カンガルーケアに運用基準を
カンガルーケアに運用基準を 02/26 18:58

カンガルーケアをご存知でしょうか。

生まれたばかりの赤ちゃんと母親が、肌と肌を触れ合わせてひとときを過ごすもので、母乳の出が良くなるなどの効果があるとされています。

しかし、カンガルーケア中に赤ちゃんの容体が急変するケースが相次ぎ、専門家の間では、明確な運用基準を定める必要があるとの声があがっています。

去年12月、長崎市内の産科医院で生まれた、体重3,156グラムの元気な男の子。

しかし…。

赤ちゃんは生まれてから1時間後、呼吸が完全に止まった状態で、総合病院の新生児治療室に搬送されました。

今も浩太郎くんは、自分で呼吸することができません。

生まれてから容体が急変する間に、産科医院の分娩室では、カンガルーケアが行われていました。

生まれたばかりの赤ちゃんとお母さんが直接、肌と肌を触れ合わせてひとときを過ごす行為です。

1970年代に保育器が不足する南米のコロンビアで、未熟児の赤ちゃんの体温を維持するために始まったと言われています。

その後、母乳の出が良くなることや、母親と子どもの絆が深まることなどを期待して、国内の一般の産科医院でも10年ほど前から広まりました。

最初に浩太郎くんの異変に気付いたのは母親です。

その後、部屋には母親と浩太郎君だけが残されました。

カンガルーケアの開始から20分後、母親が看護師を呼んだ時、浩太郎くんは息をしていませんでした。

元気で生まれた赤ちゃんが、カンガルーケアの最中に容体が急変する、浩太郎君のようなケースが相次いでいます。

倉敷中央病院の渡部晋一医師らの調査では、カンガルーケア中に容体が急変し、重篤な状態になった少なくとも16人の赤ちゃんを、全国の12の新生児集中治療室が受け入れていたことが分かりました。

赤ちゃんの容体急変と、カンガルーケアとの直接的な因果関係は解明されていませんが、去年開かれた学会では、複数の医師が、生まれた直後にカンガルーケアを実施することの危険性を指摘しています。

浩太郎君が生まれた長崎市内の産科医院の院長は、「カンガルーケア中に急変する例があることは知っていたが、自分のところでは初めてだった」と話しています。

カンガルーケアを実施することは、両親に伝えられていませんでした。

最近の調査では現在、全国のおよそ7割の産科医院で、生まれた直後のカンガルーケアを実施しているということです。

このカンガルーケアについては、医療従事者の間でも、その是非や運用方法をめぐって意見が分かれています。

重症化したケースでは、病院側を相手取った訴訟もすでに起きていて、浩太郎くんの両親も今後、裁判を起こすことを検討しています。