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「ちりとてちん」 天満天神繁昌亭(大阪市北区)

2010年3月3日10時57分

写真:「ちりとてちん」の放送終了後もにぎわいが続く天満天神繁昌亭=大阪市北区拡大「ちりとてちん」の放送終了後もにぎわいが続く天満天神繁昌亭=大阪市北区

写真:繁昌亭は平日の昼でもしばしば満員になる=いずれも木元写す拡大繁昌亭は平日の昼でもしばしば満員になる=いずれも木元写す

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 「夢ともなく現(うつつ)ともなく」という字幕が流れ、亡くなったばかりの落語家、徒然亭草若(渡瀬恒彦)が、あの世でも高座にあがろうとする。その名も「地獄寄席」。「やかましゅういうて、やってまいります」。そんな「愛宕山」のにぎやかな一節が響く。

    ◇

 2007年秋から翌春まで放送されたNHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」。福井県育ちでマイナス思考のヒロイン、和田喜代美(貫地谷しほり)が、大阪で草若の弟子「若狭」となり、後に結婚する兄弟子とともに成長していく物語だ。

 ドラマ終盤、師匠の死という重要な場面で、大阪市北区の定席「天満天神繁昌(はんじょう)亭」が登場する。

 チーフプロデューサーの遠藤理史(りし)さんは「大阪城や通天閣といった定番の場所を使わずに、現代の大阪らしさを描くこと。それがテーマだった」と当時を振り返る。

 企画段階の06年夏、繁昌亭がオープン間近と知る。関西では約60年ぶりの定席復活という話題もあった。落語家の暮らしを軸に大阪の真ん中にある大阪天満宮などの風景を織り込めば、古くて新しい物語を紡ぎ出せるのでは、と構想は広がった。

    ◇

 「開館から1年後にドラマが始まったのは、ほんとうに幸運でした」。繁昌亭の支配人、恩田雅和さんは語る。

 上方落語界を舞台にヒロインが人生を切り開くユニークな展開に心を揺さぶられ、東京や九州など全国から多くの人が「ほんまの落語」を求めて繁昌亭に押し寄せた。

 午後1時からの「昼席」は、ドラマ終了後も半年以上、ほぼ連日の満席状態。ふらりと訪れても入れないことが、いまも結構ある。昼席は一般向けの前売り料金が2千円(当日2500円)。着物姿で決めるなど、いい感じに年齢を重ねた中高年が目立つ。夫婦や友だち同士で訪れ、仲良く相好を崩す。

 「お出かけいただければ、映画と同じような料金で、3時間ほど何度も笑ってもらえる。骨休めになりますよ。よくある観光客相手のボチボチな見せ物でなく、筋金入りの芸能を披露する場が観光名所として認められつつある。大阪らしい動きだと思う」と恩田さんは言う。

 記者が訪れた日は「女流特集」。女性落語家のにぎやかで温かい噺(はなし)が続いていた。

 テレビに映る大阪の人は、ど派手ファッションに熱狂的な阪神ファン、お好み焼き好き、とステレオタイプになりがち。でも繁昌亭で耳を傾けていると、泣かして笑わして、と、いろいろな大阪人の素顔が心に浮かんでくる。(木元健二)

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