでありますが、詳細は省略しますけれども、立法ができないという観測が有力であります。なぜなのでありましょうか。

 条約の抗弁にもかかわらず、審議中のこの法案が提案され、参議院の事務総長により受理され、内閣委に付託されました。それは、法的には立法による法的な解決ができるということを示したわけです。国会議員の多数の先生方がこの法案を成立させるか否かという問題が残っているだけであります。

 立法ができないというのは法的な問題ではありません。政治的な問題でありまして、立法に協力する気持ちがない議員がおられれば、これはできないことになるわけであります。もし、この委員会がこの法案を否決したり廃案にしたりすれば、世界じゅうの多数の人々から日本の国会が批判されることは避けられないと思われます。

 慎重な審議の上、可決してくださるようお願いいたします。

 ありがとうございました。


○委員長(小川敏夫君) ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。

 これより参考人に対する質疑を行います。

 なお、質疑時間が限られておりますので、簡潔に御答弁いただくようお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。


○亀井郁夫君 自由民主党の亀井でございます。

 今日は、両先生にはお忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。今、お二人の先生からいろいろとお話を聞いたわけでございますけれども、短時間ではございますけれども、何点かお尋ねしてみたいと思うわけであります。

 特に、この従軍慰安婦の問題というのは過ぐる世界大戦における本当に悲しい事実であり、そういう意味では多くの女性の方々が苦痛を経験された、また精神的にも肉体的にも大変いやし難い深い傷を負われたと、これに対して日本人の一人としてまず最初におわびしたいと思うわけでもございます。

 この従軍慰安婦問題というのは、やはり激しい戦争状態の中で、異常状態の中で、特に被占領地におけるいろんな問題、そういう意味では強姦等のそういった事案をできるだけ少なくするためにということで当時軍が行った方策だろうと思うんですけれども、しかし、それにいたしましても従軍慰安婦の人たちは大変深い傷を負われたことは事実でありまして、この問題をどのような形で解決していくかということが戦後の大きな課題でもあるわけでございます。

 しかし、戦後処理の問題については、そうした戦争中の賠償の問題だとか、あるいは財産請求権の問題等につきましては、こうした従軍慰安婦の問題を含めまして、サンフランシスコの講和条約、あるいは他国との両国間の条約によって一応法的には解決されたというふうな考え方を政府は取ってきたわけでございます。

 そうは言いながらも、やはり従軍慰安婦の皆さん方が高齢になり厳しい状況にあるというふうなことから、道義的には何とかこれについて対応していかなきゃならないというふうな思いから、日本政府もいろいろと対応してきたわけでありまして、先生からもお話しございましたように、平成三年から二年間にわたって調査をし、そしてまた平成五年には河野官房長官が心からおわびと反省するという気持ちも表明しましたし、そしてまた平成六年には時の村山総理がおわびと反省の気持ちを分かち合うための幅広い国民参加の運動として、このいわゆるアジア基金、アジア女性基金を作ったということでもあるわけでございまして、これは平成七年からアジア平和国民基金、アジア女性基金としていろいろと対応してきたわけであります。

 これにつきましては、今お話しございましたように、これを受けてもらえた方、これを拒否された方、いろいろあるわけでございますけれども、非常に大きな、特に性格上なかなか、私はこうでしたと言って本人から言いにくい問題でもあるわけでございますから、そういう意味でいろんな難しい問題がたくさんあったんではないかと思います。

 そういう意味では、この問題に先頭になっていろいろと対応してこられたのが横田先生でもございますし、また横田先生は国際法学者として非常に著名な先生でもございますので、まず最初に横田先生にお尋ねしたいと思うわけであります。

