きょうの社説 2010年3月4日

◎太陽光パネルと景観 先手を打ってルールづくりを
 太陽光パネル設置をめぐり、金沢市の検討委員会が中間報告で規制を導入する方向性を 打ち出したのは妥当な判断といえる。

 太陽光パネルは自然エネルギー活用の柱として政府が普及へ旗を振り、国、自治体の補 助制度も追い風に設置件数が伸び始めている。どの程度、普及するのか見通せない面もあるが、何の基準もないまま、個々の判断で設置の動きが広がれば、屋上景観の阻害要因になりかねない。

 金沢市街地が国の重要文化的景観に選定されるなど景観の公的価値はますます高まって いる。電線類の撤去を進めても、屋上のパネルが景観を損ねては、せっかくの努力が台無しである。パネル規制を導入済みの京都市などの例も参考に、市は具体的なルールづくりに知恵を絞ってほしい。

 政府は地球温暖化防止へ向けた家庭対策として、エコカーや省エネ家電とともに、太陽 光発電設備の普及を目指している。家庭で余った太陽光の電力を従来より高値で買い取る制度を設け、2011年度以降は電力会社が買い取りで使った費用を電気料金に上乗せして回収する。そうした仕組みが動き出せば、太陽光発電への関心は一層高まるだろう。

 金沢市の検討委員会が出した方針では、区域に応じて規制を導入するほか、パネルの形 態についてもルールを設定することが示された。市は新年度に基本方針をまとめ、景観審議会と協議して細部を詰める。

 規制で先行する京都市では、景観上最も重要な歴史的風土特別保存地区や伝統的建造物 群保存地区では設置を原則禁止し、他の地域でもパネルの形態や色彩が屋根材や町並みと調和することを求めている。光の反射を抑えるなど景観を重視したタイプは割高になりやすいため、景観規制区域では助成金を上乗せして拡大を促しているのが特徴である。

 太陽光発電設備と景観との両立は、景観規制区域をもつ他の自治体にも共通する課題で ある。県は省エネモデル住宅「いしかわエコハウス」などを通して景観保全への理解も促してほしい。メーカー側にも価格を抑えた景観配慮型パネルの開発を求めていきたい。

◎日韓併合100年 「経済協定」交渉進めよう
 韓国の李明博大統領は「3・1独立運動」の記念式典での演説で、「過去に縛られず、 人類共栄の新しい未来の開拓」を呼びかけた。日本の植民地支配が始まった日韓併合から100年の節目の年の演説で、李大統領が歴史問題に踏み込まず、未来志向の姿勢をあらためて強く打ち出した背景には、経済やスポーツなどで韓国が自信を深めていることがあるとみられるが、対日批判を抑える李政権の下で、日韓関係強化の歯車を回したい。李大統領は実利優先の外交を重視しており、中断している日韓経済連携協定(EPA)交渉を再開し、前進させることが重要である。

 韓国は今年11月にソウルで20カ国・地域(G20)首脳会議を開催する。李大統領 はこの外交上の重責を果たして「先進一流国家」入りの契機にしたい考えという。

 韓国の経済、外交の好調さは、インドとの包括的経済連携協定(CEPA)や米国、E Uとの自由貿易協定(FTA)締結にも表われている。しかし、日韓EPA交渉は2003年に開始されたものの、わずか1年後に中断し、そのまま現在に至っている。

 交渉中断の要因の一つとして、韓国が対日赤字の拡大を恐れたことが挙げられるが、こ のところの韓国の自信の深まりで、交渉のハードルが低くなったとみることができる。

 留意しなければならないのは、日韓両国民が、つい感情的に反発しがちなことだ。つい 最近も、冬季五輪フィギュアスケート女子で金メダルを獲得した金妍児(キムヨナ)選手を中傷する文書が日本のネット掲示板に掲載されたとして、韓国のネット愛好者らが、その掲示板に「サイバー攻撃」をしかけるという「事件」があったばかりである。簡単に反韓、反日の国民感情に火が付くことを示しており、ネット上とはいえ、決して軽視できない出来事である。

 国民の融和に関して注視したいのは、李大統領が先の演説で「寛容と包容の精神」を説 いたことである。政府だけでなく自治体レベルの交流も通して、その精神をともにはぐくむ努力を強めたい。