きょうの社説 2010年3月3日

◎生活保護増加 自立促す支援を積極的に
 石川県内で生活保護受給世帯が増え続ける深刻な状況を考えれば、受給手続きや支援に 当たるケースワーカーの拡充は急務である。金沢市などでは社会福祉法で定められた1人当たりの担当世帯数を大幅に上回っており、ケースワーカーが過重な負担を強いられれば、自立へ向けた積極的な支援も難しくなる。

 生活保護は「利用しやすく自立しやすい制度」への転換が迫られている。社会の最後の よりどころであるセーフティーネット(安全網)で助けるだけでなく、その網にバネの働きを持たせ、生活再建を促すことが重要であり、支援の要となるケースワーカーの役割は極めて大きい。失業や収入減で生活が困窮した現役世代については、他の行政機関と一体となり、就労支援を手厚くしていきたい。

 生活保護の受給者は世界同時不況以降、全国的に増加し、県内でも今年1月末の受給世 帯は5061世帯に上り、45年ぶりに5千世帯を超えた。

 生活保護制度では、自治体や福祉事務所のケースワーカーが受給手続きや調査、自立支 援などに当たっている。1人当たり80世帯が標準数だが、金沢市は102世帯、輪島市は84世帯と基準を超え、他の地域でも担当世帯数の増加がみられる。配置基準は義務づけではないが、世帯を多く抱えれば業務量は確実に増え、個々の支援が手薄になることは否めない。

 申請が増えれば不正受給の懸念も出てくる。制度の信頼を維持するうえで受給決定には 厳正さが求められ、その点でもケースワーカーの責任は重い。

 生活保護世帯が抱える問題は多様化、複雑化している。生活に深くかかわる仕事だけに ストレスを抱えやすく、人間関係に悩む場面もあるだろう。自立支援が不十分なために受給者が増え続け、担当者が疲弊して人材不足を招く悪循環は避けねばならない。現場の状況に見合う人員確保とともに個々の資質向上も図ってほしい。

 生活保護増加の背景としては、雇用や年金などの安全網が十分に機能していないとの指 摘もなされている。社会保障の安全網再構築については、全体の制度設計のなかで考えていく必要がある。

◎北教組幹部逮捕 許せぬ「主任手当」の流用
 北海道教職員組合による民主党の小林千代美衆院議員側への違法献金事件で、裏金の原 資として組合員が長年にわたって受け取りを拒否してきた「主任手当」の一部が流用されていた疑惑が浮上してきた。事実ならば、学校教育の質を高めるために支出された税金が選挙運動に使われたことになり、許し難い。

 この事件では、北海道教組の実質トップの委員長代理や書記長ら幹部3人と、小林陣営 の会計責任者で自治労北海道本部財政局長が政治資金規正法(企業・団体献金の禁止)違反容疑で逮捕された。小林陣営から逮捕者が出たのは、昨年秋、選対委員長代行だった連合北海道札幌地区連合会長が公選法違反(運動員買収)容疑で逮捕・起訴され、札幌地裁で懲役2年・執行猶予5年の有罪判決を受けたのに続いて2回目である。

 小林議員は前回の衆院選で、自民党の町村信孝元官房長官を破って当選したが、北海道 教組が1600万円の裏金を提供したとされており、資金も組織も北海道教組の丸抱えだったとみられる。教員個人に支給される主任手当を集めて組合資金としてプールし、選挙の裏金に使っていたのならば、個人ではなく、組織ぐるみの犯行とみざるを得ないだろう。

 北海道教組は日教組の加入率が全国平均より高く、「武闘派」と呼ばれる。教育公務員 特例法で、教職員の政治活動や選挙運動が禁止されているにもかかわらず、文科省の主任制度や学習指導要領を否定し、北海道教育委員会が行った「いじめ実態調査」への協力を拒否するなど、政治的な活動に極めて熱心である。

 北海道教組は、幹部3人の逮捕について、「政治資金規正法に違反する事実は一切なく 、不当な組織弾圧」との声明を発表した。上部組織の日教組書記長が「極めて残念で、加盟する単位組合とともに信頼回復に全力をあげる」との談話を発表しているにもかかわらず、当事者は現時点では反省する気などないようだ。違法行為の事実が明らかになったとき、北海道教組の先生たちは子どもや保護者にどう弁明するのだろう。