「激安宿に泊まりたい!」ドヤ街で一泊1,000円代の宿に泊まってみる
2010年02月23日18時20分 / 提供:日刊サイゾー
珍奇なものをこよなく愛するライター・北村ヂンが、気になったことや場所にNGナシで体当たり取材していく【突撃取材野郎!】。第3回は、最近変貌を遂げている山谷の街をぶらり。
<画像はこちらから>
これから春休みシーズンに突入し旅行に出かける人も多いと思うが、ホテルなどに宿泊する料金は一泊どれくらいを想像するだろう。まあ一般的なホテルで一万円前後、安いビジネスホテルでもせいぜい5,000円程度といったところだろうか。ところが世の中には一泊1,000円代、ヘタしたら1,000円以下で泊まれちゃう宿があるのだ。もちろんネットカフェとかじゃないよ。
その手の激安宿が集まるのが、いわゆる"ドヤ街"と呼ばれる地域。東京の「山谷」、横浜の「寿町」、大阪の「あいりん地区」などがその代表格だろう。ま、要は日雇いのおっちゃんばっかいる街だ。
それ故にドヤ街は、宿泊費は安いもののものすごーく治安が悪いイメージがある。現に以前取材で訪れた時は泥酔&フルチンのおっちゃんが歩き回ってたし、先日、田代まさしが寿町に炊き出しに行った時も女性スタッフがケツを触られまくって大変だったとか......。それは、ちょっとやそっと宿泊費が安いくらいじゃあんまり行きたくないな......と思ってたら、どうも最近のドヤ街はそういうイメージを払拭して、外国人バックパッカーなどの旅行者向けの街に変わろうとしているらしい。えーっ、ホントかなぁ......ということで山谷に泊まってきた!
■ドヤ街の代表格・山谷にやって来た
さて、南千住の駅を降りて徒歩数分。あの『あしたのジョー』にも登場した「泪橋」に到着。この周辺が山谷のメインストリートだ。数年前に訪れた時となーんも変わらない、いい感じに寂れた街並み。さすがに真冬なので、フルチンで歩いているおっちゃんはいないものの、路上に座り込んでパック酒をチューチュー吸っているおっちゃん、花札をやってる(もちろんモロに金賭けてる)おっちゃん、薄汚れた鍋とカセットコンロで得体の知れない料理をグツグツ煮込んでるおっちゃんと、実に味わい深い顔をした人々のオンパレード......。
これはこれで、非常に興味深い光景なんだけど、こんなの昔っからの山谷イメージドンピシャじゃないの。どこが変わっているというのだろうか。
街を歩いてみて気づくのは、やはり宿泊費がメチャクチャ安いということ。高くても2,000円代、安いところだと800円なんてのもある。さらにこの辺は飲食費も異常に安かったりするのだ。見かけた中で一番安かったのは150円の「生たまご弁当」。こ、これはッ!
買ってみると、まあ概ね予想通りの内容。パックに入ったご飯に生たまごがズーンと添えられているという......。でもそれにプラスして海苔(サランラップで包まれている)や佃煮、梅干しなどもついていて、150円ということを考えればまあまあアリか。周りのおっちゃんたちに倣って地べたにドッカリ座り込んでかっこめば、気分はすっかり日雇い労働者。こんな生活も悪くないかな......なんて思ったりして。いやいや、こんなことしに来たんじゃないんだ。
■なんとインターネット完備の宿が!?
街は依然として「ザ・ドヤ街」といった雰囲気ビンビンなのだが、よーく観察していくと不自然に英語が併記された看板が多いことに気づく。......コレのことか、変わったのって? 申し訳程度に英語の看板つけたところで外国人旅行者が来るのかいな、とは思うものの、設備面でも「インターネット」とか書いてあって驚かされる。
ちょっと前までネット環境がある宿なんて当然皆無。「カラーテレビがある」か「カラーテレビがない」くらいしか宿を比較する要素がなかった(現にこの辺の宿はやたらと「カラーテレビ完備」という看板を掲げている)ことを思うと、インターネット完備の宿が現れ出したというのはものすごいエポックメイキングなことだ!
