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きょうのコラム「時鐘」 2010年3月3日
フグ料理を食べる時は「ソッコウショ」ととなえる、と落語のマクラで聞いたことがある。まじないのような言葉は「測候所」で、あたらぬ天気予報に引っ掛けてフグの毒にもあたらぬようにと願う
気象衛星が飛ぶ時代には通用しない笑い話だが、過日のチリ大地震による津波の予測値が外れ、気象庁が謝罪した。最高で3メートル以上という情報が出たが、実際はその半分以下だった 謝罪とは本来、屈辱に身を震わせる振る舞いであろう。プロとして恥ずかしい仕業である。取りあえず頭を下げておくか、という政治家や役人の姿が際立つが、あんなまねをしてほしくはない 過大な予測を繰り返すと「オオカミ少年」の話のように警戒心が緩む。そんな批判を意識した謝罪だろうが、謝る必要はないという声もある。予測とは違ったが、最大1・45メートルという厳重な警戒が必要な脅威に襲われたからである 避難した住民同様に、不眠不休の緊張の時を気象庁の担当者も過ごしたはずである。軽々しくわびてほしくはなかった。予測の精度が違ったことより、自信喪失を告白するプロの姿の方が、よほど不安である。 |