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ある外資証券の担当者によると、中国企業からの照会が多いのは「技術を持つ製造業」。薄型テレビなど日本の「技術の粋」が凝縮されているものに関心が高いようだ。
こうした中国の姿勢に、日本経済の停滞が重なった。技術力があっても景気低迷で不振に陥る企業が増えている。日興電機や本間ゴルフも一度倒産して再生を目指している。再生には設備投資などの新たな資金が不可欠だが、リーマンショック以降、国内や欧米の投資資金は潤沢でなく中国の存在感が増している。
真壁昭夫・信州大教授は「日本は産業再編が遅れている。中国企業が入ることで再編が促され、日本企業も強くなる」と言う。
ただ、「買われる側」に中国企業への抵抗感は根強い。M&Aを仲介する経営コンサルタント会社幹部は「買収の申し出を伝えても、相手が『中国』というだけで断られることが多い。大規模なリストラをされるのでは、という警戒感がある」という。
政府内などには、日本の技術が中国へ流出することへの警戒感もある。買収してノウハウだけ手に入れ、会社を解体してしまうような悪質な買い手は国籍に関係なく存在する。経済産業省幹部は「買われる側は相手と時間をかけて交渉し、買収後の経営体制や狙いをただし、不幸な買収を防ぐしかない」という。(畑中徹、山川一基)