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■憤懣本舗「黒字の影で…元社員らの叫び」 2010/02/22 放送

 月曜日は憤懣本舗。

 不況の中でも業績を伸ばす元気な会社。

 しかしその裏には、退職を余儀なくされた社員たちの悲痛な叫びがありました。

 去年の秋、憤懣本舗で取り上げたことをきっかけに元社員らが声をあげました。

 以前は「能力がなければ辞めてもらう」と言い放っていた社長、今回はなんと答えるのでしょうか。




 この不況下にあっても正社員を大量に採用し続ける大阪のある企業。

 会社を急成長させた創業者の社長は・・

 <社長>
 「著しく能力の低い人は辞めていただく」

 「能力の低い社員は退場せよ」 こう持論を述べる経営者の一方で…

 <元社員>
 「10人、20人、30人、100人ぐらいがボッと辞めて」
 「逆らったらそれで終わりですね。家畜ぐらいの感じですね」

 業績好調の裏側には元社員たちの憤懣がたまっていたのです。

 まずは去年11月に放送した憤懣本舗から。

 問題の会社で不当に解雇されたと訴えていた森田喜子さん(51)。

 <森田喜子さん>
 「『社長がクビやと言っとけ!と言っている』と」

 森田さんが、突然、社長から経理上の責任を問われて解雇されたのは去年8月。

 彼女にとっては理不尽な理由、しかも懲罰的な意味からか退職金もなしでした。

 <淀川労働基準監督署監督官>
 「8月10日、即日解雇ということでいいんですね」
 <森田さん>
 「解雇証明書を必ず欲しいと何回も言っているのに、全然」

 気に入らない社員がいるからといって、経営者の勝手で辞めさせることは出来ません。

 法律上、合理的で客観的な理由が不可欠です。

 森田さんの解雇について当時、インタビューに答えた社長は・・

 (Q.懲戒解雇なんですか、自主退職なんですか?)
 <社長>
 「どっちでもとっていい。工場でもそうなんです。よくケガしたり間違えたりする人は辞めてもらいますよ。だから、著しく能力落ちた場合、『辞めていただきますよ』と全員に言ってある。現場の一人に至るまで」
 (Q.著しくというのは誰が判断するのか?)
 <社長>
 「私がします」

 この会社は社員240人、ウエットティッシュなどの家庭用品を製造販売していて、国内外に多くの拠点をもち年商110億円を目指す「黒字」企業です。

 <社長>
 「雇った以上、どんなことしてでも雇用守ってやらなアカンなんて何もないですよ」

 その後、労基署の指導もあって森田さんには退職金が支払われました。

 しかし、これで終わりではなかったのです。


 11月の放送後、香川県に住む男性から憤懣本舗にメールが届きました。

 「僕もあの会社に勤務し、解雇に近い状態で辞めさせられました。仕事が出来る人はほとんど辞めてます。辞めさせているんでしょうが…」(メールの内容)

 同じ会社で働いていた男性の訴え。

 憤懣取材班、さっそく現地に向かいました。

 取材に応じたのは四国の工場の生産ラインで働いていた3人の男性でした。

 一番年上のAさん(45)は去年11月末に退職しました。

 <Aさん>
 「このままだったら過労死するって」

 Aさんは6年前、地元のハローワークの求人票をみて、この会社に就職。

 3年後にはウエットティッシュの生産ラインの班長に抜擢されますが、身体に不調をきたし去年5月、医師の診断書を会社に提出しました。

 
 「職業性接触皮膚炎・ウエットティッシュに含まれる薬品、これら化学物質に暴露されない環境が望ましい」(Aさんの診断書)

 全身の皮膚がただれ、夜も熟睡できなくなったというAさん。

 別の部署に替えてほしいと申し出ましたが、工場長からの返事はNO。

 その上「納品数が狂っては困る」と叱責されたといいます。

 そして・・・

 体調不良で意識が朦朧とするなか、紙詰まりを起こした機械で指先を切断しました。

 それでも…

 <Aさん>
 「次の日から包帯まいて仕事はしていた。現場に立っていた。数字を残すためには僕が出ていかないかんと思って、そうじゃないと数字がはけないですから、また怒られると」

 さらに半年近く、配置転換の希望を伝えても無視され続けました。

 <Aさん>
 「体がボロボロになってるし、サービス残業を含めると200時間近い残業を2年近くこなしているわけですし、精神状態もう異常に追い詰められてましたからね。本当に使い捨てみたいな状態、ありきたりな言葉ですけどね」

 限界まで働いた会社でしたが、30万円はあるはずの退職金は一銭も支払われませんでした。

 もう一人のBさんは・・

 <班長だったBさん(34)>
 「39度5分の熱があっても休めないような。3〜4か月、(自分は)胃も壊しまして・・・周りにはパワハラ的なで、うつ病みたいになりかけた。もうなっていた人も何人かいるし」

 追い詰められて辞めざるをえなかった3人は、直接「クビ」とは言われていないため、解雇ではなくて希望退職という扱いになります。

 この会社の就業規則には退職金規程がありますが、3人とも支払われていません。

 そう言えば去年秋の取材で、社長はこう話していました。

 <社長>
 「退職金というのはね。会社が赤字だったら払えないでしょう。払いたくても」
 <記者>
 「業績いいですよね。こちらは」
 <社長>
 「まあ赤字ではないけどね。赤字ではない」

 今年に入り一番若いCさん(27)が次の仕事を求めてハローワークを訪ねたところ、この会社が正社員を大量募集しているのを知り愕然とします。

 求人票には「退職金制度あり」という労働条件。

 応募者が殺到したそうです。

 4月から香川県内のこの場所で新しい工場が稼働するため、たくさんの人を募集しているのです。

 <地元の人>
 「チラシがきとった。募集しとった人員募集。だいぶ雇うようだよ」
 「このへんおじいちゃん、おばあちゃんばっかりなんで賑やかになると思う」


 実際の労働条件とは違う求人票の内容は職業安定法違反と言われても仕方ありません。

 罰則もあるはずですが・・

 <大阪労働局職業安定課 廣瀬英美職業紹介係長>
 「罰則規定というのは職業安定法違反で立件された上で罰則となるので、たとえば内容が違ったということで、それが直接罰則に結びつくことではない」

 現状では労働者が個別に訴えるしかありません。

 Aさんら3人も退職金と交通費あわせて120万円を請求する申し立て書を監督署に提出、監督署が指導に動きだしました。

 2月15日、Aさん、Cさんに退職金が入金される。(Bさんは3年未満で該当せず)

 労基署に訴えないと退職金を払おうとしない姿勢。

 憤懣取材班は再び、社長に取材を申し込みましたが、今度は拒否されました。

 対応した総務課長は「労基署から調査や指導を受けたことはない」と否定したうえで、こう述べました。

 (やりとり再現)

 <総務課長>
 「うちは(社員に)きっちり対応していますので」
 (Q.法令順守されているんですか?)
 <総務課長>
 「対応してます。帰って下さい。二度と来ないでください」

 工事が進む新工場。

 この事業には香川県の企業誘致の助成金1億円以上が投入される予定で、採用した社員一人につき50万円以上の補助金も県から出る見通しです。

 元社員は複雑な心境です。

 <Aさん>
 「僕が辞めたときの状態のままでいけば9割方また辞めていくでしょうね。いくら雇ってもね、ザルのようなもんですから。不幸な労働者が増えるばっかりなんで」

 100人近く採用された新しい社員は来月から研修が始まるそうです。

 「今度こそ社員を使い捨てせず、就業規則を守ってくださいよ、社長!」

 そんな声が辞めていった元社員の間であがっています。




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