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■憤懣本舗「“能力低ければクビ”ワンマン社長の言い分」 2009/11/02 放送

 月曜日は憤懣本舗。

 今回は、業績はいいのに突如、解雇を言い渡されて、納得できない元社員の憤懣です。

 これに対し、一代で会社を築き上げた社長は「能力が低ければクビは当たり前」と自信満々で答える始末。

 不況によるリストラではない「能力を理由にした解雇」は果たして許されるのでしょうか?




 <社長>
 「著しく能力の低い人は辞めていただく」

 失業率が高止まり、雇用不安から抜け出せない日本。

 買い手市場のなか、会社の業績が好調でも職場から追われる社員がいる。

 <解雇された女性>
 「何をしとるねん。何考えとるねん。しっかりせんか、バカ野郎とか」

 能力の低い社員は退場せよ、という経営者。

古くて新しい「懲罰解雇」をめぐる憤懣です。


 今年8月、5年近く勤めたメーカーを突如、解雇された森田喜子さん(51)。

 森田さんがいた会社は、ウエットティッシュなどの家庭用品を製造販売していて社員およそ300人、年商は90億円にのぼり、国内だけでなく中国にも生産工場を展開しています。

 経理を担当していた森田さんはこの日、請求書の発送や入金チェックといった仕事に追われていたところ、部長から応接室に呼ばれ、こう告げられたと言います。

 <森田喜子さん>
 「部長が『社長が首やと言っとけ!と言っている』と。仕事は次長があとを引き継いですると」

 原因は一通の手紙でした。

 退職した社員が森田さんたち数人を名指しして「入金の書類を改ざんした」と社長に告げていたのです。

 400社にのぼる取引先からの入金を、たった一人でチェックしていた森田さんは事実無根と否定します。

 <森田喜子さん>
 「入金の未回収が私の責任ということですね。倒産するまでにもうちょっと早くわからんかったかあ、とかね。ただ、それが私サイドでの不手際なのか、営業サイドなのかということがわからないんですけど」

 森田さんは会社から解雇通知書ももらえず、法律が定める給料1か分の解雇予告手当ても支給されなかったため、思い悩んだ末、労働基準監督署へ申し立てました。

 <監督官>
 「8月10日、即日解雇ということでいいんですね」
 <森田さん>
 「そうですね。解雇証明書を必ず欲しいと何度も言っているんですが、全然。どうして解雇というのがないんです」

 日本では、企業の経営者が従業員をリストラ、つまり「整理解雇」しようとする場合には「役員報酬を削減する」「希望退職を募る」など具体的で厳しい条件が課されます。

 しかし、単に一人の社員が解雇される場合は、「合理的理由が不可欠」といった曖昧な表現になっているため、労基署といえども具体的な解雇理由までは企業側に問えないのです。


 森田さんと同じ会社で働いていた中国人のこの女性も9月に解雇されました。

 <中国人女性(33)>
 「何をしてるんや、オマエ。はっきりせんかっ・・て」

 通訳を引き受けた中国企業との商談がうまくいかず、社長から「謝れ」と言われたのがきっかけだったと言います。

 <中国人女性>
 「謝ってないから、もうクビということですって。私はあの会社を辞めさせられた理由は謝ってないからいらないって。ものすごく私ショックで」

 この女性の場合、解雇通知書は受け取りましたが、その理由については、「通訳として不適任の為」と書かれてあったのです。

 <中国人女性>
 「通訳の仕事に不適任と上司から言われたことなく、むしろ日本語も上手だし、能力もある。だけど社長はああいう人だから。日本の企業はそんなもんですよって」


 「この社長に解雇された人は他にもいる」

 そんな証言をもとに憤懣取材班は、香川県にある四国工場へと向かいました。

 業績好調の工場は、工業団地の中でもひときわ目立つ存在です。

 取材に対し、複数の従業員が「賃金面の待遇は他の会社よりいい」と話しました。

 しかし、20代の1人が匿名を条件に内部の実態をこう証言しました。

 <20代の従業員>
 「辞めさせられる方向にもっていくことはある。それは賢いと思う。使えん人間おいておってもしゃーない。会社的にも損やと思う」

 不況でも注文が多く、24時間フル稼働という工場。

 ここで解雇された人に直接話は聞けませんでしたが、どうやら社員の入れ替えが頻繁に行われているようです。


 労働基準監督署に申し立てを行った森田さん。

 会社側の対応で何よりも許せないのは退職金の扱いでした。 

 <森田喜子さん>
 「3年以上働いた人には払う規定があるが、全然守られていない。」
 (Q退職金についてどんな説明が?)
 「いえいえ、何も。こちらが要求しただけですけど、退職金は出ませんと、ちょっと余りにもひどい」

 会社側はなぜ、退職金を払わないのか?

 森田さんの申し立てを受けた労基署が社長への直接指導に乗り出したものの、解雇から2か月経っても退職金は支払われませんでした。

 森田さんの解雇について理由を聞くべく取材班は社長を訪ねました。

 すると、返ってきたのは意外な答えでした。

 <社長>
 「私は直接、クビとかいう話は1回もしてないですよ」

 解雇ではない?

 <社長>
 「(彼女に)間違いがあることは事実。何回も。この文書がそれを知らせている。読んでもいいですよ」

 森田さんの仕事ぶりに問題があり、勝手に辞めたと主張する社長。

 しかし、更に質問したところ…。

 (Q.懲戒解雇なんですか、自主退職なんですか?)
 <社長>
 「どっちでもとっていい。工場でもそうなんです。よくケガしたり間違えたりする人は辞めてもらいますよ。営業でも前年対比をよう超さない、2年続いたら辞めてもらう場合がある。まじめでもね。著しく能力落ちた場合、『辞めていただきますよ』と全員に言ってある。現場の一人に至るまで」
 (Q著しくというのは誰が判断するのか?)
 <社長>
 「私がします」

 社長が手にしているのは就業規則。

 確かに、こういう条文があります。

 第56条2.「解雇」
 「従業員の就業状況が著しく不良で就業に適しないと認められる 場合」

 
 解雇は正当という社長に9月に辞めさせられた中国人女性のことをたずねてみました。

 <社長>
 「誰ですか、そんないらんこと言うのは。ないですよ。9月やったら私覚えてます。辞めさせたら」
 (Q.解雇通知書を出してないですか?)
 <社長>
 「ない。言い切っていいです」
 (Q.通訳の仕事していた人ですけど)
 <社長>
 「ああ・・わかりました。それは通訳で雇ったんです。中国人の子をね。全然通訳ならんのですよ。本人も十分悪いと思ってますよ」

 働く側に全ての責めを負わせるこのような解雇は正当と言えるのか、労働問題に詳しい法律家はこう語ります。

 <松丸正弁護士>
 「勤務態度が悪いということで懲戒の対象にする、これ自体許されないです。何が不良かどうか経営者自身が勝手に決めることは出来ません。自分が雇った労働者の責任に全てを押しつけるというのはこれこそ勝手きままですね」

 労基署から再三、指導されたこともあって先月中旬、森田さんにようやく退職金と解雇予告手当てあわせて60万円が振り込まれました。

 <社長>
 「法律違反ないですよ。雇った以上、社長が雇用守ってやらなアカンなんて何もないですよ」

 <森田喜子さん>
 「誰でも首にできるという感覚でしたので。やはり生活がありますので営業の人も、事務の人にしても、工場の人たちにしても、そういうところ会社としての責任をはっきり把握して欲しい」

 森田さんは今後、労働審判を起こして解雇の無効を求めることにしています。




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