......ということでこの宿に泊まってみることに。一歩足を踏み入れると、さすがに殺伐とした雰囲気がビンビン。部屋に通されて「テレビを観る時は絶対にイヤフォンを使って下さいね。ケンカになるから」と言われた時には戦慄すら覚えた。2010年になってもやはり山谷は山谷だ。
さて、それでもせっかくなのでネットを使ってみたいと思うのだが、昭和感漂いまくりの部屋はどこをさがしてもネットの回線が見つからない。棚の上を探ってたら、誰が置いていったんだか分からない靴下を発見。なんじゃこりゃ。
仕方がないのでインターネットの「イ」の字も知らなそうな風貌のフロントのおっちゃんに「ネット使いたいんですけど」と言うと、無言で小さな紙切れをペロっと手渡された。なんぞコレ? と思ったら、そこには無線LANのパスワードらしき文字列が書き殴られている。あ、無線LANなんだ、ここ。予想以上にハイテク。それにしても、こんなに原始的な無線LANの設定資料見たことないけど。
"ドヤ街"と聞くとやはり抵抗があるかもしれないけど、泊まってみた感想としては、確かに路上には浮浪者風のおっちゃん多めなものの、いざ宿に入っちゃうとかなり快適。これで1500円くらいで泊まれるんだから全然オッケーでしょ。
ネットカフェのナイトパックでも1500円くらいは取られることを考えると、自分でノートパソコンを持ち込めばネットやり放題だし、シャワーも浴びれる。漫画はないものの、ドリンクバーはアリ(お茶と水しか出ないけど)、そして何よりも布団でちゃんと寝られるドヤ街の宿はかなりアリ。貧乏旅行の人も、ネットカフェ難民の人も、もっと山谷に来るべき!
ただし、ドヤ街のチェックアウト時間は異常に早いので、そこは注意。朝8時にはドアをガンガン叩かれて起こされるよ。まあ、みんな日雇い労働者だからねぇ......。
(文・イラスト・写真=北村ヂン)
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これから春休みシーズンに突入し旅行に出かける人も多いと思うが、ホテルなどに宿泊する料金は一泊どれくらいを想像するだろう。まあ一般的なホテルで一万円前後、安いビジネスホテルでもせいぜい5,000円程度といったところだろうか。ところが世の中には一泊1,000円代、ヘタしたら1,000円以下で泊まれちゃう宿があるのだ。もちろんネットカフェとかじゃないよ。
その手の激安宿が集まるのが、いわゆる"ドヤ街"と呼ばれる地域。東京の「山谷」、横浜の「寿町」、大阪の「あいりん地区」などがその代表格だろう。ま、要は日雇いのおっちゃんばっかいる街だ。
それ故にドヤ街は、宿泊費は安いもののものすごーく治安が悪いイメージがある。現に以前取材で訪れた時は泥酔&フルチンのおっちゃんが歩き回ってたし、先日、田代まさしが寿町に炊き出しに行った時も女性スタッフがケツを触られまくって大変だったとか......。それは、ちょっとやそっと宿泊費が安いくらいじゃあんまり行きたくないな......と思ってたら、どうも最近のドヤ街はそういうイメージを払拭して、外国人バックパッカーなどの旅行者向けの街に変わろうとしているらしい。えーっ、ホントかなぁ......ということで山谷に泊まってきた!
