第77回「オタク恋愛コンサルタントは日本を救えるか」(2010/02/26)
いきなり「好きです」はNG
実は杉山さんはオタクではない。だからアニメのことも詳しくは分からないし、さほど興味もないのだそうだ。しかし、だからこそメイド時代に冷静にオタクたちを観察し、彼らを救い出す方策を考えるようになったのだ。
杉山さんによると、オタクは誠実で、優しくて、いい人が多いのだが、恋愛のやり方をわきまえていないので、女性と付き合うことができないのだという。オタクの問題点は、まずは清潔にできていないこと。爪が伸びていたり、においがするほど体臭のする人もいるそうだ。「お風呂に入る時間があったら、ゲームをしたいと思うのでは」と杉山さんは推測する。そしてオタクの2番目の問題点は、消極的で自分をアピールできないことだそうだ。確かに思いだけ高めて、じっと陰から見つめられていたら、女性はたまったものではない。そして第3の問題点は、逆のパターンで、いきなり「好きです」と言ってしまうことだそうだ。恋愛は微妙な距離感の駆け引きが必要なゲームだから、TPOをわきまえない行動は、何の成果も生まないのだ。
こうした行動を直すだけで、オタクたちに恋愛のチャンスが訪れることは間違いないのだが、オタク同士で固まってしまうから、なかなか自分たちの欠点に気付くこともない。だから、そこからの脱却のきっかけを与えようと杉山さんは考えているのだ。
もちろん、オタクを恋愛できるようにすることは簡単なことではない。第一に、早い段階で救わないと、人間の女性への興味を失ってしまうことだ。二次元にしか反応しなくなってしまったオタクは、なかなか救出が難しいのだ。杉山さんも「重症患者は難しいですね」と話している。第二に、仮にオタクにある程度の恋愛技術を与えたとしても、出会いの場があるのかという問題がある。もちろん普通の人なら、場を自分で作ることはさほど難しいことではないのだが、ことオタクに関しては、そう簡単ではないのだ。第三に、すでに女性の間に浸透しているオタクアレルギーを取り除かなければならないということだ。そうしないとオタクが門前払いされてしまうからだ。
私は、杉山さんがやろうとしていることは、とても重要なことだと思うし、本来なら政府が積極支援すべき事業だと思う。ただ、正直言って、これがビジネスとして成功するのかどうか分からないし、そもそもオタクを恋愛できるようにするという取り組み自体が、どこまで成功するのかも分からないのだ。
ただ、可能性はあると思う。もし杉山さんの努力で、今後オタクが恋愛し、結婚できるようになれば、彼女は日本社会の救いの女神になるだろう。