●選手団長として教養も常識も欠けているこの国のスポーツ界現状の象徴
“服装問題”で日本中の注目を集めたものの、8位に終わったスノーボード男子ハーフパイプの国母和宏(21)。ま、実力通りの結果なのだろうが、驚いたのは試合後の橋本聖子団長(45、参院議員)の言動だ。
観戦した橋本は競技終了後、国母らに駆け寄って握手。記者団にこう語った。
「競技力だけでなく人間力を示すのが五輪。よくやってくれた。出場させてよかった。自分の判断は間違っていない」
これにはブッたまげてしまう。
バンクーバー入りした際の服装の乱れに端を発した騒動は一時、スキー連盟が国母の出場辞退をJOCに申し入れる事態に発展。これを慰留したとされるのが橋本だ。国母を伴って記者会見まで開き、「選手団長として私が責任を負う」と大見えを切った。温情をかけて出場させたのは自分だし、一応、決勝には進んだ。恩着せがましく、胸を張ったのだろうが、強烈な違和感がある。そもそも、国母の服装の問題は、そんな大げさな話なのか。
「国母は以前から問題児でした。4年前のトリノ五輪でも、暴れて選手村の壁を壊すなど素行の悪さが有名になった。JOC内部で『スノボからは代表選手を出すべきではない』という意見も出たほど。ただ、麻薬を吸ったりレイプをしたわけじゃない。今回は、たかが服装の問題です。そんなことで出場辞退になったらそれこそ世界中がビックリ仰天してしまいます」(現地で取材しているスポーツジャーナリスト)
●もう、いい加減に自民党はスポーツ界から退場すべき
それが大騒ぎになったのは、記者会見で「反省してマース」とバカ丸出しで答えてしまう国母の品性と、それに対してアホみたいにいきり立ったマスコミにまず原因がある。一部ファンが過剰反応してクレーマーと化し、スキー連盟は右往左往。こういう連中の迷走に加え、この騒動を政治的に収めて、自分の“力量”を誇示しようとした橋本の“下心”がミエミエだ。それやこれやが、くだらない大騒動になったのである。
「服装なんて、ちょっと注意してやれば済む話です。自分で騒ぎを大きくしておきながら、『滑らせてやった』と偉そうに言い、感動の美談に仕立て上げようとした橋本団長はいただけない。こういうところに政治家の本性が表れますね。だいたい、橋本団長は、たまたま大金持ちのお嬢さまだったからさまざまな競技で何度もオリンピックに出られただけの人。指導者としての実績なんて何もないのです。これまで、日本のスポーツ競技では、予算をつけてもらうために自民党の大物政治家を顧問や会長に頂くという悪しき慣習が横行してきた。橋本団長は、その弊害の最たる例です」(スポーツライターの工藤健策氏)
文教族のドン・森喜朗は日本体育協会会長や日本プロスポーツ協会会長をはじめ、日本ドッジボール協会名誉会長、日本トランポリン協会会長などを務めている。日本ソフトテニス連盟の会長は海部俊樹元首相。全日本剣道連盟の顧問には、自民党の古賀誠元幹事長……。もう、いい加減にして欲しい。自民党はスポーツ界からも早く退場するべきだ。
(日刊ゲンダイ2010年2月19日掲載)