きょうのコラム「時鐘」 2010年3月2日

 冬季五輪を見終わって「カナダは住みやすそうな国だ」との感想を持った。東洋系も多い移民同士が溶け合って、子どもたちの笑顔がいい

カナダの魅力を世界にアピールできたのなら五輪開催の意義は大きい。様々なオリンピックを見てきた。国威発揚の意図が露骨な大会や古い民族の誇りを取り戻すような大会もあった

今大会は、国対国の熱い戦いもあったが、選手対選手の美しい競い合いが心に残った。地方色豊かで、かつ国際性をもったバンクーバーの雰囲気は自然の美しさとともに印象深い

ある美術家が、日本の工芸の特徴は四季の美しさを描く点にあるとカナダの青年に説いたところ「カナダの自然はもっと美しい」と反論された。そこで再び説明した。「美術に四季が反映してますか」。それでカナダ青年は納得したという

自分の国を美しいと思うのはだれも同じだ。美は主観であり、国民性がにじむ。「日本は美しい」の言葉を独善ではなく、客観的に表現できる能力がこれからは必要だ。五輪はその感性を育てる。17日間ご苦労様の感謝を込めて、カナダに一番きれいな色のメダルを贈りたい。