2009年01月09日
ナック・アニメの経緯
ナック(株式会社Knack、以下ナック)という会社を、このブログを閲覧している方なら、当然御存知でしょうか? アニメやVシネマなどを製作していた会社ですが、アニメ制作会社としてのナックの沿革を、個人的な興味もあり(だって好きな作品が多いからっ!)整理したいと思います。以下敬称略。
このナックという会社は、1976年に設立された会社です。設立当初は月岡貞夫が代表だったようです。最初のメンバーは、月岡貞夫、林静一といった元虫プロの人たちが中心に集まって会社を設立したそうです。アニメ雑誌のインタビュー*1によれば、他には、出崎統、阪本善尚も発起人だったそうですが、ネットで二人のプロフィールを調べても掲載されていませんでしたので詳細は不明です。そして、最後になりますが、西野聖市。彼は、その後社長となっていますが、今、ナックを知る人にとっては、この方の名前が一番印象に残っているのではないでしょうか。西野は、アニメ雑誌のインタビューによれば、教育者の家庭に生まれたそうです。ワンダー3の頃に虫プロに入社、制作進行をされていたそうです。そして、1972年に上記メンバーと共にナックを設立しました。そして、ナック作品の殆どの企画として名前がクレジットされています。
1970年、ナックのアニメ作品第一作として「いじわるばあさん」が制作されます。長谷川町子がサンデー毎日に連載していた漫画をアニメ化し、日本テレビ系列で放送されました。また、同時期には、同系列の「すばらしい世界旅行」(作画は月岡貞夫)、「ノンフィクション・アワー」のアニメ部分を制作していたそうです。
1972年には、「正義を愛する者 月光仮面」、「アストロガンガー」(日本初のカラー版巨大ロボットTVアニメ)を制作します。両者とも現在DVDが手に入ると思います。非常に自分の大好きな作品なのですが、月光仮面は是非見て欲しいところです。
ところで、日の目を見なかったナックの作品としては、多くの人が知っている有名作品があります。それは、「一休さん」、「日本昔話」です。最初に、ナックで企画していたところ、諸事情によりスポンサーが降板するなどして、他社に譲り渡した企画なのだそうです。後にテレビ放映された日本昔話については原作が川内広範であり、アニメ版の月光仮面でもナックは川内広範と関係していたので、色んな形でつながっているのかもしれません。
そして1973年には、TBSで「チャージマン研!」が放送されます。これも最近全話DVD化したので御存知の方も多いでしょう。帯番組で正味5分程度の尺ですが、めまぐるしく展開するストーリーは、今見るとジェットコースターのようなアニメです。
ちなみにインタビューによれば、原作の鈴川鉄久は、草川たかし、鈴木良武、伊東恒久、ともう1人の合同ペンネームなのだそうですが、そういえば、一文字ずつ入っていますね! あれ、おかしいな。OPにクレジットされている原作名は、田中英二という方なのですが、鈴川鉄久って誰のことなんだろう・・・?*2
また、インタビューによれば、チャージマン研のモデルは実在の人物なのだそうです。西野のサンフランシスコ在住の友人、ピーターだったとのことです。ピーターは、超能力者で、「FBIの捜査にもかり出され、数々のお手柄をたてている」という人物だったそうです。それにしても、これは、凄い人をモデルにしたものです! このエピソードを聞いてから、あのアニメ作品を見返すと、更なる発見があるかも?
いずれにせよ、この「チャージマン研!」は傑作なので、視聴をおススメします。
1974年には東京12chで「ダメおやじ」を制作、これは週刊少年サンデー連載の古谷三敏の漫画作品をアニメ化したものです。
そして1975年には長期にわたり放送される人気シリーズ「ドン・チャック物語」が製作されます。一年に一作のペースだったんですな。
ドン・チャックは元々後楽園遊園地(東京ドームシティ)のマスコットキャラクターだったものを、ナックがアニメ化したものです。
第1期 1975年4月5日-9月27日、第2期 1976年4月7日-1978年3月25日と、長年にわたり放送されていました。ネット情報によれば、テレビ東京ではヘビーローテーションで繰り返し放送されていたらしく、局所的に知名度は高い番組かもしれません。
お話は、ザワザワ森のジャブジャブ川に住むビーバーのチャックと動物の仲間達が繰り広げる物語なのですが、妙にギスギスした人間関係(動物関係?)に、容赦ないバイオレンス描写など、当時のアニメ番組ではトラウマ作品として覚えている人も多いみたいです。ネットでドン・チャック物語の感想を読むと、子供にこんなもの見せるなとか、変な番組だったとか、散々な言われようですが、実際に視聴すると、そういわれても仕方がない内容です。しかし、それこそがドン・チャック物語の魅力なのであるのでしょう。今見返しても、ある意味リアルな森の動物たちとドン・チャックの描写にはうならせるものがあります。
そして、動物ものは世界的に普遍な人気があるそうで、世界の何処の国に売り込みに行っても、反応がよかったそうです。実際に動画サイトには海外版のドン・チャックのOPなどが見られ、再生数も多いことから海外でも人気だということがうかがえます。
さて、このドン・チャック物語には、元ネタがあるそうです。
ヒントは、「第2期エンディングテーマの『星の川』は、ドン・チャックの亡き母への思いを歌い上げている悲壮感あふれるバラード」(ウィキペディアより)。
ドン・チャックには母親がおらず、父のドン・アリストテレスとともに様々な事件を解決します。
アニメディアのインタビューによれば、この物語は、
「当時人気だった『子連れ狼』を、動物におきかえられないか」(インタビューより)
とのアイデアから企画立案されたのだそうです。
というわけで、元ネタは、
子連れ狼か!