 今申し上げましたように、日本政府は、この従軍慰安婦問題については法的にはサンフランシスコ講和条約及びその他の二国間の関連条約によって解決済みだという考え方を取り、道義的責任を果たすべく努力しておるわけでありますけれども、これに対して戸塚先生は、これだけじゃ駄目なんだ、やはりその責任は解消されていないというふうにおっしゃったわけでありますけれども、国際法学者として、国際法的には治癒されていないのかどうか、治癒といいますか、サンフランシスコ講和条約ないしは二国間の条約によってこういう問題は解決されたと考えることは、法的に間違えているのかどうなのかということについてお尋ねしたいと思うわけであります。


○参考人(横田洋三君) 亀井先生、大変適切な御質問をありがとうございました。

 私も、先ほど戸塚参考人がおっしゃられましたいわゆる慰安婦の方々に与えた苦痛、精神的肉体的苦痛、これは当時の国際法に照らしても違法であったという判断をしております。戸塚先生が挙げられた強制労働条約違反、あるいは戦時国際法違反、さらには人道に対する罪、いずれにも該当します。

 問題は、その当時の国際法は違法な行為を国家と国家の間でどう解決するかを決めるという仕組みになっておりまして、個人の問題はそれぞれの個人が属する国家が国内的に処理する、つまり国際法と国内法を二段に分けて処理する、そういう考え方が圧倒的多数でした。

 そういう枠組みの中から見ますと、平和条約というのが国家と国家の間の戦争状態をなくし、戦争中に国家と国家の間で生じた違法行為に対する賠償、そういったような問題を全部一括して解決して、今後はもう戦争中のことは終わりにして二国間の友好関係を前進させようということを決める、これが平和条約でございます。正にサンフランシスコ平和条約、それから、平和条約ではございませんけれども、戦後、日本の植民地から独立した韓国につきましては、一九六五年に基本条約が締結され、それに付随した請求権問題に関する協定がございまして、大体サンフランシスコ平和条約と同様の請求権放棄の規定が明確にございます。一切の請求権を放棄する、その場合には、国家の請求権のみならず個人の請求権も放棄するということが明文で書かれております。

 したがいまして、第二次大戦中の国際法の構造からいいますと、違法ではあったけれども、法的に個人が国家に対して請求することはできませんので、国家間で問題を解決する、その解決は平和条約で終わっていると、こういう仕組みになっておりますので、その限りにおいては日本政府の説明は国際法的に妥当なものだと考えます。

 ただ、私は、日本政府はしたがって、請求権問題がもうないから、それ以上のことは日本政府は発言しておられませんが、私は、いわゆる慰安婦の方々に与えた損害、これは国際法違反だったという判断を明確にしております。

 以上でございます。


○亀井郁夫君 よく分かりました。

 ということは、やはり戦争中に起こったそういうことに対しての問題は国と国の問題で解決し、個人は自分の属している国との関係においてその問題を解決する、これは従軍慰安婦の問題ですけれども、と財産上の問題とかいろんな問題がありますけれども、含めてそうするのが国際法のルールだというふうに考えてよろしいわけですね。


○参考人(横田洋三君) そのとおりでございます。

 ちょっと付言させていただきますと、国内的にはそれぞれの政府に対して国内法上の裁判を起こすことができます。現実に、戸塚参考人も先ほどちょっと触れられましたが、日本の国内でもそういう意味での訴訟が起こっております、国家賠償法。それから、アメリカでも、実は現実に係争中の、この慰安婦問題を含めた強制労働被害者のアメリカ国内法上の請求権は起こっております。

 そういうことを考えますと、国内法上の法的な解決は現在まだ係争中であるという状況でございます。それは、答えが裁判所によって出されると、こういうことでございます。


○亀井郁夫君 次にちょっとお尋ねしたいのは、いつも出てくるのが、国連の人権委員会等でのいろんな報告が出されて、日本はそういう意味では国連のそうした決定に違反しているんだ、違反状態が続いているんだというふうなお話が多いわけですね。国連の人権委員会でのクマラスワミ報告だとか、あるいは人権小委員会のマクドガル特別報告等が、さっきも戸塚先生からのお話がございましたけれども、そういうことが出て、日本があたかも国連の決定に違反している状況が続いているんだというふうな形での説明があるわけでございますけれども、国連結成以前に行われたこうした一連の事案でもございますし、そういう意味で、国連の報告というのがそういう形で覊絆力を持ったものとして報告が国を縛ることができるのかどうなのか、これについて横田先生、国際法学者としてお教えいただきたいと思います。