■ドヤ街の代表格・山谷にやって来た
さて、南千住の駅を降りて徒歩数分。あの『あしたのジョー』にも登場した「泪橋」に到着。この周辺が山谷のメインストリートだ。数年前に訪れた時となーんも変わらない、いい感じに寂れた街並み。さすがに真冬なので、フルチンで歩いているおっちゃんはいないものの、路上に座り込んでパック酒をチューチュー吸っているおっちゃん、花札をやってる(もちろんモロに金賭けてる)おっちゃん、薄汚れた鍋とカセットコンロで得体の知れない料理をグツグツ煮込んでるおっちゃんと、実に味わい深い顔をした人々のオンパレード......。
これはこれで、非常に興味深い光景なんだけど、こんなの昔っからの山谷イメージドンピシャじゃないの。どこが変わっているというのだろうか。
街を歩いてみて気づくのは、やはり宿泊費がメチャクチャ安いということ。高くても2,000円代、安いところだと800円なんてのもある。さらにこの辺は飲食費も異常に安かったりするのだ。見かけた中で一番安かったのは150円の「生たまご弁当」。こ、これはッ!
買ってみると、まあ概ね予想通りの内容。パックに入ったご飯に生たまごがズーンと添えられているという......。でもそれにプラスして海苔(サランラップで包まれている)や佃煮、梅干しなどもついていて、150円ということを考えればまあまあアリか。周りのおっちゃんたちに倣って地べたにドッカリ座り込んでかっこめば、気分はすっかり日雇い労働者。こんな生活も悪くないかな......なんて思ったりして。いやいや、こんなことしに来たんじゃないんだ。
■なんとインターネット完備の宿が!?
街は依然として「ザ・ドヤ街」といった雰囲気ビンビンなのだが、よーく観察していくと不自然に英語が併記された看板が多いことに気づく。......コレのことか、変わったのって? 申し訳程度に英語の看板つけたところで外国人旅行者が来るのかいな、とは思うものの、設備面でも「インターネット」とか書いてあって驚かされる。
ちょっと前までネット環境がある宿なんて当然皆無。「カラーテレビがある」か「カラーテレビがない」くらいしか宿を比較する要素がなかった(現にこの辺の宿はやたらと「カラーテレビ完備」という看板を掲げている)ことを思うと、インターネット完備の宿が現れ出したというのはものすごいエポックメイキングなことだ!
......ということでこの宿に泊まってみることに。一歩足を踏み入れると、さすがに殺伐とした雰囲気がビンビン。部屋に通されて「テレビを観る時は絶対にイヤフォンを使って下さいね。ケンカになるから」と言われた時には戦慄すら覚えた。2010年になってもやはり山谷は山谷だ。
さて、それでもせっかくなのでネットを使ってみたいと思うのだが、昭和感漂いまくりの部屋はどこをさがしてもネットの回線が見つからない。棚の上を探ってたら、誰が置いていったんだか分からない靴下を発見。なんじゃこりゃ。
仕方がないのでインターネットの「イ」の字も知らなそうな風貌のフロントのおっちゃんに「ネット使いたいんですけど」と言うと、無言で小さな紙切れをペロっと手渡された。なんぞコレ? と思ったら、そこには無線LANのパスワードらしき文字列が書き殴られている。あ、無線LANなんだ、ここ。予想以上にハイテク。それにしても、こんなに原始的な無線LANの設定資料見たことないけど。
"ドヤ街"と聞くとやはり抵抗があるかもしれないけど、泊まってみた感想としては、確かに路上には浮浪者風のおっちゃん多めなものの、いざ宿に入っちゃうとかなり快適。これで1500円くらいで泊まれるんだから全然オッケーでしょ。
ネットカフェのナイトパックでも1500円くらいは取られることを考えると、自分でノートパソコンを持ち込めばネットやり放題だし、シャワーも浴びれる。漫画はないものの、ドリンクバーはアリ(お茶と水しか出ないけど)、そして何よりも布団でちゃんと寝られるドヤ街の宿はかなりアリ。貧乏旅行の人も、ネットカフェ難民の人も、もっと山谷に来るべき!
ただし、ドヤ街のチェックアウト時間は異常に早いので、そこは注意。朝8時にはドアをガンガン叩かれて起こされるよ。まあ、みんな日雇い労働者だからねぇ......。
(文・イラスト・写真=北村ヂン)
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