ハードボイルドな作風は、そういわれてみると、その通りですよ!
なお、後番組(第二期)は、「UFO大戦争 戦え! レッドタイガー」と後楽園ゆうえんちツナガリです。
そして1976年、ナックが次に制作するのは、桜多吾作(「釣りバカ大将」!)原作のロボットアニメ「グロイザーX」です。ヒーローもの、動物もの、ギャグもの、とナック作品のバラエティーの豊かさが感じられますね。
色んな人が書いていますが、ほとんどロボット形態にならないで、飛行機のまま戦っていました。
ところで海外版の一タイトルでは「Maxinger X contra los Monstruos」とグロイザーXが、Maxinger Xという名前になっていました。このタイトルだとマジンガーの一シリーズみたいに思ってしまいそう。マジンガーの海外でのネームバリューの大きさを物語るような気がします。このタイトルだと、韓国制作のマジンガXを思い出します。
1978年にナックが制作するのは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ代表作の小説のアニメ化。
「星の王子さま プチ★プランス」です。キャラクターデザインはナック作品ではおなじみの田中英二とクレジットされています。アニメディアのナック特集によれば、この作品でキャラクターデザインを担当したのは、田中勇次、安彦良和の二人とのことなので、田中英二という人は複数の方の合同ペンネームなのでしょうか。少なくとも、星の王子様では有名童話をアニメ化するということで外野の声が多く苦労したそうです。
海外でも人気は高く、東南アジアを中心にアメリカ、フランスなどでも人気が高かったそうです。
1979年は「まんが猿飛佐助」です。
ネット情報によれば中東でも放送されていたそうです。ワールドワイドですね。
伊東恒久、本当に色んな仕事しているなあ。
80年代は次の機会に。
(続く?)
*1:参考:アニメディアVol.7「ぼくのアニメ創世記 西野聖市」
*2:アストロガンガーの原作者名が鈴川鉄久であることから、どうもアニメディア担当者が取り違えていたのではないかと思われます
このナックという会社は、1976年に設立された会社です。設立当初は月岡貞夫が代表だったようです。最初のメンバーは、月岡貞夫、林静一といった元虫プロの人たちが中心に集まって会社を設立したそうです。アニメ雑誌のインタビュー*1によれば、他には、出崎統、阪本善尚も発起人だったそうですが、ネットで二人のプロフィールを調べても掲載されていませんでしたので詳細は不明です。そして、最後になりますが、西野聖市。彼は、その後社長となっていますが、今、ナックを知る人にとっては、この方の名前が一番印象に残っているのではないでしょうか。西野は、アニメ雑誌のインタビューによれば、教育者の家庭に生まれたそうです。ワンダー3の頃に虫プロに入社、制作進行をされていたそうです。そして、1972年に上記メンバーと共にナックを設立しました。そして、ナック作品の殆どの企画として名前がクレジットされています。
1970年、ナックのアニメ作品第一作として「いじわるばあさん」が制作されます。長谷川町子がサンデー毎日に連載していた漫画をアニメ化し、日本テレビ系列で放送されました。また、同時期には、同系列の「すばらしい世界旅行」(作画は月岡貞夫)、「ノンフィクション・アワー」のアニメ部分を制作していたそうです。
1972年には、「正義を愛する者 月光仮面」、「アストロガンガー」(日本初のカラー版巨大ロボットTVアニメ)を制作します。両者とも現在DVDが手に入ると思います。非常に自分の大好きな作品なのですが、月光仮面は是非見て欲しいところです。
ところで、日の目を見なかったナックの作品としては、多くの人が知っている有名作品があります。それは、「一休さん」、「日本昔話」です。最初に、ナックで企画していたところ、諸事情によりスポンサーが降板するなどして、他社に譲り渡した企画なのだそうです。後にテレビ放映された日本昔話については原作が川内広範であり、アニメ版の月光仮面でもナックは川内広範と関係していたので、色んな形でつながっているのかもしれません。
そして1973年には、TBSで「チャージマン研!」が放送されます。これも最近全話DVD化したので御存知の方も多いでしょう。帯番組で正味5分程度の尺ですが、めまぐるしく展開するストーリーは、今見るとジェットコースターのようなアニメです。
ちなみにインタビューによれば、原作の鈴川鉄久は、草川たかし、鈴木良武、伊東恒久、ともう1人の合同ペンネームなのだそうですが、そういえば、一文字ずつ入っていますね! あれ、おかしいな。OPにクレジットされている原作名は、田中英二という方なのですが、鈴川鉄久って誰のことなんだろう・・・?*2
また、インタビューによれば、チャージマン研のモデルは実在の人物なのだそうです。西野のサンフランシスコ在住の友人、ピーターだったとのことです。ピーターは、超能力者で、「FBIの捜査にもかり出され、数々のお手柄をたてている」という人物だったそうです。それにしても、これは、凄い人をモデルにしたものです! このエピソードを聞いてから、あのアニメ作品を見返すと、更なる発見があるかも?
