県議会が与野党全会一致で、米軍普天間飛行場の「県内移設に反対し、国外・県外への移設を求める意見書」を可決した。県議会の全会派が意思統一し「県内移設反対」を打ち出すのは初めてだ。県内に新基地建設を認めない歴史的決議と言える。
共産党は基地被害を県外に押し付けるべきではない、とし「県内移設反対」にとどめるよう主張していたが、最終的に「国外・県外への移設」の文言に同意した。一部会派が不同意では決議の重みがそがれる。「県内反対、国外・県外移設」に超党派で結束した意義とインパクトは大きい。
■県内移設は非現実的に
日米政府は県民を代表する県議会決議を重く受け止め、国外・県外移設を真剣に検討すべきだ。
普天間移設問題で保守の稲嶺恵一前知事、仲井真弘多知事はともに名護市辺野古の海上案、新たなV字形案を容認してきた。「県外がベスト」としながら、国外・県外移設が困難視され、普天間飛行場の危険性除去を火急の課題とする苦渋の選択だった。
しかし、県民世論調査は一貫して「県内移設反対」が多数を占めている。県議会も2008年に野党の賛成多数で「辺野古への新基地建設反対」を決議。昨年の衆院選挙では県内4選挙区すべてで「現行計画反対」の候補者が当選した。1月の名護市長選挙でも移設容認の前職を破り、移設反対の新市長が誕生した。
辺野古移設を推進した自公政権から新政権に代わり、基地問題見直しの期待が高まる中で、県議会全会一致の「国外・県外への移設」意見書が実現したのである。
県民意思がこれほど明確に示された以上、県内移設は現実的に困難だ。県民意思を踏みにじり県内移設が強行されれば、不測の事態を招きかねない。そのことを日米政府は直視する必要がある。
仲井真知事も県議会決議を正面から受け止め「県外がベスト」の原点に立ち戻り、より明確な主張を日米政府に提示してほしい。
鳩山政権は県民の期待に反し、「国外・県外移設」への転換を打ち出せず迷走している。政府内には「キャンプシュワブ陸上案」も浮上しているが、地元辺野古区が猛反発し陸上案反対を決議した。
一方、名護市は、米軍再編交付金を充てる新規事業を10年度予算に盛り込まない方針だ。基地建設反対を訴え当選した稲嶺進市長の方針と、建設受け入れを前提とする再編交付金が整合しないとの判断による。「新基地建設の“あめ”は受け取らない」という強い決意がにじむ。
宜野座村も同様に、再編交付金による事業を新年度予算案に組み込まない方針とされる。
沖縄側の変化と決意を、鳩山政権や米政府に強く突き付けねばならない。普天間の移設先を県内に限定する硬直化した固定観念を沖縄側から突き崩す必要がある。
■知事先頭に意思表示を
県議会、名護市、辺野古区などがあらゆる形、機会をとらえて「辺野古移設、陸上案ノー」を意思表示してもらいたい。
県議会の超党派の行動で思い出すのは、1995年の米兵による少女乱暴事件を受けた県議会、市町村議会の抗議決議と県民大会である。県民一丸の行動が日米政府を突き動かし、米側が普天間飛行場返還の方向性を表明した。
しかし返還は移設条件付きで、日米政府は県外、国外への移設を真剣に検討することなく「名護市辺野古のキャンプ・シュワブ地域への移設」が既定方針とされた。
沖縄の民意は、97年の名護市民投票をはじめ各種世論調査が示すように、当初から辺野古、県内移設に反対であった。民意を無視し、県民の頭越しに辺野古移設の計画が進められてきたのである。
鳩山政権は5月末までに移設先の結論を出すとしている。連立3党の協議や日米の交渉を沖縄側は座して見守るべきではない。
県民意思の原点に立ち、「県内移設反対」「国外・県外移設」を県民一体で日米政府に迫ってもらいたい。
国土の0・6%しかない県土に在日米軍専用施設の74%が集中する異常な現状の中で、危険な普天間飛行場を撤去するのは日米政府の責務であり、代替施設を県内に求めることは道理に合わない。
県議会決議を機に国外・県外移設が譲れない一線であることを確認し、ひるまずに求め続けたい。
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