○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。

 結論から申しますと、覊絆力はございません。ただ、無視していいというものでもございません。国連の場で任命された権威のある特別報告者によって、いろいろな人の意見を聞き、いろいろな事実を検討して出された報告書、これは関係者は真剣に受け止めるその責任はあると思いますが、法的に拘束力があるかと言えば、答えはノーでございます。


○亀井郁夫君 よく分かりました。

 その後、アジア女性基金につきましてはいろいろと横田先生自身が中心になってやってこられたわけでございますけれども、そういう意味では三百六十四名の方がこれを受けておられる。そしてまた、インドネシア、オランダ等については、受けておられないけれどもいろいろな施設の整備に努力してこられたという形で、国による状況もこういう形で違うんだろうと私は思うわけでありますけれども、そういった国のこの制度に対する評価というものが、国によって、例えば韓国、台湾、フィリピン、あるいはインドネシア、オランダと、違うのかどうなのか、その辺りを、それからまた、この対象になっていない国がまだたくさんあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺りの国はどう考えておるのか、お教えいただければ有り難いと思います。


○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。

 大変適切な御指摘だと思います。国によって大分違いがございますが、さらに、同じ国の中でも意見が分かれているというのが実情でございます。

 全体として非常に日本政府の対応に現在でも厳しい意見を多く持っておられる方がいるのは韓国でございます。それから、地域としての台湾もかなり厳しい意見を持っておられる方がおられます。フィリピンは分かれておりまして、厳しい意見を持たれている方と、それから日本政府の対応を歓迎している方々とがかなりいらっしゃるという状況でございます。オランダは全体として対応を歓迎する空気の方が強く、反対の方もおられますけれども、その方たちは現在日本で訴訟を起こして法的に問題を追及するということをやっておられます。


○亀井郁夫君 ちょっともう一つお尋ねしたいのは、反対して拒否した方がおられるわけですけれども、そうした人の数というのは、受けている人は三百六十四名ですけれども、拒否している方の数というのは何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。


○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。

 その問題に対するお答えは大変難しいのでございます。と申しますのは、我々が直接被害者の方々に会って御意見を聞いたり、事実関係を確認して、確かにこの方たちが被害者であるということを確認する。しかし、申し出てきた人が全部ではございません。いろいろな事情で申し出てこられない方もいらっしゃいますし、それから、ある程度、それぞれの国ではあるいは地域では、政府又はNGOによっていわゆる慰安婦にされた方だと認定されているとしましても、その方たちがどのくらい本当に慰安婦として慰安所に長期にわたって拘束されていた方かどうかという確認の方法がないものでございますから、どうしてもラフな数字にならざるを得ません。それから、残念なことですけれども、もう戦後五十年以上たちまして、被害者の方たちもかなり多くの方がこれまでに亡くなっておられます。

 そういうことを考えますと、正確にどのくらいかということは申し上げにくいんですが、私どもが確認しております韓国、台湾、フィリピンの政府又は支援団体のNGOが確認している被害者であるという数字の、半数まではいきませんが、四〇%ぐらいの方がこの三百六十四という数字になるのではないかというふうに理解しております。


○亀井郁夫君 ありがとうございました。

 戸塚先生に一点お尋ねしたいんですが、ここにもあります二〇〇〇年十二月の女性国際戦犯法廷ということの判決を基にしていろいろと議論されておられますけれども、この女性国際戦犯法廷というのは、私の記憶では東京で行われたやつではないかと思うんですが、これは国連やその他だったらそれなりの権威のある法廷だと思うんですけれども、女性国際戦犯法廷というのは、だれがどういう形で判事を選び、どういう形で行われたのか、誠に不勉強で申し訳ないんですけれども、ちょっと教えていただきたいと思いますが。


