打倒ダイソー100円ラジオ!

灯台放送受信機の製作

目次
  1. 概要
  2. VFO
  3. ミキサー
  4. 中間周波増幅
  5. 音声増幅
  6. 完成
  7. 参考文献
  8. 課題
  9. 改造とレポート
  10. 周波数カウンター
  11. LA1265
  12. LA1265の問題点
  13. 改良
  14. 改良その二
  15. ノイズ源の特定と排除
  16. 改良その三
  17. 改良その四
概要
 ここ最近、フリーマーケットに足繁く通っている。ダイソーの100円ラジオをゲットしようというのだ。しかし、見つけたダイソー100円ラジオはなんと300円のプレミアム・プライス。確かに価値としては300円以上あると思うのだが、100円で売られていたものが300円では買う気が失せる。

 そこで手持ちの部品をかき集めて中波ラジオを作ることにした。

 製作の目標は
 上記の性能を満たすため、
 アナログの高周波回路はろくに成功した試しがないので、各ブロック毎に製作して、動作検証を確実に行いたいということもある。後に各ブロックのグレードアップなども容易に行えるので、これで良いだろう。
VFO
 本来531KHz〜1700KHz程度の受信範囲なら、986KHz〜2155KHz可変範囲のVFOが必要となる。1MHz以上の広範囲に及ぶ発振器であり、安定度など難しい問題を孕んでいる。とりあえず0から設計するよりは先達の回路を参考にさせていただくのが得策だろう。
 そこでVFOで検索してヒットしたこちらのページを参照し、VFOを作ってみた。提示されている回路は2MHz帯のVFOで、製作するラジオにマッチしている。問題は可変範囲が105KHzと目論まれていることで、要求値の1MHzの1/10にしかならない。

 参照した回路ではバリコンが80+24pF、コイルは26μHと小さな物であるから、これを中波用の270pF程度のポリバリコンと、中波の局発用「赤コア」のコイルに置き換える。

 しかし手持ちのFETを使い同じ回路を再現してみたが、発振しない。FETのIDSSにも満たない1mA以下の電流しか流れていないのだ。型番は失念したが、このFETの特性に問題があるかゲートが破壊していると判断し、ジャンクショントランジスタで再構成することにした。だがトランジスタでも問題が起き、大電流を流してもしょうがないだろうと、全電流値数mAでドライブしてみたが、発振しない。ここで一度投げ出したが、コレクタ電流を10mA程度流すことで発振に成功。可変範囲は赤コアを全部入れた状態で995KHzから500KHz程度、抜けそうなぐらいコアを出して最高2.7MHz程度までになった。

 可変範囲は500KHz程度となり、ラジオ・マヤーク〜TBSまではカバーすることが出来るし、高くして文化放送〜灯台放送を何とかカバー出来そうだ。

VFOの発振の様子。ポケコンで受信周波数を確認している(まだツールを開発していない)。
ミキサー
 ミキサーはDBM(ダブルバランスドミキサー)を用いる。バッファアンプに高周波と局部発信周波をぶち込むと、何となくfLO±fが出てくるのは潔しとはいえない。混雑した一般道を、飛ばして、すり抜けしまくったら早く着きました的な、何とも言えない違和感があるのだ。早く着きたいのか、飛ばしたいのか、すり抜けしたいのか、ハッキリしろと言いたいわけだ。
 そこで出川雄二郎が編み出したとされる混合専用のデバイス・DBMを用いる。これは増幅するわけではない(むしろ減衰する)が、美しく混合してくれる。むしろ混合しかできないのであり、ffLOを加えるとfLO±fが出てくるしかないのである。

 本来DBMは50Ωでインピーダンス整合されているのだが、参考文献の回路を抜き出して作ったので、アンプに関しては問題ない。問題は混合出力をそのままセラミックフィルターに加えていることで、ここで整合が取れなくなる。おそらくセラミックフィルターの入出力インピーダンスは1KΩはあろうかと思われるのだ。手持ちのIFTの関係でセラミックフィルター直づけしか方法が無かったので、しょうがない。
 よってDBMから中間周波増幅段の間でインピーダンスの不整合があり、これが性能に悪影響を及ぼしていると思われる。

 DBMの出力にゲルマニュウムダイオードとクリスタルイヤホンを繋いで、SG(シグナルジェネレータ)から信号を入れてみると、ダイレクトコンバージョン(搬送波と局部発振を同じ周波数とし、変調波から直接音声信号を取り出す方式)出力が一番大きく、fLO±fは結構小さい。周波数混合はうまく機能しているようだ。

