【萬物相】太平洋を越えて来る「津波の恐怖」
日本語の津波を英語でも「tsunami」と書き始めたのは、1897年からだ。この年に英訳・出版された「明治文学全集」に掲載された作品の一つが、英語で「tsunami」と表記する発端となった-というのが、オックスフォード英語辞典(OED)の説明だ。「海水が壁のように高く盛り上がり、飛ぶ鳥よりも早く押し寄せた。人々が“津波だ!”と叫んだ」。その前年、日本の太平洋沿岸・三陸で起こった津波による惨事を描写した作品だ。
1896年6月15日、三陸地方では村祭りの最中だった。明け方の7時30分ごろ、地の底がごろごろと鳴ったが、人々はいつもの小さな地震の一つだろうと思った。およそ20分後、海岸の海水がすっと引いていき、恐ろしいことが起こった。海全体から何かが割れるような音が聞こえ、数千門の大砲を一度に撃ったような音が響いたかと思うと、海上に30メートルも盛り上がった水が、時速800キロという速度で陸地に向け押し寄せた。逃げるには遅すぎた。海岸から50キロまでの範囲では、生命体がほぼ全滅した。死者はおよそ3万人に達した。
津波は、海中での火山の噴火や地震によって引き起こされた波が、海岸や津などの浅い場所にさしかかり、身の毛もよだつような死の大波となる現象だ。津波が世界の普通名詞となったのは、日本がそれだけ多く津波に遭い、津波に関する研究も多かったことを意味している。また一方では、その時までほかの国は、津波という自然現象についてよく知らなかった、ということでもある。
先月27日に南米チリで発生した大きな地震による「津波災害(tsunami disaster)」の懸念から、太平洋沿岸の4分の1を超える地域が、警報や退避命令を発令するなどして気をもんだ。6年前にインド洋で発生し22万人の命を奪った津波の悪夢も生々しく、心配が大きかったというわけだ。幸いなことに、南米の太平洋沿岸を除き、大きな被害はなかった。
普段は地球の奥深くに縮こまっているが、時折姿を現し、自然の恐ろしさを教えていく知られざる力-それを、津波から感じた。100年前なら、チリの地震はチリだけの災厄で終わっていたが、今では発生直後から世界的事件になった。災害世界化の時代にあっては、救護と支援と備えもまた、地球的連帯の中で行われなければならない。韓国の救護と支援も、韓国の意思や誠意が確実に伝わる規模で、遅れることなく実行すべきだ。
金泰翼(キム・テイク)論説委員
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