○参考人(戸塚悦朗君) ありがとうございます。

 実は私、その記録の一部を持ってまいりまして、先生に是非お読みいただければと思いますが、先ほど御紹介したんですけれども、緑風出版というところから出ております「女性国際戦犯法廷の全記録」というものがありまして、そのⅡでありますが、ここに判決が出ております。詳しくは、このⅠというものがございまして、この女性国際戦犯法廷がどのように開催されたのかという経過、そしてその内容、こういったもの、起訴状、判決文、すべてここに日本語訳されておりますので、それをごらんいただければと思います。

 これを組織されたのは、松井やよりさんほかの日本の女性団体の方々、バウネット・ジャパンというのがございますけれども、そこと、それから韓国、フィリピンの慰安婦問題の支援団体の指導的な立場にあられる尹貞玉先生とか、そういった方々が提唱されまして、世界の女性運動に呼び掛けられて組織されたものであります。そういう意味で、民衆法廷でございます。前例としてはラッセル法廷というのがございましたけれども、そういうものと同じでありまして、民間のものであるという点。

 ただし、そこに参加した検事団あるいは裁判官の方々は、ここに詳しく出ておりますけれども、国際的に大変著名な法律家の方々であります。その方々が下した判決の内容を私拝見いたしましたけれども、過去の国連、ILO等の議論、あるいは私どもの提出した議論、あるいは日本政府の言っておられる議論すべてを非常に広範囲にまた丁寧に調べておりまして、それに対して事実認定もしておりますし、法的判断もしておられる。

 大きく分けて二つありまして、一つは……


○委員長(小川敏夫君) 戸塚参考人、亀井委員の質問時間が過ぎておりますので、御答弁を簡潔にお願いします。


○参考人(戸塚悦朗君) 申し訳ありません。

 そういうことで、是非この本をごらんいただければと思います。

 ありがとうございました。


○亀井郁夫君 ありがとうございました。

 今のお話で、大衆、民衆運動家の方々を中心にして行われた法廷だということがよく分かりましたので。ありがとうございました。


○岡崎トミ子君 今日は、横田参考人、戸塚参考人、国際法の学者の観点からこの戦時性的強制被害者問題、解決をしようということで、発議者として、一人の議員としてこの問題、是非この法律は成立させたいという願いからお二人に本日お話を伺えますこと、大変心から感謝を申し上げたいと思います。

 昨日、私は東チモール議員連盟に所属をしておりますけれども、この東チモールから、二十一世紀の最初の独立国でございますが、ここからマルタ・アブ・ベレさんが、被害者の方でいらっしゃいます。一九四二年から三年半日本軍が駐留いたしましたけれども、その慰安所で、彼女は年齢がよく分からない、七十歳推定と言っておりますから被害者となったときの年齢もはっきりしておりません。でも、胸は大きくなかった、生理はなかった、そのころに被害に遭ったということを証言されていらっしゃいました。

 そして、私は今年、この法案の発議者とともに、まずは二月にインドネシアに参りました。その後、フィリピン、韓国、台湾に参りまして、被害者のおばあさんたちにお会いしました。本当に一様に年を取っている、本当にいつ亡くなってもおかしくない、そういう年齢の方で、一様に今日まで大変つらい思いを抱いて生活をされている。そして、忘れることはできない、何とかして正義を取り戻したい、これは共通して昨日のマルタさんも含めておっしゃっていたことだなというふうに思っております。

 今回の私たちの戦時性的強制被害者解決促進法案は前の通常国会で初めて審議することができましたが、その際、私は宮城県の選出の議員なんですけれども、宮城県の地元に宋神道さんという方がいらっしゃいまして、在日の被害者で唯一名のり出て裁判を闘っている方でございますが、この方が証言されたこと、多くの方々に、慰安婦とされたことは一体どんなことなのかということの証言をしていただきまして、これを私が代読をして御紹介をし、多くの方々の共感を得ました。

