2010年2月27日
書き込みは携帯電話から。たすきを見て「頑張れ!」と声をかけてくれる人もいる=20日午後2時47分、福岡市中央区
交通費ゼロ。宿泊費ゼロ。インターネットの情報交換サービス「ツイッター」への書き込みで協力者を探し、日本一周の無銭旅行を試みる女子大生がいる。目的は、「人の優しさにふれること」。ネットと現実をつなげながら、旅は今も続いている。
旅人の名は土井雪江さん(18)。東京・秋葉原にあるデジタルハリウッド大の1年生だ。
《徳島の宿泊ご協力いただける方おりませんか?》《広島から山口への移動ご協力いただけませんか?》。携帯電話からツイッターに書き込み、行く先々で協力者を募る。土井さんのツイッター(http://twitter.com/yukie0339)への書き込みは、ネット上で誰もが見られる。協力を申し出てくれた人とは、画面を通じて公開でやりとりする。
若い女性の一人旅を、親や友人は心配する。でも、ツイッターでのやりとりはリアルタイム。彼女の書き込みは8700人以上が定期的に読んでおり、彼らが「見守り役」となっている。
1月30日に東京を出て西へと進み、今月26日までに23府県を回った。自宅に泊めてくれたり、車に乗せてくれたり、200人を超える人が協力してくれたという。27日は鹿児島から佐賀、長崎を通り、山口を目指す強行軍だ。
今回の無銭旅行のきっかけは、昨夏の東南アジアへの旅。異国の人々の暮らしにふれるのは楽しかった。帰国して、ふと思った。「私は結局、お客さん。人間同士、もっと心から交流することはできないのかな」。行き着いた答えが、人の助けなしには続けられない無銭旅行だった。
協力してくれる人たちは、動機も年齢もさまざまだ。旅好きで「自分が受けた厚意を誰かに返したい」という人がいたり、親と同世代で「ゆっくりしていって」という人がいたり。
広島県で自宅に泊まらせ、一緒に観光もした西浦幸世さん(46)は、「『ありがとうございます』を口癖のように言うしっかりした子。娘みたいに思っています」と話す。土井さんは広島をたつ時に、ツイッターにこう記した。《涙涙のお別れとなりました(涙)本当にありがとうございました!!》
出発の約1週間後には、宿の提供を申し出た人の住所をネットで公開してしまう大失敗をした。でも、その人からは「気にしていない。旅を楽しんで」と逆に励まされた。
「無謀だ」「甘えているだけ」と手厳しい批判もある。次の目的地へ向かおうにも協力者が見つからないこともある。《自分のできなさに本当朝から泣けてきます》。ツイッターで何度も弱音をつぶやいた。けれども、初対面の人たちが「応援してるよ」と迎えてくれるから、前へ進める。
もともとは、引っ込み思案。旅は自分を変える挑戦でもあるという。「将来、自分が何をしたいのかわからない。この旅で、何か見つかるかもしれない」
九州の後は本州を日本海沿いに進み、春休みの終わる3月末までに東京へ戻る計画だ。この旅で自分がどう成長したのか。協力してくれたすべての人に、答えを伝えたいと思っている。(古田大輔)
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■土井さんの旅のルール
(1)一周旅行中の移動と宿泊は、沖縄への飛行機便以外、すべて協力者に頼る。
(2)協力者とのやりとりは公開。住所などの個人情報は、親にだけ事前に報告する。
(3)協力者とは実際に会った際に一緒に写真を撮り、ツイッターに投稿する。
(4)夜は危険なので移動しない。
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《ツイッター》インターネット上に140字以内で情報発信する無料サービス。文の短さから、書き込みを「つぶやき」と呼ぶ。誰が何をつぶやいたか検索でき、引用も簡単なため、知らない人同士もつながりやすい。