きょうの社説 2010年2月28日

◎ルビーロマン東京へ 安定生産が「全国区」への道
 石川県産の高級ブドウ「ルビーロマン」が市場化3年目の今年、いよいよ首都圏デビュ ーを果たす。果物のなかでもブドウは品種競争が激しく、すでに評価が確立されたブランドがいくつもある。県内流通の段階では物珍しさもあって破格の値段がつき、評判も上々だったが、これからは並みいるライバルと比較され、市場の厳しい評価にさらされることになる。

 知名度を高めるため、県は都内の高級果物店での試験販売や有料試食会、マーケティン グ調査などを実施する。粒が国内最大級のルビーロマンはそれだけで話題性があり、見栄えで関心を引きつける優位性がある。あとは小売り側に売りたい商品と思わせ、値が張っても消費者にその価値を認めてもらうことが大事である。

 昨シーズンは天候不順で出荷量が目標を大幅に下回り、生産が容易でないことをうかが わせた。新年度は前年実績の約3倍となる最大5トンの目標を定めたが、ブランド化に弾みをつけるためにも、安定生産で商品化率を高め、「プレミアム」と呼ばれる最高位の商品を着実に増やしていきたい。

 今年は収穫が可能になる定植3年目のブドウが大幅に増え、6500〜8千房の出荷量 が見込まれている。長年にわたる品種開発を経て増産態勢が整い、本格的に売る段階に入ったと言えよう。

 市場化2年目の昨年は1・7トン(2807房)が出荷されたが、長雨や日照不足で目 標の2トン(4千房)に届かなかった。粒が大きい分、裂果のリスクがあり、「プレミアム」もわずか1房と前年の6房を下回った。品質の不安定さはブランド化の妨げになる。栽培技術はまだ発展途上といえ、研究をさらに重ねる必要がある。

 ルビーロマンのプレミアムは昨年、1房25万円と過去最高値で競り落とされた。県は 購買力のある消費者や贈答品需要などを狙っているが、全国ブランドを目指すにしても、県民が見たこともなく、その味を知らないようでは盛り上がりに欠ける。粒単位での販売、あるいは小ぶりの規格外の流通拡大など、県民への一層の浸透にも知恵を絞ってほしい。

◎米の核戦略見直し トマホーク後の抑止策は
 米政府は、原潜に搭載可能な核ミサイル「トマホーク」を順次退役させる方針を日本政 府に伝達し、8年ぶりに策定する「核戦略体制の見直し(NPR)」にも明記する方向という。オバマ大統領の核軍縮政策に沿うものであるが、これに関連して岡田克也外相が、米国の「核の傘」による抑止力維持と核軍縮のバランスをとることが不可欠との認識を示したのはもっともである。

 北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の核戦力近代化の脅威を受ける日本にとって、核トマ ホークの廃棄は防衛政策に影響を及ぼす戦略変更であり、トマホーク廃棄に伴う核抑止力の変化をどう補っていくのか具体的な説明を米側に求めていく必要がある。

 核トマホークは冷戦時代の1980年代に配備された精密誘導の巡航ミサイルで、射程 が比較的短い「戦術核」の代表的なものである。冷戦後の91年に当時のブッシュ政権は核軍縮のため、他の戦術核とともに艦船に搭載しない方針を決め、米本土の基地に配備可能な状態で保管されてきた。

 核弾頭を長期間維持することは財政負担も大きく、米政府にとって核トマホーク廃棄は 既定路線といえるが、実際に廃棄されれば、その分、米軍の核抑止力が低下することは間違いない。

 核トマホークの退役は、日本政府の非核三原則に合致しており、米艦船による「核持ち 込み」という事態は、可能性としてもほぼあり得ないことになる。ただ、核の脅威が高まる東アジア情勢を考えた場合、核トマホーク廃棄を単純に歓迎して済ませるわけにはいかず、非核三原則に関する本質的な議論をあらためて迫られていると認識すべきではないか。

 また、米ロによる大型の「戦略核」の削減交渉に並行して出てきた核トマホーク廃棄の 動きは、戦術核の面からの核軍縮を促す契機にもなろう。実際、ベルギーやドイツなど一部の北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、欧州に配備されている米軍の戦術核の撤去を求める考えを示しており、戦術核の存在意義を問い直す議論に弾みがつきそうである。