 この方の東京地裁の判決は、国際法違反を初認定しております。国際法違反は、そのほかの裁判や国連人権委員会、人権小委員会、ILO専門委員会などで指摘をされておりますが、国際法学者でいらっしゃって国連でも人権分野で活躍をされております横田参考人から、まずお伺いしたいと思います。

 確認でございます。ただいま既に亀井さんのときにもおっしゃっていたかと思いますけれども、国際法学者として例えば慰安婦制度は強制労働条約違反だったと考えるかどうか。大変時間が短いので、短くお答えいただきたいと思います。


○参考人(横田洋三君) 今の御質問に端的にお答えするならば、私は、そのとおり強制労働条約違反であったと考えております。


○岡崎トミ子君 ILO専門委員会はこの慰安婦制度は強制労働条約違反だというふうに言っていること。それはそうしますと、日本としてもしっかり受け入れなければいけない、その重みを持つものだというふうにお考えですか。


○参考人(横田洋三君) あらゆる法律違反、これはその違反をした人、そして国、団体、これは極めて重く見なければいけないものです。今おっしゃられた具体的なILO専門家委員会の意見も含めました強制労働条約違反という判断、そのほかにも、人道法、人道に対する罪等の違反もありますが、これはやはり日本政府として重く受け止めるべき性質のものだと判断しております。


○岡崎トミ子君 ILO憲章の三十七条には、ILO条約についての最終的な解釈権限は国際司法裁判所にあるとしております。ILOの見解が受け入れられないのであれば日本政府は国際司法裁判所に訴えることもできるという、この点に関しましてはどのようにお考えですか、可能性があるかどうかということについて。


○参考人(横田洋三君) 当然、可能性はございます。ただ、国際司法裁判所の管轄権というのは自動的ではございませんので、それぞれの条約が果たして日本に関して、ICJと言っていますが、国際司法裁判所に持っていって法的な解決が得られるものかどうか、これは綿密に検討する必要のある問題だと思います。

 ちょっとついでに申し上げますと、国際司法裁判所は二つの方式によって法的な判断を下すことになっておりまして、一つは、国と国の間の国際法上の解釈の違いを解決する場でございます。この場合には、日本の解釈とほかの、ILO条約、特に強制労働条約の当事国のどこかが意見を述べて、その意見の対立が生じたときに紛争を解決するために国際司法裁判所に持っていくと、これが一つでございます。

 もう一つは、国連等の機関が、どこかから問題が出てきたということではなく、この点についていろいろな人の間に意見の相違があるので国際司法裁判所の勧告的意見を求めるということを決議して求める場合がございます。この場合に勧告的意見を出すというのも一つの国際司法裁判所の役目でございます。この場合の勧告的意見は、問題を最終的に解決する判決とは違います。勧告的という言葉が示すとおりでございますが、やはりそうはいっても国際司法裁判所の権威ある判断ですので、その重みはおのずとあると考えております。


○岡崎トミ子君 奴隷条約違反も指摘されておりますけれども、確かに日本はこのときには条約を批准しておりませんけれども、既に慣習法だったのではないかと思いますが、その点に関してお願いします。


○参考人(横田洋三君) 奴隷は国際慣習法違反でございます。これは、日本は十九世紀の後半に、ペルーの船が横浜に入港しているときに中国人のクーリーをたくさん積んでいて、これを解放しました、日本の政府の判断で。これは最終的には仲裁判断で日本のやった行為は国際法上問題がないという答えが出ましたけれども、そのときの日本政府の考え方は、やはり奴隷は国際法違反であるという判断の下に行われたと私は承知しております。


