中日−ロッテ 引退試合で打席に立った立浪さんは、ファンの声援に応えながらベンチへ戻る=ナゴヤドームで(小嶋明彦撮影)
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昨年限りで22年間の現役生活に別れを告げた立浪和義元中日内野手(40)=本紙評論家=が27日、オープン戦・ロッテ戦(ナゴヤドーム)に1番・指名打者で先発出場し、最後のユニホーム姿を披露した。結果は二飛だったが、試合は和田、井端の連続適時打などで5点を奪う快勝。ミスタードラゴンズの引退試合に花を添えた。
最後のショーは11球に及んだ。2ストライク1ボールからの5球目、本塁と一塁の間に上がったフライは捕手・里崎、一塁・福浦がともに捕れそうなのに捕らないという粋な計らいもあって、立浪さんは7つのファウルを含む8スイングでユニホームに別れを告げた。
「もっと早く終わらせるつもりだったのに、とらえきれなかった。大事な調整の時期に(自身の打席を)長引かせて申し訳なかった」。二飛に倒れるとマウンド付近まで足を運んで、相手役を務めてくれた成瀬にわびた。一度だけ許された現役復帰。だが、大事なのはシーズンを控えた自分以外の選手。野球の理想を22年間追い求めた男としてのけじめだった。
もちろん詰めかけた3万2802人のファンには最高のプレゼントになったはずだ。少なければ1球で終わってしまう背番号「3」の打席を何度も堪能できた。スタンドでは打席の間、無数のストロボ光線がきらめいた。できることなら終わってほしくない。そんな心の叫びが光となって姿を見せたかのようだった。
昨年10月24日のセ・リーグ、クライマックス・シリーズ第2ステージ、巨人戦(東京ドーム)以降「まったく練習していない」状態で「ファンのみなさんはヒットを望んだのでしょうけど…。とにかくバットに当たってホッとしてます」と苦笑いの立浪さん。試合後はマウンド付近でマイクに向かい「私はドラゴンズが大好きです。みなさんは世界一のファンです」と22年間の声援に最大限の感謝を示した。
ナインが提案した胴上げは辞退した。昨年9月30日のシーズン本拠地最終戦後の引退セレモニーで既に儀式を終えているからだろう。グラウンドに姿を見せただけでスタンドを沸かせた主役が去り、ナゴヤドームは新たなヒーローの登場を待つ。 (中村浩樹)
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