トヨタ、2回あったアクセルペダルの不具合
トヨタ自動車は米国、欧州、中国で発生したアクセルペダルの不具合において、初期に発生するトラブルと、ある程度使用した後に発生する二つのトラブルがあったことを明らかにした。
不具合が発生したアクセルペダルは、米CTS社製のもので国内で生産する車両に搭載されているデンソー製と構造が異なっている。CTS社製ペダルの構造は図に示すように、ペダル本体、フリクションレバー、フリクションレバーが下部で当たる部分で構成している。運転者はアクセルペダルを踏むと、通常はばねで押し戻す力が発生するが、フリクションレバーが摩擦を発生させる機能を持つことで、踏み始めや戻すときにすぐにペダルが動かないようにできる。これによって運転中に踏力を緩めてもアクセルペダル開度が過敏に反応しないような特性を実現できる。
最初に発覚したトラブルは、2007年にピックアップトラックの「Tundra」で発生したもの。この際は部品の一部に吸湿性の樹脂を利用していたため、軸受け部などにおいて樹脂が膨潤することで摩擦力が増え、動きにくくなるという現象が出た。これは販売後比較的早期に発生するトラブルで、その不具合が報告されたため、吸湿しにくい樹脂に材料を変更したという。
この対策で早期に起こるトラブルは解消したが、新たに使用期間が長くなると起こる別の不具合が判明した。これは、2009年に欧州で分かった問題で、今度はペダルとフリクションレバーの接触面における摩擦が大きくなり、ペダルが戻りにくくなる。
アクセルペダルの構造を見ると、フリクションレバーとペダルが接する部分は図のように凹凸の歯がかみ合う構造である。この歯同士にも摩擦力が発生するが、新しい不具合ではこの歯同士が接触する点での摩擦が大きくなってアクセルをやや開けた状態で固着する恐れがあるという。素材や環境条件によってスムーズに動かずに、アイドリングポジションに戻るのが遅くなったり、まれにやや開いた状態で止まってしまうケースがある。
この理由についてトヨタは「長期間使用することでペダルとレバーの接触部が磨耗してつるつるになってくる。その状態で結露が起こると両者を固着させる可能性がある」としている。実はこの問題は欧州では2009年8月に対策をしている。しかし、米国ではこの現象を2009年冬になってから確認したため、対応が遅れて規模が拡大してしまった。リコール対策としてトヨタは、フリクションレバーのペダル側ではなく下部で黒い部分と当たる部分に鋼板を挿入する。これによってフリクションレバーとペダルのかみ合う深さが浅くなり、摩擦力を低減することができるという。
膨潤性を解決するために変更した材料は明かしていないが、最初と同じく樹脂を用いているという。
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