いずれにせよ、この「チャージマン研!」は傑作なので、視聴をおススメします。
1974年には東京12chで「ダメおやじ」を制作、これは週刊少年サンデー連載の古谷三敏の漫画作品をアニメ化したものです。
そして1975年には長期にわたり放送される人気シリーズ「ドン・チャック物語」が製作されます。一年に一作のペースだったんですな。
ドン・チャックは元々後楽園遊園地(東京ドームシティ)のマスコットキャラクターだったものを、ナックがアニメ化したものです。
第1期 1975年4月5日-9月27日、第2期 1976年4月7日-1978年3月25日と、長年にわたり放送されていました。ネット情報によれば、テレビ東京ではヘビーローテーションで繰り返し放送されていたらしく、局所的に知名度は高い番組かもしれません。
お話は、ザワザワ森のジャブジャブ川に住むビーバーのチャックと動物の仲間達が繰り広げる物語なのですが、妙にギスギスした人間関係(動物関係?)に、容赦ないバイオレンス描写など、当時のアニメ番組ではトラウマ作品として覚えている人も多いみたいです。ネットでドン・チャック物語の感想を読むと、子供にこんなもの見せるなとか、変な番組だったとか、散々な言われようですが、実際に視聴すると、そういわれても仕方がない内容です。しかし、それこそがドン・チャック物語の魅力なのであるのでしょう。今見返しても、ある意味リアルな森の動物たちとドン・チャックの描写にはうならせるものがあります。
そして、動物ものは世界的に普遍な人気があるそうで、世界の何処の国に売り込みに行っても、反応がよかったそうです。実際に動画サイトには海外版のドン・チャックのOPなどが見られ、再生数も多いことから海外でも人気だということがうかがえます。
さて、このドン・チャック物語には、元ネタがあるそうです。
ヒントは、「第2期エンディングテーマの『星の川』は、ドン・チャックの亡き母への思いを歌い上げている悲壮感あふれるバラード」(ウィキペディアより)。
ドン・チャックには母親がおらず、父のドン・アリストテレスとともに様々な事件を解決します。
アニメディアのインタビューによれば、この物語は、
「当時人気だった『子連れ狼』を、動物におきかえられないか」(インタビューより)
とのアイデアから企画立案されたのだそうです。
というわけで、元ネタは、
子連れ狼か!
ハードボイルドな作風は、そういわれてみると、その通りですよ!
なお、後番組(第二期)は、「UFO大戦争 戦え! レッドタイガー」と後楽園ゆうえんちツナガリです。
そして1976年、ナックが次に制作するのは、桜多吾作(「釣りバカ大将」!)原作のロボットアニメ「グロイザーX」です。ヒーローもの、動物もの、ギャグもの、とナック作品のバラエティーの豊かさが感じられますね。
色んな人が書いていますが、ほとんどロボット形態にならないで、飛行機のまま戦っていました。
ところで海外版の一タイトルでは「Maxinger X contra los Monstruos」とグロイザーXが、Maxinger Xという名前になっていました。このタイトルだとマジンガーの一シリーズみたいに思ってしまいそう。マジンガーの海外でのネームバリューの大きさを物語るような気がします。このタイトルだと、韓国制作のマジンガXを思い出します。
1978年にナックが制作するのは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ代表作の小説のアニメ化。
「星の王子さま プチ★プランス」です。キャラクターデザインはナック作品ではおなじみの田中英二とクレジットされています。アニメディアのナック特集によれば、この作品でキャラクターデザインを担当したのは、田中勇次、安彦良和の二人とのことなので、田中英二という人は複数の方の合同ペンネームなのでしょうか。少なくとも、星の王子様では有名童話をアニメ化するということで外野の声が多く苦労したそうです。
海外でも人気は高く、東南アジアを中心にアメリカ、フランスなどでも人気が高かったそうです。
1979年は「まんが猿飛佐助」です。
ネット情報によれば中東でも放送されていたそうです。ワールドワイドですね。
伊東恒久、本当に色んな仕事しているなあ。
80年代は次の機会に。
(続く?)
*1:参考:アニメディアVol.7「ぼくのアニメ創世記 西野聖市」
*2:アストロガンガーの原作者名が鈴川鉄久であることから、どうもアニメディア担当者が取り違えていたのではないかと思われます