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派遣業 需要の奪い合い 昨年倒産件数 愛知全国2位

脱「製造」やM&A 加速



東海の人材派遣業界でも厳しい経営環境が続いている

 東海の人材派遣業界が苦境に陥っている。新規分野への進出などで収益基盤の強化を急いでいるものの、製造業の不振を背景に業績は低迷し、経営破綻(はたん)も急増中だ。厳しい雇用環境と規制強化の逆風を受け、再編・淘汰(とうた)は避けられそうもない。

(小林雅和)

 帝国データバンクの集計(2009年12月末時点)では、09年の派遣会社の倒産件数は81件と08年(49件)を超え、都道府県別では愛知(11件)が東京(25件)に次ぐ件数となった。

 09年7月には伸宏産商(愛知県美和町)が名古屋地裁で破産手続きの開始決定を受けた。03年設立で、最盛期には自動車部品工場などに100人以上を派遣。自動車業界の活況を追い風に急成長したが、08年秋以降の不況で売上高が急減し、約2億円の負債を抱えて破綻した。陶器関連メーカーから製造ラインの作業を請け負っていた泰希(同県東海市)もピーク時には約11億円の売上高を計上したが、09年8月に破産した。

 こうした中で、豊田自動織機グループのサンスタッフ(同県刈谷市)は「堅調な需要が期待できる」と地方自治体からの受注拡大に注力。製造業向けの派遣の不振を官公需で穴埋めしたい考えだ。

 ヒューマネット(岐阜県各務原市)は自動車から航空機産業への技術者派遣に重点を移す。「製造業」「技術者」の枠を超えて営業職などの即戦力の派遣にも活路を求める構えだ。

 東海最大手テンプスタッフ・ピープル(名古屋市)は09年10月にグループの別会社が東海3県で提供していた事務運営受託サービスを自社に集約した。地域での収益基盤を強化する狙いだ。

 こうした動きは、政府が掲げる「製造業派遣の原則禁止」などを軸とした労働者派遣法の改正が視野にある。東海3県の有効求人倍率が愛知県で0・51倍(09年11月)などと低迷し、雇用環境が改善しない中での法改正は、派遣業界の不振に追い打ちをかけかねない。

 テンプスタッフ・ピープルを傘下に持つテンプホールディングス(東京)は、東海・関東を地盤とする技術者派遣の日本テクシード(名古屋市)を株式公開買い付け(TOB)で子会社化した。企業のニーズに即応する体制作りが狙いだ。「派遣市場」が縮小する中で、企業合併・買収(M&A)も一段と加速しそうだ。

テンプスタッフ・ピープル 日比野三吉彦社長 法改正「就労の場 減る」


日比野三吉彦社長

 東海を拠点とするテンプスタッフ・ピープルの日比野三吉彦(みきひこ)社長(64)に今後の展望を聞いた。

 ――人材派遣業界の経営危機が深刻だ。

 「企業倒産はあらゆる業界で起きているが、東海の製造業が受けた打撃は大きい。製造業向けサービスの比率が高い派遣業界も苦しいことに変わりはない」

 ――「製造業派遣の原則禁止」の評価は。

 「反対だ。就労の場が減る。採用余力が乏しい中小企業にとって人材確保は難しい。(派遣禁止で)企業の事業継続は困難になり、求職者は就労機会を失いかねない」

 「雇用形態の柔軟性が失われれば、企業の国際競争力も低下する。国内での人材確保が困難になれば(製造業などの)海外移転が一段と加速しかねない。政府には雇用のセーフティーネット(安全網)の充実を求めたい」

 ――派遣業界の役割は。

 「労働需給の調整機能を担うことだ。求人側と求職者のニーズが一致すれば雇用創出に貢献できる。(派遣会社と雇用者が)関係法令や規制をしっかり守り、派遣スタッフが安心して働けるような環境を提供していきたい」


2010年1月22日  読売新聞)
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