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正念場のトヨタ 米側は電子制御欠陥、意図的リコール回避に照準
トヨタ自動車が正念場を迎える。豊田章男社長自らが24日(日本時間25日)に開かれる米議会の公聴会で証言に立つ。議会側は電子制御システムの欠陥や欠陥隠しによるリコール回避に照準をあてて追及。トヨタ側は、あくまで否定する構えで、議論が堂々巡りのすれ違いに終わる可能性がある。米国の“疑念”を払拭(ふっしょく)できなければ、信頼回復どころか不信を増幅する恐れすらはらんでいる。
「アクセルを踏んでいないのに勝手に加速しギアをバックに入れても走り続けた。時速は160キロに達して最後は死も覚悟した」
前哨戦である23日の下院エネルギー・商業委員会の公聴会。事前書面によると、テネシー州在住のトヨタ車オーナー夫人は、こう恐怖体験を証言した。
証言者の人選からも、トヨタの主張を突き崩して、欠陥をあぶり出そうという、委員会の戦略が透けてみえる。
ワクスマン委員長は、トヨタが2001年以降に電子制御システムを導入した車種について、「苦情は他の車種や他のメーカーと比べて際だっている」と指摘。調査の不備などを挙げ、電子制御の欠陥に確信を深めている。
豊田社長を待ち受ける監督・政府改革委員会は、米運輸省安全当局との「なれ合い関係」(議会筋)による欠陥隠しの構図を描く。
タウンズ委員長は「当局は07年の段階で急加速は極めて危険と認識し、調査に入りながら、原因解明はうやむやにされた」と疑っている。
委員会にトヨタが提出した膨大な内部文書がメディアに出回り、「隠蔽(いんぺい)体質」というイメージが形成されつつあるなど、“世論づくり”にも抜かりはない。
癒着を疑われた運輸省のラフード長官は23日の証言で報告義務を怠っていた場合、最大1637万5千ドル(約14億9千万円)の制裁金を科す可能性を示し、あわてて予防線を張った。
「トヨタが講じている確固とした措置を議会と米国民に直接お話しすることを楽しみにしている」
20日に米国入りしてから隠密行動を続ける豊田社長は23日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で心中を明かした。
トヨタにとって公聴会は「信頼回復への好機」(同社関係者)でもある。
実際、米PR会社クゥエル・グループのジム・ケイン上級副社長は「米国民が待っているのは、責任を認め、問題を解決し、同じ問題を二度と起こさないというシンプルなメッセージ。豊田氏はそれができる唯一の人間だ」と指摘する。
だが、疑念を晴らすのは容易ではない。急加速問題では「ほとんどがアクセルとブレーキの踏み間違い」(日本メーカー)との声も多いが、それをメーカー側が立証するのは困難だ。米国内ではトヨタ車の事故をめぐる集団損害賠償の動きも広がっており、安易に「責任」を認めれば、巨額の賠償につながる。
欠陥隠しも、「誠心誠意」(豊田社長)だけでは通じそうにない。
議会との深い溝を埋められないまま、豊田社長は審判の席に着く。(ワシントン 渡辺浩生)