大阪放送局

2010年3月1日 20時3分更新

“医師の判断不適切といえず”


4年前、奈良県大淀町の町立病院で出産中の妊婦が意識不明となって死亡したのは医師の診断ミスが原因だとして遺族が訴えていた裁判で、大阪地方裁判所は「当時の医師の判断は不適切とはいえず、過失はなかった」として、遺族の訴えを退けました。

この裁判は平成18年、奈良県大淀町の町立大淀病院で高崎実香さん(当時32)が出産中に意識不明になり、搬送先の大阪府内の病院で死亡したことについて、夫の晋輔さん(27)と長男が、脳内出血を見逃した町立病院の診断ミスが死亡の原因だとして町と主治医に損害賠償を求めていました。被告の町と医師は「対応に間違いはなかった」と主張していました。きょうの判決で大阪地方裁判所の大島眞一裁判長は「意識を失ってから経過を観察した医師の選択は不適切とは言えず、過失は認められない」と指摘しました。
そして、「仮に脳内出血と診断できたとしても、進行が早く、想定できる最善策を講じても命を救うことはできなかった」として遺族の訴えを退けました。
実香さんの死亡をめぐっては、最終的に大阪府内の病院に運ばれるまで19の病院に受け入れを断られ、産科医療体制の不備が問題になりましたが、判決のあと、大島裁判長は「救急医療の整備・確保は国や地方自治体の責務であり、実香さんの死を無駄にしないためにも産科などの医療体制が充実することを望む」とする異例の言及を行いました。
会見した晋輔さんは「判決を聞いたときは頭が真っ白になった。納得できる判決ではないが、控訴は考えておらず、今後、産科医療が改善されることを願います」と話していました。