「WBA世界Sフライ級タイトルマッチ」(5月8日、大阪府立体育会館第1競技場)
奇跡よ、起これ‐。ボクシングのWBA世界Sフライ級王者・名城信男(28)=六島=が1日、大阪市内の電器店で3度目の防衛戦を発表。名城は「後援会の方の息子さんが病気と闘っている」と明かし、新型インフルエンザに感染して昨年11月から意識不明の重体となっている5歳の男児に、勝利を届けることを誓った。試合は5月8日に大阪府立体育会館で、昨年9月のV2戦で引き分けた同級1位ウーゴ・カサレス(31)=メキシコ=との再戦となった。
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V3戦発表の冒頭、名城が重々しく、意を決したように口を開いた。「今回は負けられない理由があります。後援会の方の息子さんが病気と闘っている。勝つことで勇気づけたい」。病室に思いを届けるべく、しっかりとした口調で思いを述べた。
昨年11月、5歳の男児を突然の悲劇が襲った。世界王者になる前から親身になって応援してくれている恩人の息子が、新型インフルエンザに感染。直後に意識不明の重体に陥り、現在も意識は戻っていない。
男児はチャンピオンのことが大好きで、「名城くん、名城くん」と呼んでついて回り、昨年1月のグアムキャンプにも帯同した。名城の結婚式では、結婚指輪を運ぶ“リングボーイ”の大役を務めてくれた。昨年9月のV2戦でも、防衛を果たした名城にリング上で花束を手渡し祝福。試合を観戦することを、何よりの楽しみにしていた。
男児は一度、危険な状態に陥ったことがある。その時、名城の入場曲を病室に流すと、脳裏に焼き付いている「名城くん」の奮闘を思い出したのか、状態を持ち直したという。自分が勝つことで奇跡は起こる‐。王者はそう信じて、V3戦のリングに上がる。
相手のカサレスとは、V2戦からの連戦となる。「前回は引き分け。しっかりとKOで勝って決着をつけたい」と話し、「パンチ力、スピード、すべてを把握している。怖いものは何もない。自信も手応えもある」ときっぱり言い切った。
病魔に負けるな!!オレも頑張るから!!大きな思いと願いを背負った王者・名城信男は、自らの拳でエールを送る。