衆院で高校授業料の無償化法案の審議が進んでいるが、朝鮮学校を対象から除外する意見も出ている。在日朝鮮人の子弟は日本の社会で生きていこうとしている。日本の高校生と差別したくない。
教育を等しく受ける権利は国際条約で保障されている。国際人権A規約(社会権規約)では、教育によって民族や人種間の理解と友好を促進すべきだとしている。
高校授業料無償化は日本の学校だけに限らない。欧米系の外国人学校は、本国が高校課程の教育をしていると証明すれば、無償化の対象になるとされる。ところが、朝鮮学校には除外論が出ている。
例えば中井洽拉致問題担当相は無償化の対象から外すべきだと主張する。北朝鮮は核、ミサイルの開発を続け、日本人拉致問題の解決にも応じない。北朝鮮を支持する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が朝鮮学校を援助し、影響力を持っているなどの理由だ。
文部科学省内にも、日朝間に国交がなく、「北朝鮮本国の教育体系に朝鮮学校をどう位置付けているか、明らかではない」と無償化に慎重論もあるとされる。
確かに北朝鮮は独裁国家だが、在日朝鮮人の子どもたちはまったく別の社会で生きている。朝鮮籍を理由に教育の機会を制限すれば差別を助長するだけだ。
朝鮮学校は高校課程にあたる高級学校が全国で十校、生徒は約二千人。朝鮮籍が多いが、韓国籍もいる。授業は朝鮮語で行われるが、語学や朝鮮史などを除けば、日本の学習指導要領に準じた教育をしている。
朝鮮学校のスポーツチームは日本の高校の競技大会に出場しているし、日本の多くの大学は同校卒業生の受験資格を認めている。教育現場では、既に朝鮮学校を高校として見なしている。
かつては北朝鮮の体制をたたえる思想教育が盛んだったが、いまは父母たちの要望で、民族の言葉と文化を学びながらも、日本の社会についての知識、技能の習得にも力を入れているという。子どもたちの未来は日本で生きることにあるからだ。
日本政府もこうした実情を調査したらいい。日本で進学し、就職する在日の子弟たちを援助するのは、人権規約にもかなう。
朝鮮学校には教育の内容をさらに公開するよう望みたい。民族の誇りを教えることは決して反日教育を意味しないと理解されれば、地域社会の支援も広がるはずだ。
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