○岡崎トミ子君 そうしますと、この条約違反ということになりますと、民間の機関のアジア基金でこの問題を解決、解除というふうにはお考えになりますか。


○参考人(横田洋三君) 今ちょっとおっしゃられた、条約違反とおっしゃられましたが、私は慣習法違反と思っております、この奴隷の問題は

 ですが、それはそれとしまして、アジア女性基金のスタートは、政府が道義的な責任を認めてアジア女性基金を作り、国民と一緒になって被害者の方々におわびと償いの事業を進めると、こういうことでございますので、これで法的な問題があるとしてそれを解決するための方策ではなかったというのが私の理解でございます。

 したがいまして、答えとしましては、法的な問題に直接影響を与えるような措置ではなくて、それとは別に、年を取って健康も害しておられる方々がたくさんいる、そういう被害者の方々に対してなるべく早く、早急に何らかの、少しでも気持ちが和らぐ措置を取るべきであるという、こういう考え方に沿って取られた措置だと、こう考えております。


○岡崎トミ子君 慣習法だったということは、加盟していなくてもこの違反を正さなければならないというふうに日本はあるのではないかと思います。そして、国が国家としてこれに対応しなければなりませんから、私どもの考えでは、アジア基金では解除をされたというふうには思いません。

 その対応としてなんですけれども、これをなぜ国できちんと税金で対応しなかったのか。国家責任でやらなければならないというふうに考えておりますので、実は民間基金で行われましても、国家責任でないものは受け取れないという、そういう人たちが多く今御指摘のようにいらっしゃるわけです。大変混乱をいたしました。基金が媒介したからではないかというふうに思うわけなんです。

 そして、私は、先ほど申し上げましたように、インドネシア、フィリピン、韓国、台湾へ参りましたときに、多くの受取拒否者がいらっしゃることが分かりました。受け取った方の中でも少なからぬ被害者が新たな名誉回復の措置を願っておりまして、やはり解決をされていない。むしろ、横田先生のさきにお書きになったものを拝見いたしましても、受け取った方々にはおわびの手紙が大変誠実に書かれていて、そういうものを受け取ってそれは解決したかのようにもおっしゃる方が非常に多いわけなんですが、実は受け取った方も、これは国家として謝罪したものではないといって手紙を返しているという方もいらっしゃいますし、受け取っていない方がまず本当に多くいらして、その間に大変な問題になっているわけなんです。

 横田参考人は、実はこの書かれたものの最後に、不十分であると、この基金の問題については不十分であるというふうにお書きになっておりますけれども、不十分であるが前向きの対応だというこの評価ですね、どの点が不十分だったのかをお伺いしておきたいと思います。


○参考人(横田洋三君) ありがとうございます。

 直接尋ねられた質問の答えの前に、前提で、岡崎先生がおっしゃられたことについてちょっと私の意見を加えさせていただきます。

 アジア女性基金の……


○岡崎トミ子君 手短にお願いします。


○参考人(横田洋三君) はい。簡単に申し上げます。

 アジア女性基金は国のお金で運営費が賄われ、また、医療・福祉事業につきましては全額国が出しておりまして、国がお金を出していないという一般的な表現は不正確だろうと私は理解しております。ただし、償い金の部分につきましては、これは国民から集めた寄附でやっております。その辺は明確に区別して認識した方がいいという考えでございます。

 国家責任につきましては、国と国の間の国家責任の問題は、先ほど申し上げましたように、平和条約等二国間の条約で解決済みという日本政府の立場は国際法上支持できるものであると考えております。

 ただ、不十分だと私が考えておりますのは、被害者の方々の多くが、まだ自分たちの気持ちがこれではいやされない、そしてアジア女性基金のお金を受け取れないということをかなり多数の人がおっしゃっているという状況をどうやって解決するかということをやはりやるべきであって、こういう方たちの気持ちを十分に受け入れるということを今後する努力を、日本政府も、私たち、アジア女性基金を中心に活動してきた我々も真剣に考えなければいけない、そういう問題だというふうに考えております。そういう意味で不十分だということでございます。


