飯島 勲|高速道路無料化「天下の愚策」の9つの復讐
「リーダーの掟」
高速でもなく、安全でもなく、負担が軽くもならない「民主党高速道路無料化」で、日本は早晩荒廃する。
※図版は民主党マニフェスト、および飯島勲氏の話をもとに編集部作成
「無料化」の実態は国庫の肩代わり
高速道路原則無料化を目玉政策として掲げ、民主党は総選挙で圧勝した。
実現できなければ、国民からの支持を失いかねない最大の公約であるが、私は断固反対である。
高速道路は全国の主要都市をネットワーク化し、人流、物流の効率化に貢献している。
「1000円乗り放題」で、観光、帰省、小旅行を楽しんだ家族にスポットを当て、景気の下支えの実例のように報道されているが、割引分の補填は税金でまかなわれていることを知っているのであろうか。「無料化」の実態は、「国庫が肩代わり」なのである。
さらに、自動車での移動が増えた分、電車、飛行機、フェリーなど他の交通手段による移動が減少し、それらの経営を脅かしている。
現在行われている施策は緊急対策で時限的な措置である。恒久的な無料化は微妙なバランスの上に成り立っている交通機関相互の健全な競争を歪め、経済合理性に沿わない利用促進によって運輸産業に深刻な影響を及ぼす結果になる。
高速料金が物流経費に占める割合は4%程度である。高速道路料金が運輸業の経営に一定の影響を与えていることは間違いない。
実際に複数の運輸業者から話を聞いた。
・高速道路には、安全性・高速性・定時性を期待している。
・今回の割引は、道路が一番混雑する時期に割引をするという、非常識なものだった。
・当然、先にあげた3つの利点が大きく損なわれた。
・都市部はもちろん地方部においてさえ「特急」という機能が失われてしまった。
・今後、無料になった場合、高速道路本来の機能が失われ、しわ寄せは当然運輸業者にくるだろう。
「民間にできることは民間に任せる」という理念の下で道路公団を民営化し、既存債務を料金で返済していくシステムが構築され4年間が過ぎた。この間民営化会社3社は700億円を税金として納め、賃貸料5兆円を支払っている。また、会社には株主(国100%)への配当原資として850億円の利益剰余金が蓄積されている。民営化によって従前の予算主義を改め、各社が効率的な運営に努めた結果であろう。
公団という組織の創立期は「官と民」のよいところを併せ持った形態として期待されていた。しかし、予算主義のもたらす悪弊が生じたこともあり、期待通りにいかなかったのだ。国の整備手法の反省に立ち、合理的・効率的な整備を目指したのが民営化会社方式である。
無料化すれば、高速道路の管理費用に税金を充てることになる。税金で管理を行わせることは時計の針を巻き戻すに等しい。365日、24時間安全で安心できる道路管理や非常災害時の速やかな対応は、現在の形態で民営化された会社でしかできないのではないか。
国土の津々浦々にある高規格幹線道路整備の要望に合理的に応えていくのは一般財源の中では至難である。それは受益者負担、つまり車を使わない人たちに高速道路の整備費用を求めるのはおかしい、という考え方からも説明できる。
今後の高速道路建設について、将来の国民負担を公平で最少にする仕組みとして民営化会社方式となったのであって、これを放棄した場合、債務返済計画がうやむやになってしまう。
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