「非正社員の待遇改善をどう進めるか」
▽今や雇用者の3人に1人がパートや派遣社員という中、連合は今年の春闘で非正規労働者の待遇改善を目標に掲げました
▽多様な働き方というメリットは活かしながら、正社員との「均等な待遇」を実現するため労使が知恵を絞るべきです
▽こうした非正規の人たちの大半が労働組合員ではないだけに、組合がその思いをしっかり自らのものとしてくみ取れるかも課題です
1月26日の連合の古賀会長と日本経団連の御手洗会長の会談、ニュースの世界では例年この労使トップ会談をもって「今年の春闘がスタート」と報じます。厳しい雇用情勢の中、連合は今年ベアの統一要求は見送り、定期昇給の確保に的を絞りました。一方では非正規を含めた全ての労働者の待遇改善を柱の一つに掲げています。非正規社員の問題を正面から取り上げざるをえなくなった、その背景が下の図です。
人口1億2700万人の日本が127人のどうぶつ村だったら、というのがこの図です。正社員のカエルさん(これは動物じゃないぞなんて堅いことは言わないで下さい)が34人、それに対しパートとアルバイトを合わせたウサギさんが12人、派遣社員と契約社員、その他を合わせたブタさん6人です。(総務省の労働力調査2009年7~9月期平均のデータです。もちろんざっくり四捨五入しています)今や雇用者全体の3分の1が非正規労働者というのは、このことを指していて、詳しく言うと直近では34.1%です。
パートや派遣といった非正規雇用の人たちが現実に職場の同僚として増え続ける中で、労働組合も対応が必要になってきたわけですが、待遇改善を実際どう進めるかは難題です。正社員と非正規の人たちの賃金には大きな格差があります。そこで連合が唱えているのが「均等な待遇」ということです。例えば正社員は月給制、パート社員は時給制と違いがあっても、正社員の月給を労働時間で割って時給に換算し、それと同水準の時給をパートの人にも適用すれば「均等」と言えます。さらに休暇も正社員並に付与するとか、昇級昇格の仕組みを設けるとか、希望すれば正社員になれる道も用意するとか、様々な面で「均等」を考えていく必要があります。大事なのは、非正規雇用は悪いと否定するのではなく、多様な働き方ができるというメリットは活かしながら、労働条件を底上げしていくこと。そのために労使双方が知恵を絞ってほしいと思います。
もう一度この図に注目してください。真ん中あたり、線で囲ってみました。これは何でしょう。実はこの10人が労働組合の組合員なのです。全体からみればほんの一部。雇用者に占める組織率では18.5%に過ぎません。しかもご覧のようにほとんどが正社員で、パートの人の加入は0.7人、実数でいうと70万人にとどまっているのです。(厚生労働省の労働組合基礎調査から)ですから、連合は確かに春闘方針に非正規の待遇改善を掲げたけれども、それは実は組合員でない人たちを助けよう、という呼びかけなのです。これに本当に個々の組合が本気で取り組めるのでしょうか。ビジョンeでは今回、契約社員の正社員化というのを成し遂げた「広島電鉄」の例を紹介しましたが、実はここでは契約社員も組合員だった、という事情があって本気の闘いができたのでした。
ここが難しいところです。非正規労働者の問題というのは、労働組合にとって「組織外の人たちの思い」をどれだけ自らのものとしてくみ取って闘えるのかという、想像力とか度量の大きさとかが問われる問題なのです。
さて最後に、手書きスケッチブックの補足説明を少々。雇用者以外では自営業のパンダさんが8人、完全失業者のライオンさんが3.6人います。ということは360万人ですから深刻な問題なのは間違いありません。「ライオンは寝ている」歌の文句ではありませんが、今は一休みでも力を蓄えてまた吼えるはず。なのでシールはライオンにしました。(2月4日記)