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社説:ネット攻撃 残念ですまない問題も

 韓国のネット利用者による攻撃で、日本のネット掲示板「2ちゃんねる」に接続しづらい状態が続いた。日本の支配下で起きた独立運動の記念日の3月1日に起こったが、その影響は、「2ちゃんねる」と同じシステムを利用している別のユーザーにも及んだという。

 経過はこうだ。バンクーバー冬季五輪のフィギュアスケート女子で金メダルを獲得した韓国の金妍児(キムヨナ)選手を中傷するなどの書き込みが「2ちゃんねる」に行われた。反発した韓国のネットユーザーが、独立運動の記念日に合わせて集中的にアクセスし、掲示板がまひ状態となった。

 また、これに対抗しようということなのだろう。竹島(韓国名・独島)の領有権を主張する韓国のサイトが日本から攻撃を受け、接続障害が起こったという。

 こうしたネット攻撃はこれまでも繰り返されてきたが、感動を与えた冬季五輪をめぐって再びこのようなことが起こったのは、残念だ。

 ネットを使った攻撃については、米検索大手のグーグルの電子メールシステムに中国から攻撃が仕掛けられたとして、米中両国の政府間の問題に発展している。中国人人権活動家に関する情報取得が目的で、高度な技術が使われ、組織的な関与がうかがえるという。

 今回のネット攻撃は、グーグルのケースとは次元が異なるが、個人の行為だとして、単純に片付けるわけにいかない問題を含んでいる。

 「2ちゃんねる」のサーバーは米国にあり、今回の攻撃で他の利用者も影響を受けたという点だ。

 プログラムやデータを、データセンターと結んだ通信回線でやり取りするクラウドコンピューティングが広がろうとしている。パソコン本体には情報を残さないため情報流出防止策として効果があるうえ、システム構築にかかる時間が短く、運営コストも安い。

 しかし、あるユーザーに対する攻撃によって、別のユーザーの業務に支障が出るのは問題だ。今回は、日韓の間の感情的なわだかまりに米国企業が巻き込まれた格好だ。

 また、日本向けのサービスの多くが、米国など海外のシステムを利用しているのは、安くつくからだ。

 電気料金が安いうえ空調のコストも低いところに巨大なデータセンターがつくられている。地球温暖化問題に対処するためのコスト負担を電気料金に傾斜してかけ過ぎると、ネット関連の情報産業の海外流出につながりはしないだろうか。

 「2ちゃんねる」への攻撃は、こうした点についてどのように対処したらいいのかについても、私たちに問題を投げかけている。

毎日新聞 2010年3月4日 東京朝刊

 

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