 もったいない気もするが、キャリアを含むAM波の場合、fズレでビートノイズが発生し耳障りなので、ダイレクトコンバージョンは諦めスーパーへテロダインにする。なお、局部発振器にはバッファアンプをつけるべしと文献にあるので、バッファを一段追加した。

VFOとバッファアンプ、ミキサー
中間周波増幅
 DBMとセラミックフィルタ(CF)を通し、455KHzとなった放送波はそのままでは弱く、選択度も良くないので増幅する。当初全てディスクリートで組むつもりで初段をDBMの直ぐ隣に組んでみた。これだけでもストレートラジオでは聞こえなかった栃木放送・足利放送局が受信出来るので、成功ではある。しかし、NHK東京の300KW、500KWと栃木放送の100Wでは音声出力に差がありすぎる。このためAGC(オートゲインコントロール・自動利得制御)増幅段が必須となる。弱い信号は大きく増幅し、強い信号はあまり増幅しないことで音声出力をある程度一定に保とうということだ。

 このAGC回路をディスクリートで組むと部品点数がかさみ、失敗のリスクも高くなるので、先日廃棄処分したラテカセから取り出しておいたAM/FMラジオ用IC・HA11123を利用する事にした。

 この日立のラジオICはFMの中間周波増幅、検波とAMの局発/混合と中間周波増幅の機能を持つ。日立のラテカセのラジオ部分はテレビと同居しているためか、感度・選択度ともに優れた物ではなかったので、あまり性能的には期待出来る物ではない(データシートを見ても高感度ではない様だ)のだが、高周波増幅段、中間周波増幅のプリアンプを併用しているので音質はともかく、高感度にはなるはずである。また、選択度はセラミックフィルター二つを用いることで向上するはずである。

HA11123ブロック図

HA11123で利用した部分
本来はHA11123のポストアンプとしてディスクリートの中間周波増幅回路を組むべきであるが、設計変更により、プリアンプのママである。これは良い方法とはいない。なお、IF初段とHA11123は別基板に組んだ。DBMの基板には高周波増幅段を実装し、別途同調回路を設けなくても、そこそこのラジオになる。しかしVFOのスプリアス成分が意外に大きいらしく、ラジオ日経が受信出来てしまうので、フィルターとしての同調回路は必須である。

VFO、ミキサーとIF初段までの回路
音声増幅
 音声増幅は初めからNJM386Dを用いて実験していた。8pin DIPで1W弱の音声出力を得られ、なおかつ増幅度が高い上部品点数も少ないので、このようなラジオには打って付けのデバイスだ。何も新日本無線製品が一線を画す、などとオカルトチックなオーディオマニアのようなことを言うつもりはないので、互換品でも十分だ。

 HA11123のリファレンス回路をそのままコピーし製作した回路で、いい音が出るはずであったが、高周波増幅回路とIFプリアンプによる高域のノイズは耳障りであり、なおかつ小口径の防水スピーカーは低域がまったく再現されないので、最終的にスピーカーに並列にハイカットコンデンサをつけることになった。

 なお、音声ボリュームはAカーブのバリオームが無かったのでBカーブを流用。そのため、人の聴感にはマッチしていないが、音声出力を可変出来るので問題はない。
完成
最後に、これも手元に転がっていたケースに組み込んで一応の完成である。

つまみは左から
プリセレクタ
音声ボリューム
チューニング
最終的にバリコンのつまみを換え、バーアンテナも組み付けて実用的な物にした。

実用的なダイヤルに換え、バーアンテナを本体に組み付けた。

今回製作したラジオのブロック図
 受信範囲は540KHz〜1000KHz程度、主な可聴放送は540KHzのNHK、549KHzと576KHzのマヤーク、558KHzのラジオ関西、594KHzと693KHzのNHK、657KHzの朝鮮中央放送、765KHzの山梨放送、774KHzのNHK秋田第二、783KHzのRadio Lemma、810KHzのAFN東京、954KHzのTBSなどであるが、その他多くのNHKや中国・韓国・北朝鮮の放送が聞こえる。

 ただし、621KHzや720KHzは無変調(VFOのスプリアスだろう)で抑圧される。検閲が入っているのか自主規制なのか…(追記:後にこれはスイッチングレギュレータ電源の発するノイズだと判明)

