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ポルノ規制について考える2

ネット君臨:第1部・失われていくもの/2(その2止) 膨大なダウンロード
 <1面から続く>

 ◇児童ポルノ、膨大なダウンロード

 ◇「抜け道いくらでも」

 コミック作家のHN「D」(38)は昨年7月、児童ポルノを第三者に提供した罪で懲役1年4月、執行猶予3年の判決を受けた。「狩り」にはかかわっていない。年末、毎日新聞の取材に応じた。

 −−ネットで交流していた愛好者は。

 ◆画像のやりとりをしていたのは50人くらい。

 −−仲間は増えたか。

 ◆10年前に比べ、ネットワークはかなり広く、強くなっている。ひとえにネットのおかげ、というかネットのせいだ。昔は一人で悩んでいた。

 −−「狩り」を知って注意しなかったのか。

 ◆やめた方がいいと思うが私に言う資格はない。本心は見たいから。自分の欲望に負けている。

 −−仲間が「狩り」をした責任は感じるか。

 ◆正直、ない。撮影する側も見る側もエスカレートしたものを求めていく。お互い破滅が待っていると分かっていても歯止めが利かない。

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 部屋を予約した団体名は「お絵描き親睦(しんぼく)会」だった。

 HN「なるえ」の元JR東海職員(33)らが千葉県で「狩り」と呼ぶ少女へのわいせつ行為を撮影した翌月の04年11月。同じ小児性愛者グループが埼玉県西部の市民会館に集まった。記録には「参加者8人」とあるが、実際は20人を超えた。

 容量を大幅に増やした「タワー」というハードディスク(記憶装置)が15畳の和室に運び込まれた。普通のパソコンの20台分。膨大な児童ポルノが収められた「金庫」だ。参加者はそれぞれのパソコンをタワーにつなぎ、好きなものをダウンロードする。

 1枚の大きな紙を広げ、寄せ書きのように画像を模写する。手本を見せる師匠はD。描き終えると全員がサインを添えた。

 ネットの進歩が欲望の連鎖を広げる。昨年12月7日、一連の事件で逮捕・起訴されたHN「有栖川きつね」の郵政公社職員(30)はさいたま地裁の公判で「ネット回線の高速化が進んだ2、3年前から(児童ポルノの収集を)本格的に始めた」と述べた。パソコンには8000点が残っていた。

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 「犯人を追いかけられない」。捜査は困難を極める。

 警察庁は02年、児童ポルノ画像自動検索システムを導入。ネット上にはんらんする違法画像をチェックしている。

 しかし、技術がその上を行く。たとえばホームページに画像を載せるアップローダー。パスワードを入れないと見られないように設定できるため、ネット上に広がらない。警察庁幹部は「これを使われると手が出ない」。最近、携帯電話でも使えるようになった。

 今回の事件で、オフ会と呼ばれる同様の集会の開催は、なるえがネットに作った掲示板で案内した。ここも限られた者だけが知るアドレスを打ち込まないと行き着けない。彼らは逮捕につながる画像を「流禁」(流出禁止)扱いと決め、互いに念を押した。

 Dは取材に「ネットにはいくらでも抜け道がある」と話した。児童ポルノの提供罪は3年が時効。パソコンには送信日時が自動的に記録される。「これを3年以上前に書き換えたうえ、相手と口裏を合わせれば立件は不可能です」

 埼玉、宮城両県警が摘発できたのは、昨年初めに宮城県内で強制わいせつ容疑で逮捕された元自衛官(26)が小児性愛者グループの一人だったからだ。

 その時、グループの間に「おれたちもやばい」とメールが回った。なるえはDVDをDに預けた。自分のパソコンは捨てられず、庭に埋めたが警察に発見された。Dは別の仲間の家に行き、すべての画像を完全に消すため米軍が使うソフト「ブラックホール」で証拠隠滅を図る。だが、やはり自分のコレクションは保管し、逮捕された。

 なるえと一緒に「狩り」をした男は仲間に「捕まったら仕方ない。ほとぼりが冷めたらまたやろう」とメールを打った。ログ(送受信記録)を消して逃げ切ったメンバーもいる。

 一方、親が「子供に事件を思い出させたくない」と被害届を断念したケースも少なくない。捜査幹部は「余罪がどれだけあるのか、誰にも分からない」と言う。

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 Dのホームページにはこうある。「幼女と仲良くなったり、声を掛けたりするのが悪だとは思っていない。女の子にとっても後々良い思い出であるなら、むしろ善であるだろう」。これをまた誰かが目にする。

 記者は「狩り」の現場となった千葉県の町を歩いた。夕方、親が見守る中で子供たちの集団下校が続いている。

 被害者の少女は10歳になった。今もスカートをはくことさえ怖くてできないという。=つづく

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 ■■■■ネット用語■■■■

 ◇チャット パソコン画面で文字による会話をする機能。

 ◇ダウンロード ネットワーク上にある画像などの情報を自分のパソコンに取り込んで保存すること。

 ◇アップローダー 画像情報などをネットの掲示板に転送するシステム。

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毎日新聞 2007年1月3日 東京朝刊


やはり厳罰化(公訴時効の延長も含め)、ヨーロッパの一部でも行われているように囮(おとり)捜査もやむをえないのではないでしょうか?ネット全般に規制をかけるよりはまだマシというレベルだけど・・・

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