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夏の高野初戦12連敗!甲子園なぜ勝てぬ2009年09月17日
甲子園球場の記者席で、明桜の敗戦を見届けてから約1カ月。県勢の初戦連敗記録は12に伸びた。昨秋から高校野球の取材を担当してきたが、今月で交代することになり、改めて考えた。「秋田の野球に何が足りないのか」「どうすれば勝てるのか」(田中祐也) ◆力の差◆ 県勢は97年に秋田商が1勝して以来、毎夏、初戦で姿を消してきた。青森の13連敗に続くワースト記録だ。県内の野球レベルの底上げは関係者だけでなく、多くの県民の願いにもなっている。 「もう一度、基礎的な練習から取り組むべきだ」。秋田市立のエースとして74年の甲子園大会に出場した石崎透さんはこう話す。秋田大会のテレビ解説を長年務めているが、近年は平凡なミスで勝敗が決まる試合が目につくという。「週末を練習試合ではなく、丸1日練習にあててキャッチボールやトスバッティングなど基本を徹底させることも必要」と提案する。 その上で、「甲子園常連校との練習試合を1試合でも経験すること。差を感じることでチームが変わるはず」と話す。石崎さん自身、秋田相互銀行2年目のとき、都市対抗の常連の電電公社東京(現NTT東日本)と練習試合をした。相手選手は1度、犠打を失敗すると、すぐにベンチに下げられ、試合が終わるまで走らされていた。「全国レベルのチームは厳しい」と痛感、秋田に戻り、練習時間を延長してほしいと直訴した。その後、都市対抗野球大会に9回出場するまでになった。 他県に比べ、秋田の選手たちの体の細さが気にかかる、ともいう。確かに、今年の明桜のベンチ入り選手18人の平均身長は175センチ、平均体重は70キロ。一方、優勝した中京大中京は176センチと身長は1センチしか変わらないのに、体重は75キロだった。鍛え上げられた体を見て、明桜のある主力選手は「自分の体形が恥ずかしくなる」とこぼした。 ベスト8に入った帝京は、昼食時に1人3合のご飯を食べるのが「ノルマ」だ。「食べることもトレーニング」。選手たちは口をそろえた。 ◆早期教育◆ 8月20日、甲子園球場。ベスト8をかけて花巻東と戦う東北のアルプススタンドに、夏井康吉君(1年)の姿があった。男鹿市出身。中学時代は硬球で野球をする「リトルシニア秋田」に入っていた。 昨春の選抜大会に出場した全選手のうち、半数以上を、中学校時代に硬式野球チームに所属していた選手が占めた。学校の野球部の良さもあり、単純に比べられないが、目的を戦力向上に絞った場合、リトルシニアを盛んにすることも一策だろう。 中学の野球部が県外の学校と練習試合をすることは少ないが、リトルシニアはほぼ毎週、東北各地に遠征に出る。夏井君が「全国のチームと試合をすることができ、自信になった」と話すように、レベルの高いチームと試合を重ねることで、個人の技術向上にもつながる。 リトルシニアの加盟数は全国で約500チーム、東北では48チームあり、花巻東の菊池雄星君も盛岡東シニアの出身。秋田ではリトルシニア秋田が06年に県内初の加盟を果たしたが、まだ4チームしかない。 今春、リトルシニア秋田を卒団し、県内の高校に入学したのは7人。5日に開幕した秋季地区大会では、全員がベンチ入りし、4人がレギュラーをつかんでいる。リトルシニア秋田の平川智喜主将(15)はきっぱりと言った。「目標は甲子園。そのためにリトルシニアを選んだ」 ◆メンタル◆ 県勢が甲子園で実力が出せないのはメンタル(精神力)が弱いからだとも言われる。 対策として、運動選手の心理を研究するノースアジア大の伊藤護朗教授は「緊張の場面を何度も経験すること」と話す。体験しなければ、メンタルトレーニングに時間を費やしても意味がない。強豪校と試合をするなど、厳しい環境で野球を続けることが大切だという。 もうひとつが「プラス思考」だ。気持ちが後ろ向きになると体が硬くなる。凡打しても仲間がハイタッチで迎えたり、ピンチのときも常に笑顔で大きな声を出したりする。こうした姿勢でいると、力を素直に出せるという。ただ、「精神力を鍛えても実力以上のものは出ない。技術や体力が伴わないと甲子園では勝てない」と話した。
マイタウン秋田
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