きょうの社説 2010年3月2日

◎首都圏で誘客商談会 石川の食は大きな観光資源
 石川県と県観光連盟が今月、東京で初めて開く「首都圏誘客ビジネス商談会」は、食品 関連企業が食をテーマにした旅行プランを提案する。石川の豊かな食文化は大きな観光資源であり、県内では食品製造の工場見学による産業観光や特産品を通じた新たなイベントなどで誘客を図る動きが広がっている。

 北陸新幹線金沢開業に向けた行動計画「STEP21」にも産業観光と体験観光の推進 が唱えられており、そのなかで「食」が担う役割は大きい。2014年度末までの開業が迫るなか、食の観光資源の掘り起こしと首都圏への情報発信を強めたい。

 新たな観光スタイルとして県が定着を目指している産業観光の推進に向けて、石川県食 品協会も食品製造の工場見学ができるガイドマップを製作した。食の分野への観光客の関心は高く、隣の富山県でも料理体験や店舗めぐりなどを組み込んだ周遊ルート「とやま食の街道」のツアーが人気を集めている。各自治体や関連団体、企業などが連携して、石川ならではのルート構築の工夫を重ねる必要がある。

 県が東京で開く商談会では、食品関連の企業が、食の製品づくりや工場見学などを組み 込んだ観光プランを首都圏の旅行会社の関係者らに提案する。石川の魅力をPRする場にとどまらず、確実な誘客につながる具体的な提案をして、新たな客層を呼び込む契機にしたいものである。

 食は大事な観光資源であるが、身近すぎて地元ではその価値が見逃されやすいとの指摘 がある。それらの資源を再認識することが求められており、たとえば、東京・築地で最高級品とされる能登のナマコについては、地元の加工協同組合が「ナマコ供養」を計画しており、知名度アップと県外からの誘客につなげる取り組みとして注目される。

 関東地域からの観光客数は近年、約225万人で推移しており、それに対して人口が半 分程度の関西地域は約250万人である。観光資源としての地元の「食」の見直しを急ぎ、首都圏からの誘客促進を後押ししたい。

◎朝鮮学校の無償化 憲法上の制約あるのでは
 高校の実質無償化の対象から朝鮮学校を除外するよう求める意見が政府内で根強いのは 、国交がないために教育内容を十分確認できず、高校に相当する各種学校かどうか判断できない懸念があるからだろう。憲法89条は「公の支配」を受けない教育などの事業に税金を充ててはならないと定めている。朝鮮学校が「公の支配」下にあるとは言い難く、国民の税金で就学支援を行うのは、憲法上問題があるのではないか。

 国会で審議入りした高校授業料無償化法案は、朝鮮学校を含む各種学校について、対象 範囲を「高校の課程に類する課程を置くもの」と規定し、文科省が対象の線引きを行う方向である。無償化の対象とするなら、少なくとも朝鮮学校がどのようなカリキュラムで、どういった内容の教育を行っているのかを調査・公表し、学習指導要領に準拠していることを証明する必要がある。朝鮮学校側は文科省の監督・指導を受け入れ、「公の支配」下にあることを自ら示さねばなるまい。

 鳩山政権では、拉致問題担当の中井洽国家公安委員長が北朝鮮による日本人拉致問題や 核実験に対する制裁措置の実施を理由に朝鮮学校を無償化の対象から除くよう求めた。北朝鮮が資金援助し、金日成・金正日政権への忠誠心をはぐくむ教育を行ってきたとされる朝鮮学校に、日本の税金を投入するのは、国民感情に反するという主張である。

 就学支援金は私学の場合、学校法人などの学校設置者に直接支払われるため、国家公安 委員長が神経をとがらすのも無理はない。朝鮮学校は、朝鮮総連の強い影響下にあって、北朝鮮が運営資金の一部を援助しているとされている。税金を投入すれば間接的に北朝鮮を助けることになる、と考えるのは当然だろう。

 朝鮮学校側は、無償化除外は「民族差別」などと反発している。だが、本気で適用を受 けたいなら、自らカリキュラムを開示してはどうか。文科省から問題点が指摘されたら、手直しすればよい。支援金は欲しいが、「公の支配」はいやというのでは虫が良すぎる。