 日中に、かなり弱く山梨放送が受信出来ることが確認できたが、864KHzの栃木放送・那須放送局は現在確認出来ていない。これは松下のR-1400でもカスカス、ダイハツカーラジオでもほとんど確認出来ないので仕方がないところだが、何とかしたいところだ。

 ただし、中波帯では自然雑音が高めな上、モデムやPCの発するノイズが部屋中に蔓延しているので、高周波増幅段を強化したり、中間周波増幅段を強化することには限界がある。このため、現在カーラジオのプリセレクタに使っている、フェライトコア三本を束ねたバーアンテナを流用することも視野に入れている(ただし現状ではインピーダンスマッチングが取れていないのか、入力が過大になるのか、感度上昇にはいたっていない)。強化バーアンテナがうまく機能すれば、ノイズをそれほど拾わずに放送を拾うことが可能になるはず…である。

 総じて100円ラジオの性能は超えていそうだ。また2,000円程度の松下ポケットラジオ(ワンチップラジオ)と比べても、感度、選択度は優れているが、R-1400やカーラジオの性能には今ひとつ及ばないようだ。RAD-S312Nに迫る物と言えるだろう。今後ファインチューニングを施せばRAD-S312Nを超えるかもしれない。

 当初の「灯台放送受信機」という目的は現状では達成されていないが、高感度受信機を作製するということは出来た。何よりアナログ高周波回路が完成した事は大きい。こんなラジオでも自分の手で完成された物だと思うと、一日中放送に聞き入ってしまいそうになる。
参考文献 
課題
  1. VFOの周波数範囲が狭い。
  2. VFOを高い周波数にシフトすると感度が低下する(VFO出力低下?)
  3. VFOのスプリアス成分が大きい(多い)。(追記:これはスイッチング電源のノイズと判明している)
  4. ノイズが多い(IFアンプの構成を変える必要?)
  5. 二つ目のセラミックフィルタの帯域が狭すぎるので、選択度は高いが音がこもる(VFOの安定度を鑑みれば、もっとブロードで良い)。
  6. スピーカーが小さくプアなので音が悪い(外部スピーカーで改善?ますます通信型受信機だw)。
  7. IFTをなるべく用いない構成としたのでインピーダンスマッチングが取れていない(Qの低下?)。感度が上がる可能性がある。
  8. ラジオの中に小動物が棲んでいる。確認出来たところではイヌ、ネコ、ヒヨコがおり、口笛を吹く男も住んでいる。ワンワン、ニャーニャー、ヒヨヒヨと鳴くのである。これは基板の実装に手を入れてかなり改善した。
 VFOを広帯域にする事は最重要課題である。現状では灯台放送を聞くことが出来ないばかりか、中波の放送帯域をカバーしていない。DDSなどの最新デバイスを用いて長波から短波までカバーすることも可能だが、手持ちの部品を用いてそこそこ高性能なラジオを作るという当初の目的を逸脱する。今後1MHz以上カバー出来るVFOに改造する必要がある事は明白だ。モジュール構成なのでこの点は難しいことではない。

注)その後元ネタの回路をバカ丁寧にコピーしたため、バリコンに並列につけるコンデンサが大きすぎたことが原因と判明。68pFを7pFに小さくしてこの問題は解決した。

 なお、中波ラジオ用のバリキャップを入手出来れば、かなりクリチカルなチューニングも可能となるため、今後の課題である。安物のポリバリコンでは周波数をリニアに変えることが出来ないが、バリキャップを使うと電圧と周波数がほぼ比例する。このため、電圧調整にBカーブのボリュームを選べば周波数のリニアリティーをある程度保てるだろう。
 また。高い周波数帯でのノイズ増加と感度低下の問題は解決されておらず、今後の課題である。また同時に発振気味となるので高周波増幅段にダンパーをつけるなどの対策が必要かもしれない。
改造とレポート
 その後、バーアンテナを120mm一本から185mm三本の手巻きの物に換えた。これは従来ダイハツカーラジオのプリセレクタに使っていた物の二次コイルを巻き直した物。基板をアルミフォイルでくるんで発振対策したり。

 この状態でファインチューニングを施し、受信した結果は以下の通り。(12/10 1000JST〜1120JST)

765KHz  山梨放送 2
864KHz  栃木放送・那須 1
1062KHz 栃木放送・足利 4
1224KHz NHK第一 岩手or石川or広島 1〜3
1332KHz 東海ラジオ 3