○岡崎トミ子君 もう本当に時間が迫ってきてしまいましたけれども、先ほど横田参考人がおっしゃいました、この法律の不十分さも指摘をされておりましたけれども、実はこの法律を作る前にも、当初、立法解決ができないかということを言われておりまして、そしてこれが作れるようになって現在この法案があるわけなんですが、この法案ができますときに、各国を本岡昭次参議院議員は回りまして、各国がこれは解決の突破口となるというふうにして支持をしているということでございます。

 この支持をされているということをもって私たちは法案を提出をしているということについて御理解をいただきたいと思いますが、戸塚先生に最後にお伺いしたいと思いますが、私が回りましたときに、各国でたくさんの支持を得ているこの結果としまして、フィリピンでは国会決議を次々に出しております。現在も出し続けております。それから、韓国でも生活安定支援法改正について今でも取り組んでおります。基金の受取をめぐって微妙かつ深刻な問題が発生しているということで、二重に受け取りたいという人の議論も起こっております。オランダでは、吉川議員が行っていらっしゃいまして、まだまだこれは解決していない、怒りで一杯だったということもよく分かりました。それから台湾では、これは立法院全体で法案支持決議が提出されまして、十月二日に提出されまして、これは議会全体で合意をしているという現状がございますが、こうした各国の被害国の動きに関しまして国際世論の広がりをどう考えるのか、お聞かせいただきたいと思います。


○参考人(戸塚悦朗君) お時間がほとんどないと思いますので簡略に申し上げるつもりですが、一つは、今の御指摘のとおり、各国で議会がこの法案を支持しているというのは非常に重要なことだと思います。国家責任の解除ということにつきましても幅がある程度ありまして、確かにあらゆることをやらなきゃいけないということは困難なんでありますけれども、例えばアメリカの議会が戦時中の日本人の収容問題で取った措置、これも非常に象徴的な行為でありますが、国家の行為であります。その他、台湾、韓国の軍事独裁政権の時代の重大人権侵害問題についての過去清算の立法、あるいは南アフリカにおけるアパルトヘイト下の重大人権侵害問題への立法等を見ましても、あるいはナチス・ドイツの過去清算の立法、こういったものも決して完全ではありません。しかし、国家が責任を明確な形で象徴的に取るという点で共通点があります。日本では、そのような過去清算がいまだに一度も行われていない。この法案が初めての法案でございます。

 そういう意味で、世界的にもあるいは日本の歴史の上でも注目すべき立法案でありまして、これがどうなるかということは今後の日本がどうなるかということを占う、あるいはアジアにおいて日本が生きていくことができるのかどうかということを占う非常に重要なものであります。

 この法案が歓迎されている、被害者団体、支援団体だけでなくて各国の議会によって歓迎されている事実というのは極めて重く見るべきであると。したがって、この法案が成立すればこの問題は解決に向かう、また他の問題も解決に向かう、つまりアジアにおいて日本が胸を張って生きていけるようになるという意味で極めて重要だと思います。

 そのほかにも国際的な問題ございますけれども、お時間がないと思われますので、そこでまとめさしていただきたいと思います。


○岡崎トミ子君 ありがとうございました。


○山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。

 今日は、両参考人には貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございます。

 私がこの問題に初めて個人として接したのは一九六〇年代でありまして、従軍カメラマンの撮った写真が軍の検閲によって不許可になっていたものが数多くありまして、それが公表される機会がありました。様々な写真がありまして、日本が戦勝気分に浮かれていた当時と同時進行で、それとは裏腹の、その軍の言わば不祥事にまつわるような様々な実態が写された写真があったわけでありますが、その中にこの従軍慰安婦に関する写真もあったわけであります。慰安所に列を成して並ぶ兵士の姿とか、あるいは慰安婦と戯れる兵士の姿とか、あるいは軍とともに行軍する慰安婦の集団の姿とか、リアルに写されていたわけでありますが、そういう忌まわしい実態を見て、私は大変ショッキングな思いに駆られました。

 こういう言わば戦時下で起こった様々な問題につ

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