<さんだあず左の就職塾 山田和史塾長>
「カメが寝てどうすんだよ。ウサギがピョンピョン走ってんのに何故カメが寝てんだよ。自覚が足りないって」
小さな教室に漂うただならぬ緊張感。
ここは京都にある大学生のための就職塾です。
<学生>
「御社がタイのエネルギー開発を通じて豊かな国づくりに貢献していることを知りました」
「御社はラグジュアリーブランドの売上高世界一です。私はその理由は接客にあると考えています」
実践的な面接の練習。
31歳の山田和史塾長が学生に容赦なく厳しい言葉を浴びせます。
<山田塾長>
「『商社ってこんな仕事でしょ』働いたことないくせにえらそうに語らない。自己PRにしろ、志望動機にしろ自己紹介です」
<山田塾長>
「『なんでグラホ(グランドホステス)?なんでCA(客室乗務員)?』って言われたら?」
<学生>
「・・・・・・・」
<山田塾長>
「もどかしい気持ちがあるでしょ、自分の気持ちを言葉に出来なくて。でもそれを理解してくれない僕が悪いと思ったら負けですよ」
自分をどう表現していいか分らない学生たちの駆け込み寺として2年前に出来て以来、すでに全国の300人もの学生が塾の門を叩き、大半は希望した企業に就職したといいます。
<関西学院大学3年生>
「びびりながら受けてるんですけど、やってる内容はこんなことあったんやと」
<東京外国語大学3年生>
「どうしてもその企業にって夢をかなえたかったんで、京都でもどこでも行ってやろうと思ってきました」
実は山田塾長、かつてはNHKの職員でした。
難関を突破して就いたクリエィティブな仕事。
それなのにわずか5年で退職しました。
その理由が・・・
<山田塾長・2006年)
「はい、どうも〜 。Mー1準決勝に出るためにNHKを辞めてしまった、さんだあずのさんだあず左です、よろしくお願いしまあ〜す」
芸人になりたい。
その道はいまも諦めたわけではありませんが、あるきっかけで塾を始めることにしました。
<山田塾長>
「(母校・立命館大が)就活指導が熱心で、そこにOBとして行ってアドバイスしてるだけだったんですけど、やってても僕の前だけ順番待ちができて、自分はできるなと思ったのがきっかけ」
<山田塾長>
「とにかく書こう、悩んでる暇があったら書きましょう」
まず最初にやるのが徹底した自己分析。
自分のことをとにかく書かせる。
壁に貼られた青・黄・赤の3色の紙にはそれぞれ意味がありました。
自分は何をしてきて、そこから何を学んだ人間なのか?
こうして書かせることで自分のいいところと足りないところを理解させます。
<山田塾長>
「水色は(大学時代に)こういうことをやった、というおおまかなくくり。この水色の中で具体的なエピソード、狭いエピソードが黄色。自分はこういう力がありますとか、こういうことが言えるというのがピンクという風に分けています」
<塾生 小堀慶子さん>
「えっほえっほ」
塾生のひとり、小堀慶子さんは自分に無いものを求めて新しいアルバイトを始めました。
いま、京都で観光用の人力車を引いています。
<小堀慶子さん>
「『ギャップのあることをしろ』って言われるんですね。私は体育会系の部活に入ったことなくって、体力を使う何かをやろうと思った時に人力車だなと」
テクニックとして面接の仕方を身につけるのではなく、実践からいかに人間を磨くのか、これが塾の基本方針です。
<山田学長>
「大学生活をもっと楽しんで欲しいかなと。なんとなくバイトして、なんとなくサークルに入って終わってしまっている。そういう人たちを鍛えたいなあと」
新卒の大学生の求人倍率は、超氷河期といわれた2000年からみると上向き傾向。
去年は1.62倍、つまり数字上は一人一か所以上就職口があったことになります。
しかし、実際に内定をとれた学生は73パーセント。かなり厳しい数字でした。
そんな中、山田塾長はこの日、学生を引き連れて東京までやってきました。
塾では、OB訪問の場までセッティングします。
<塾生>
「個人的に(連絡を)取るのが無理なこともあるので、こういう機会を与えてもらうのはありがたい」
この日話をしてくれるのは、就職希望ランキングトップクラスの総合商社の若手社員。
<学生の質問>
「個人的に思われている、この国はもっと売れるというのは?」
<社員>
「中国もそうだよね」
憧れの先輩に目を輝かせる学生たち。
ようやく就職活動にも本腰が入り始めました。
塾の名物、面接1グランプリ。
一流企業に内定・就職したOB・OGを面接官にして実際に採点します。
<男子学生>
「私は分析力だけは誰にも負けない自信があります」
<女子学生>
「私 デンマーク語専攻してまして、デンマークに留学行ったことあるんです」
およそ50人の学生が参加し、腕を競います。
<山田塾長>
「本当に最近の学生、コミュニケーション能力ないんで、面接はそういう意味で重視されていますから、面接対策が一番と思っています」
<学生>
「宜しくお願いします」
上位5人が決勝戦に進出。
全員が見守るシビアな状況の中、第一希望の企業の面接という設定です。
<面接官>
「きょうの国際面の中で気になった記事を教えてください」
<新聞社希望の女子学生>
「エーっと、・・・・」
<面接官>
「本当に弊社が第1志望なんですか?」
<女子学生>
`「はい」
<面接官>
「読んでないの?」
(女子学生>
「そうですね・・・」
<面接官>
「きょうスーツ着用じゃなかったら、どんな服装で来てました?」
<飲料メーカー希望の男子学生>
「やはりジャケットで来ていたと思います」
<面接官>
「どうして?」
<男子学生>
「社会人の方がたくさんおられますので、その中でラフな格好というのは避けるべきだと思いますので、少しでもフォーマルな格好するべきではないかなということでジャケットを着ます」
あえて意地の悪い質問をぶつけるのは、何を聞かれても動じず論理的に答えられるようになるため。
こうした実践を経て、学生は力をつけていきます。
<優勝した学生>
「本番の面接で失敗するよりは、ここでケチョンケチョンにされて4月迎えることができるので貴重な経験だと思います」
<山田塾長>
「不景気のせいにせず就職活動を続ければ、例え納得出来る会社に就職できなくてもいいところに転職できると思うので。今、景気がいい会社も10年後も景気がいいか分からないですからね。まず今、素敵な人間になることが大事」
「小手先のテクニックではなく真剣に生きた証をぶつけよ」
若き塾長の言葉が、いまどきの大学生を目覚めさせているようです。
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