もちろんこの他にNHK東京、AFN、TBS、文化放送、ニッポン放送は入る。ラジオ日本は結構怪しい。1530KHz栃木放送・鹿沼が入らないと1,000円のポケットラジオに劣るのだが…オマケとしてVFOのスプリアスによると思われるラジオ日経第一・第二も受信出来た(笑)。

 バーアンテナの強化は感度上昇に寄与しているようだ。特に高域での感度上昇が実現出来たと思われる。

 ちなみに2SC2570のIFプリアンプを省略し、HA11123のIFアンプにミキサー出力を直接繋ぐと、非常にS/Nが良く、クリアな音声を聞くことが出来るが、感度は悪くラテカセそのままの状態である。
 いっそのことIFプリアンプを省略し、LMF501をIFポストアンプとして繋げたらどうだろう?

LMF501をポストアンプにする
 LMF501はRFアンプとAGC回路と検波回路が備わった三端子ラジオICだ。出力は検波されてしまうのでプリアンプには使えない。利得が70dB程度あるようなので、発信の虞はある物の、ディスクリートのトランジスタアンプよりはトンチが効いている。HA11123は20〜30dBの利得があるようなので、総合すると90〜100dB近くになる。これで2SC2570一石よりもローノイズならば、感度上昇とS/N比の改善が期待出来る。RFアンプといってもコイルを用いている訳ではないので、放送周波数帯よりちょいとばかり低い455KHzを増幅させても(依然として発振の虞はある物の)問題ないだろう。

 欲を言えばディスクリートで組んであるRFアンプも高利得の素子に換えたい所だが、まずはLMF501 の導入で様子を見るのが吉だ。

 もう一つ、VFOの出力にAGC(というかALCというか…)のアンプを繋げて、出力変動を抑えた方が良いかもしれない。現状では1.3MHz以上の帯域で感度低下が著しいが、VFO出力のせいかもしれない(これはオシロで確認せねばならないだろう)。それともVCにコンデンサを繋ぎ、周波数範囲を500KHzx2に変え、中波帯でバンド切り替えという、ますますマニアックな(というか使いにくい)受信機にしてみるのも良いかもしれない(追記:この時点でバリコンのQ低下やフェライトバーアンテナの表皮効果について思いが及んでいない)
LMF501を買う前に…
 その後、LMF501を買いに行く前に、HA11123の等価回路図を眺めていて、ハタと気付いた。このICには局部発振器兼ミキサー段が入っているのだが、よくよく見るとこの段にもAGCが来ているし、発振出来るということは増幅器なのである。

 というわけで、これを単なるAGCアンプとして活用することにした(本来は局発出力もAGCでレベルを均一化するのが正解ではあるが…)。

ミキサーをアンプとして使う
現在の構成
 実は、結構感度が上がっていたモノの、ノイズが酷い状況だった。この状況を打開するためにLMF501を増設する/2SC2570のNFが悪いので撤去、という方策を考えていたのだが、実はAGC信号のレベルが三段増幅を前提とした設定だったため、二段増幅では不適切な動作をしていたということらしい。

 手早く配線を変更し聴いてみたところでは、感度は上昇している感じだし、S/Nは改善されているようだ。現在720KHzの「ロシアの声」を傍受しているが、非常にクリアに聞こえている。夜間は各地の放送波が飛び交っているので、今後日中にDXヲッチをしてみてどの程度改善されたか評価することにしよう。

 非常に高感度に仕上がったラジオだったのだが、「下手に作ると、複雑な発振器にしかならない」というスーパーへテロダイン回路。ご多分に漏れず、非常に複雑な回路構成を伴う発振器になった(笑)。

 もう、どこをどう手直しして良いのか解らないくらい。一つハッキリしているのは、使った素子が悪いのかどうか解らないが、DBMの変換効率が非常に悪いということだ。そのため高倍率の中間増幅段を必要としており、発振しやすい。

 また、HA11123の音声出力は386の要求する出力に達していないのか、そのあたりも良くなかったようだ(いや、実は使っているスピーカーが非常に小さな口径であり、能率が悪いというだけなんだが…)。

 今後は三洋のワンチップラジオ、LA1265を軸に展開してみようと思う。こいつは高周波増幅段を内蔵し、なおかつ局部発振器にALCを備えており、USバンドや短波帯での使用も考慮されているので、手作りVFOの様に高い方のバンドエッヂでは出力が半分になります(オシロによる測定結果)、なんてことはない。RFアンプのおかげもあり、LA1265の方がHA11123よりも感度は良さそうだし。

