2010年2月26日
東証2部上場の精密機器メーカー「テークスグループ」(本社・神奈川県相模原市)の第三者割当増資をめぐり、内部情報をもとに同社株を売買したとして、大阪地検刑事部は25日、同社の大株主で「実質的経営者」の河野(かわの)博晶容疑者(67)=東京都品川区=ら3人を金融商品取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。いずれも認めているという。地検は証券取引等監視委員会と合同で自宅などを家宅捜索した。
刑事部の調べでは、この株の売買で5千万円余りの利得があったことが判明。河野容疑者が、知人らを同社幹部に就任させて経営に実質的にかかわり、内部情報を得ていたとみて調べる。
ほかに逮捕されたのは、河野容疑者の親族で会社役員の久次(ひさつぎ)孝幸容疑者(44)=東京都江東区▽河野容疑者の「秘書役」で別の会社役員の佐藤智之容疑者(47)=同。
刑事部の調べによると、河野容疑者らは2008年5月、テークスグループ(当時・東京衡機製造所)の経営拡大に向けて株式を新たに発行する第三者割当増資の決定に関与し、内部情報を入手。同9月1日の増資計画公表までに、同社株49万5千株を約4千万円で買い付けた。また、同社が同月19日に増資額の縮小を発表する前には、これまでの保有株と合わせて83万5千株を約1億1千万円で売った疑いがある。
調べでは、河野容疑者らは増資計画の公表後、同社株が高値をつけた時点でいったん売り抜け、約1700万円の利益を上げた。さらに、リーマンショックの影響で出資先が大口投資を見送り、増資額が大幅に下回ることが公表される前には、株価が下がる前に保有株を売って約3500万円の損失が出るのを免れたという。
投資・証券業界の関係者によると、河野容疑者は業界で「増資マフィア」と呼ばれていた。資金繰りに窮する上場企業に増資を持ちかけ、自らが大株主になったうえで経営にかかわり、その企業の株売買で利得を得る手法を約10年前から続けていたという。
また同時に、河野容疑者は大量の株売買を短期間に仕掛ける「仕手筋」としても動き、ゴルフ場経営や株売買で得た巨額の資金を元手に高利貸もしていたとされる。
そんな河野容疑者とつながりを持った著名人も少なくない。関係者によると、うその著作権譲渡話をめぐる5億円詐欺事件で2008年11月、大阪地検特捜部に逮捕された小室哲哉・音楽プロデューサー(51)=有罪確定=も、河野容疑者が実質的に経営にかかわっていたとされる業者から高金利で3億円を借り入れた時期がある。小室プロデューサーが手がけたCDアルバムの歌詞カードには、河野容疑者あてとみられる感謝の意が記されていたという。