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知的障害の娘もつ両親訴え、県内に動き

2010年02月26日

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知的障害児が普通高校に進めるよう、県教委の職員(奥)に要望する両親や支援者=県庁

 入試の合格点に満たない知的障害児を、募集定員に余裕のある普通高校で受け入れるべきか否か――。県内でこんな問題が持ち上がっている。両親は「本人の学ぶ意欲を尊重して入学させて」と訴えるが、「特別支援学校で学んだ方が子どものためになる場合もある」と見る識者もいる。(吉野慶祐)

 桜川市の女性(17)にはダウン症による知的障害がある。就学時に特別支援学校を勧められたが、両親は「保育所の同い年の友達と一緒に学ばせたい」と地元の小中学校に進ませ、卒業した。

 ある県立高校の入試を一昨年から2次募集も含め計4回受けた。すべて受験者数が募集定員に満たないにもかかわらず不合格だった。同校は「総合的に判断した」と説明。両親も「点数が足りなかったと思う」と認める。

 「でも」と両親は訴える。「本人が怠けて点数が取れないわけじゃないのに、一律に点数で落とすのはどうか。中学では卓球部をやり通し、頑張る力もある。定員が余っているなら入れてほしい」

 特別支援学校の高等部に進む選択肢もあるが、「分けられた環境で学ぶと意思疎通の力が育ちにくい。健常な他の生徒にとっても、娘が身近にいた方が障害への理解も深まる」と普通高校にこだわる。

 いま、週に何度か習い事に出かける。両親は「同世代の日常と同じ雰囲気を味わわせてやりたい」と、高校生が集まるファミレスに連れ出す。来月、3年目の入試に臨む。

 両親や支援者の要望を受け、県教委は今春の入試で、この女性に特別措置を講じる。記述式問題を排し、難易度が変わらない範囲で全問を選択式の問題に変える。1月末、県教委の報告を受けた支援者からは「大きな進歩だ」と評価する声が上がった。

 ただ、県教委はこの対応を大っぴらにしたくないのが本音。特別措置は入試の実施規則で認められており、他県でも同様の例はあるが、他の受験者から「不公平だ」との批判を受けかねないためだ。

 また、数年前からは、定員内の受験者を可能な限り受け入れるよう求める通知を各校長に出している。だが、県教委にできるのはここまでで「合否を決めるのは最終的には校長の判断」という。

 「障害児を普通学校へ・全国連絡会」によると、障害児の普通高校への受け入れ姿勢は県によって温度差がある。東京や神奈川、大阪では、定員に余裕があるのに不合格になる例は少ない。埼玉や千葉もよほど重度でない限り、受け入れてくれるという。

 もちろん、学校側の負担を軽くする必要も出てくる。東京や神奈川では、介助者や支援員を雇って障害児の手助けをしているという。

 戦後、国はあらゆる障害に応じた教育ができる環境を整えてきた。「一方、世間の懐は浅くなり、軽度の障害でも特別支援学校に行かせようという圧力が強まっている」と元中学教諭で連絡会世話人の北村小夜さんは指摘する。

 ただ、茂木俊彦・桜美林大教授(障害児教育)によると、普通高校に進んだ知的障害児が単位を取れず、在籍可能年数を超えて退学した例もある。茂木教授は「特別支援学校で学んだ方が力のつく子もいる。中学段階での基礎的学力や、入学後に学校側の支援をどれくらい受けられるかを勘案し、進学を判断すべきだ」と話す。

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