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子ども手当:審議入り 財源確保に不安 満額、政府内にも慎重論

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR 政治>

 民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉政策である「子ども手当法案」が23日、自民党が審議拒否して欠席する中、衆院本会議で趣旨説明と質疑を行い審議入りした。マニフェストで掲げた主要政策の審議入りは初めて。財源確保に不安を残しての審議入りで、公明、共産の両野党だけでなく、連立を組む社民党も財源問題を指摘した。だが、長妻昭厚生労働相は「政府全体の歳出削減や予算の見直しに徹底して切り込む」と従来の説明を繰り返すにとどまった。【鈴木直、野原大輔】

 「満額支給(月額2万6000円)のための財源はどのようにするのか」(公明党の古屋範子氏)

 「次年度以降は満額になるのか」(共産党の高橋千鶴子氏)

 23日の質疑で野党側は満額支給となる11年度以降の財源を突いた。長妻氏は「財源を含めて11年度予算編成の過程で検討する。基本的にはマニフェスト通りに実現できるよう政府全体で結論づける」と繰り返すだけで、明確な答弁はなかった。

 同法案では、中学生までの子どもに1人当たり月額1万3000円を支給し、所得制限はない。対象は10年度のみで、11年度以降は2万6000円支給できるよう制度設計を行い、改めて法案を提出する方針。

 財源は子ども手当の「弱点」で、支給額が1万3000円でも10年度予算編成過程で問題となった。民主党は当初、「全額国庫負担」としていたが、地方や事業主も負担している現行の児童手当を存続させることで、総額2・3兆円のうち国庫負担を1・7兆円に抑えた。

 満額支給には5兆円規模の財源が必要で、ハードルはさらに高くなる。野田佳彦副財務相が「1万3000円で効果を見ながら次年度の額を考えるべきだ」と発言。野田氏は発言を撤回したが、政府内には今も実現を疑問視する声がくすぶる。2万6000円の根拠もはっきりしない。長妻氏は「子どもの育ちに必要な基礎的費用の相当部分をカバーすること、諸外国の制度と比較してもそん色がない基準などを総合的に判断した」と答弁。だが、諸外国と比べ2万6000円は手厚い。19日に新潟市で行われた衆院予算委の地方公聴会では、民主党推薦の意見陳述者が「バラマキに結びつくものに支出すべきでない」との批判も飛び出した。

 11年度からの満額支給について鳩山由紀夫首相は23日夜、首相官邸で記者団に「歳出削減努力や予算の見直しなどいろいろやりながらマニフェスト通り実現したい」と強調した。

 ◇保育所整備などにも不足

 子育て支援策が効果を上げるには、子ども手当のような「現金」のみならず、保育所整備など「現物」の整備が重要とされる。

 フランスでは合計特殊出生率が2近くあったが、現金給付を重視していた80年代に徐々に低下していった。90年代に子育て支援など「現物」への支出を増やした結果、一時、1・66まで低下していた出生率は、90年代半ばには上昇に転じ、06年には2程度にまで回復した。

 政府は「現物」の整備として、1月29日に「子ども・子育てビジョン」を閣議決定。年間5万人の待機児童を減らすなど、14年度までの具体的な数値目標を示した。だが、厚生労働省の試算では、これを実施するには年間7000億円が必要。保育所利用料の軽減などを含めると1兆6000億円にも上り、財源論に行き着く。

 23日の質疑では、社民党の阿部知子政審会長が「(10年度支給額の)1万3000円は欧州諸国の水準。喫緊の課題は待機児童対策だ。手当の倍額より現物給付の充実を図るべきだ」と主張し、11年度以降の満額支給を見直して保育所整備などに充てるよう求めた。

 子育て支援に取り組む大日向雅美・恵泉女学園大学教授(発達心理学)は「子ども手当だけでなく地域の子育て支援や保育所整備なども打ち出したことは評価できる。ただ、サービスの質を確保するためには、十分な保育士の確保など人件費も掛かる。こうした経費も含め財源が確保できるかどうか、不安がある」と話した。

毎日新聞 2010年2月24日 東京朝刊

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