きょうの社説 2010年2月26日

◎トヨタ公聴会 政府にも危機感が足りない
 トヨタ自動車のリコール問題で、豊田章男同社社長が出席した米議会の公聴会は、予想 通り秋の中間選挙を意識した米議員の激しい追及にさらされた。突然、トヨタ車が急加速したという苦情が過去10年間で千件以上あって、34人が急加速の事故で死亡したのが事実なら、極めて深刻な事態であり、同社の対応の遅れは批判されて当然だろう。

 だが、他のメーカーにも急加速による事故の報告があり、少なくとも11人の死者が出 ている。欠陥が疑われている電子制御システムは、トヨタ側がいくら調べても問題が見つからず、ここまで一方的にたたかれる理由がいま一つ釈然としない。そもそも政府調達や政府のIT政策などを調査する委員会が、なぜ民間の自動車メーカーを調査対象にするのか。有権者に向けの「政治ショー」として、トヨタたたきが絵になると思われたとしても不思議はない。

 気になるのは政府・与党の危機感の乏しさである。鳩山由紀夫首相は、豊田社長の証言 について、「これですべて済んだということではない」と、どこか突き放した態度だった。全トヨタ労連出身の直嶋正行経産相にいたっては、米国世論の信頼回復には「もう少し時間がかかる」と他人事のような口ぶりである。鳩山首相は、米普天間基地の移設問題で、米国に不信感を抱かせたツケが過剰なトヨタたたきに影響しているとはつゆほども思わないのだろうか。

 トヨタは「メード・イン・ジャパン」の品質の高さの象徴であり、関連会社を含めると 、日本の産業に占める比重は極めて高い。政府が米国の思惑を読み取り、トヨタに早期の対応を促していたら、事態は違っていたのではないか。

 米国では「米政府によるGMとクライスラーへの出資がトヨタたたきの一因」という見 方がある。かつて、クリントン大統領時代の米民主党は、経済摩擦問題で日本を窮地に追い込んだ。オバマ政権誕生で懸念された保護主義の胎動が問題の背後に見え隠れしている。政府・与党はトヨタの側に立ち、米政府に憂慮の念を伝えるなど、過剰なバッシングにブレーキをかける役回りを求めたい。

◎4県企業の企画展 広域連携の実を挙げたい
 北陸3県と新潟県の伝統的な製造業や食品関係などの中小企業が「越(こし)の国倶楽 部」と命名した連携組織を作り、関連商品を共同で売り込む企画展を東京で開いた。ものづくり企業の広域連携で、新たな商品開発や市場開拓をめざそうと、中小企業基盤整備機構北陸支部の支援を受けて組織化したものだが、一昨年以来の世界的な不況は、大企業の下請けに甘んじず、中小企業同士がそれぞれの強みを持ち寄って新たな生き残りの道をつくる努力の重要性をあらためて示したといえる。行政も支援に工夫を重ね、企業連携の実を挙げてほしい。

 このところ医商工や農商工連携が強く叫ばれているが、異業種交流による新ビジネス創 造は古くて新しい課題である。政府は中小企業新事業活動促進法を2005年に施行し、企業連携による新分野開拓支援を強化している。北陸でも同法の認定を受けた事業が行われているが、最近は地域を超えた連携の動きも広がっている。

 例えば、横浜市内の企業をバックアップする横浜企業経営支援財団は、首都圏だけでな く全国各地の大学を取り込んだ産学広域連携推進会議を今月発足させ、横浜の企業と各大学、大学のある地域企業との連携に力を入れ始めた。北陸からは金大が、この広域ネットワークに参加している。

 こうした動きは、企業連携に対する公的支援の競争の強まりを示すものともいえ、自治 体のバックアップ策も一層求められる。

 金沢市は年度内に「ものづくり戦略」を策定する予定であり、先ごろ報告された戦略骨 子では、連携支援策の一つとして、各企業の得意技をデータベース化することが盛り込まれた。製造関係の企業が有している技術のデータベースは、連携相手や協力企業などを探すのに役立つ。行政区域にとらわれず、広範な企業データを集めるのが望ましい。

 企業連携の実現には、有能な仲介役も重要であり、戦略骨子では金沢市ものづくり会館 にコーディネーターを配置することにもなっている。これらの施策を有効に機能させてもらいたい。