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海外生活奮闘記:イギリス人泣かせの日本語

「ボンサイ」を売るストール
「ボンサイ」を売るストール

「タイクーン(tycoon)」とか、「リクショー(rickshaw)」という英単語をご存じですか。実は、これらは日本語由来の外来語なのです。では、元の日本語は何でしょう? 「タイクーン(tycoon)」は実業界や政界の大物を意味すると言えば、「タイクン(大君)」という日本語が連想されるのではないでしょうか。「リクショー(rickshaw)」は「人力車」です。「ジンリキシャ」の「ジン」が欠落し、英語風になまって「リクショー」になったようです。ただ、人だけではなく自転車が引く場合も、「リクショー」と呼ばれるようです。

 これらの日本語は、比較的古い時期に英語の中に取り入れられ、発音も、意味も英語風に変えられているので、すっかり英語になじんでいます。イギリス人の間でも、日本語起源の外来語であることはあまり知られていないようです。

 「大君」や「人力車」などの日本語が英語に輸入された当時から時代が下って、日本が国際社会の各方面で活躍するようになると、より多くの日本語がより元の発音に近い状態で英語の中に取り入れられるようになってきました。

「サツマ」と呼ばれる日本のみかん
「サツマ」と呼ばれる日本のみかん

 ここ数年、よく耳にするようになった日本語からの外来語は、「ツナミ(tsunami)」です。以前は、「tidal wave(潮の干満による波)」と呼ばれていましたが、地震によって生じる津波は潮の干満による波ではありません。ですから、地震による高波を意味する日本語の「津波」がそのまま英語として使用されるようになったのではないかと思います。

 ところが、この「ツナミ(tsunami)」、原語の発音と意味を忠実に表しているという点はいいのですが、英語のネイティブスピーカーたちにとってはちょっと厄介な言葉なのです。英語には、日本語の「ツ(tsu)」という音が存在しません。しかも、発音するのがかなり困難な音なのです。

 東南アジアで大きな被害をもたらす津波が頻発し、特に2004年のスマトラ沖大津波のあと、ニュースで報道されるようになって、「ツナミ(tsunami)」は、イギリス人の誰もが知っている言葉となっています。そして、今では比較的スムーズに発音されるようになったようですが、最初のころは、テレビやラジオのニュースキャスターたちが「ツ」につっかえながらニュースを読みあげるのを聞いていると、何とも同情を禁じえない思いがしたものです。

ゲームの掲載されている本や雑誌の中でも人気の高い「スドク」
ゲームの掲載されている本や雑誌の中でも人気の高い「スドク」

 ちなみに、日本の会社「マツダ」や「ミツカン」が、それぞれ、英語では、「Mazda」、「Mizkan」と会社名を表記しているのも(日本国内でもそうなっていますよね)、おそらく、そのような「ツ」に関する英語のネイティブスピーカーへの配慮からなのではないでしょうか。イギリスの路上では、「Mazda」は日本の他の自動車メーカーと並んでよく見かける会社名です。また「Mizkan」の米酢(rice vinegar)も、「Kikkoman」のしょう油(soy sauce)と共に、イギリスの一般のスーパーの棚で見かけるおなじみの会社名となっています。

 ところで、さらにもうひとつ、「ツ」を含んでいてイギリス人泣かせなものに、イギリスのスーパーや八百屋さんの棚に大きな顔をして並んでいる日本の代表的な食べ物があります。「ツナミ」以上に、イギリスの人々の間ではおなじみのその食べ物、九州地方の昔の地方名(国名)で呼ばれています。と言えば、どんな地方名を思いうかべますか?

 思い浮かんだ地名が、「薩摩」だったとすれば、まさに、その通り! そして、「薩摩」と言えばサツマイモといきたいところですが、実はイギリスで「サツマ(satsuma)」と呼ばれる食べ物は、ウンシュウミカンなのです。「シズオカ」とか「エヒメ」、「ワカヤマ」だと日本人には分かりやすいと思うのですが、イギリス人にとっては「サツマ」と言えば、ミカン以外にはありえないのです。南ヨーロッパ産のものがほとんどですが、この日本生まれの「サツマ」、イギリスの冬になくてはならない味覚のひとつになっています。

街のスポーツセンターの壁にかかっている空手教室の宣伝
街のスポーツセンターの壁にかかっている空手教室の宣伝

 その他にも、日本ならではの文化や武道に関する言葉、「スモウ(sumo)」、「ジュウドウ(judo)」、「カラテ(karate)」、「ハイク(haiku)」に、「ボンサイ(bonsai)」、「ゲイシャ(geisha)」などの日本語が英語の中に取り入れられ、よく知られています。

 「スキヤキ(sukiyaki)」は料理としてではなく、歌謡曲「上を向いて歩こう」のタイトルとして知られています。アメリカのコミックが原作となったテレビシリーズや映画「ニンジャ・タートルズ(Ninja Turtles)」で、「ニンジャ(ninja)」もすっかりおなじみです。

 それから、英語では「ke」は「キー」と発音されるので、カラオケは、もっぱら、「カラオキー(karaoke)」と呼ばれて親しまれています。親しまれていると言えば、日本でも人気のゲーム数独は「スドク(sudoku)」と呼ばれ、 日本でよりずっとはやっています。

 イギリスの日常生活の中で、よく耳にしたり目にしたりする日本語起源の外来語はこの他にもまだまだあります。次回も、日本からやってきた外来語をお届けします。

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◇ギブソンみやこさんのプロフィル

京都府与謝郡与謝野町出身。京都教育大学教育学部卒業。30歳の時、実家の町と友好のあったイギリスの南西部ウェールズの町アベリストゥイスを親善訪問し、ウェールズ大学アベリストゥイス校の語学研修コースを受講。当時、ウェールズ大学の学生だった現在の夫と知り合い、1992年に結婚。同年よりイギリス中央部にあるニューカッスルに在住。1992年より2005年までニューカッスル近郊のワシントンにある北東イングランド日本人補習授業校講師。その後、「地球の歩き方」海外特派員ブログ、その他のウェブサイト、雑誌等でイギリスの暮らしぶりを紹介している。

ギブソンさんのブログはこちら http://fromuk.blog101.fc2.com/

2010年2月23日

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