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草野社長にも、中国事業の拡大が再生のカギを握るとの思いがあった。中国メーカーと組めば、共同開発や販路拡大に有利だ。「日興電機の将来も広がる」と社内に説明した。大和PIも「次の成長に有利なら」と後押しした。寧波は今年1月下旬、日興電機の発行済み株式の約8割を取得した。
日興電機には寧波から取締役など計5人が送り込まれたが、全員が非常勤。旧経営陣はそのままで、約200人の従業員の雇用は保たれた。寧波側からは「日本の経営は任せる」と言われた。将来の目標は「再上場」で、中国事業を復活の牽引(けんいん)役に期待する。
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中国企業による日本への直接投資残高(企業買収に、支店・工場の設置などを加えた額)は07年、08年に大きく伸びた。さらに企業合併・買収(M&A)助言会社のレコフによると、中国企業による日本企業のM&Aの総額は09年、08年の4倍を超す285億円となった。
昨年6月には、家電量販店のラオックスが中国量販店の傘下入りに合意した。日本ではラオックスの店舗網で中国人観光客向けの免税販売を強化し、中国ではラオックスの商品管理のノウハウを生かす狙いだ。
今年2月23日には、ゴルフクラブのしにせ「本間ゴルフ」(東京都港区)が、中国流通大手などが出資するファンドの傘下に入ると発表した。日本の工場で手作りする高級クラブが売り物の本間ゴルフは「中国市場での販路拡大が見込める」と話す。
中国企業の攻勢の背景には中国の国策がある。06〜10年の「第11次5カ年計画」では対外投資を積極化することが掲げられ、海外企業買収に対する政府審査の基準などが緩められた。多国籍企業を育て、海外の技術やノウハウを取り込んで自国産業の付加価値を高める戦略だ。