 なお、局部発振のALCはデータシートからすると長波帯でも、中波帯比80%〜90%は確保出来そうなので、長波〜中波〜短波のマルチバンドラジオに発展出来そうだ。
 感度が足りなければLA1265に高周波増幅とか、中間周波増幅を足してやればいいのだ。まぁ、それがまた"発振器"への階段を上ることになるのだろうが…

 だが、まずはリファレンス回路通りに組んでみて、評価した上で他のバンドへの展開を図るのが正しい道だ。
周波数カウンター
 周波数カウンターをつけると、自作ラジオでもちょっと高級感漂う中華ラジオのような雰囲気になる。アナログVFO+ディジタル表示という、20年以上前のBCLラジオだ。

 だが、いつの間にか秋月から周波数カウンターのキットが消えていた。今やDDSを使うことが当たり前となり、PICなどによるIFオフセットが完璧なカウンターを手軽に自作出来る時代だからか…

 そこで検索してみると、こちらのページに二進表示の周波数カウンターの製作記事がある。元ネタは違うページなのだが、回路図が見辛かったりするので、こっちのページの方が良い。秋月以外のキットもある様なのだが、結構な値段がするしオーバースペックだ。とりあえず2.5MHzもカウント出来ればよいのだから。

 で、実際に組むとしたら二進表示では実用性がないので、10進表示にしたい。ICの数をなるべく減らして作るには、ダイナミックドライブの4553を使うのがよい。一度製作したことがあるので再現性が高いだろう。MC14553のデータシートを見ると、カスケード接続で6桁表示のカウンターの回路が載っている。

 参照したページの2進カウンターをこの4553を使った10進カウンターに置き換えてやれば良い。なお、MC14553は10V駆動で5MHzのカウントパルスを処理出来るようなので、74HC00を使わずに4011を使えば2.5MHzのカウンターとして動作してくれるだろう。

 参照したページによると250/500Hzに分周したクロックパルスを用いて1KHzの分解能を持つのだから、これを25/50Hzにすれば100Hzの分解能を持つことになる。6桁のカウンターなのだから'12MHz345KHz6'という表示になる(実際には10MHz台はカウント出来ない)。もちろんこれを2.5/5.0Hzにすれば'1MHz234KHz56'と、10Hz台までカウント出来て最適化出来るのだが、リフレッシュレートが低すぎるかもしれない。

 もっともCR発振で原発振を賄おうといういい加減なカウンターにするつもりなので、10Hzの精度が出るなんて事は思っちゃいない。1.6384MHzで原発振を作り、2^15で分周すれば50Hzになる。これだと原発振が100Hzふらついたところで0.003Hzのぶれになるので精度が出ると言えば出るのだが…

 ま、特別な回路を付加するわけではないので局部発信周波数を直読出来るという事でしかないが、側に電卓さえあれば問題ない。灯台放送の様に搬送波周波数が1669KHzで受信周波数が1670.5KHzなんていう放送を聴こうというのだから、100Hzの分解能のあるカウンターは重宝するだろう。局発周波数を2124KHzか2125.5KHzにすればよいのだ。うまくいけば5MHzまでカウントしてくれるので、1.6MHz〜4.5MHzの短波バンドを加えたとしても直読出来るということになる。

 なんといってもLA1265には、局部発信周波数を外部に取り出すための端子があるので、カウンターを容易に付加出来るのであり、局発ALCと合わせてLA1265の特徴の一つといえる(のか?)。

 4553を使う際の問題点は、4553を置いている店が少ないことと、C-MOSロジックICとしては比較的高価であることだろう。

 LA1265でちゃんとラジオが出来た暁には是非とも作りたい(追記:手持ちのICが壊れていたのか、単に実装が悪いのか、はたまたゲート回路の設計が間違っているのか、単純なカウンタにはなったが、周波数カウンタには未だなっていない)
LA1265
 ようやく秋葉原に行く機会に恵まれたので、千石に行ってLA1265を入手した(なおLA1265は2010年3月を持って生産終了らしい。定番のLA1600も同時に打ち切るようだ)。もちろんIFTセットなども同時に入手したのだが、ウチに帰ってきて大変な事実に気付いた。LA1265のピンのピッチが2.54mmではないのだ!かといってハーフピッチでもない。1.78mmだ!!このため、LA1265は万能基板にそのままでは挿せない。計画が頓挫してしまう…
結局、ICソケットに錫メッキ線を挿して、LA1265の足に半田付けすることにした。
足が長くなることで周波数特性が悪化するのだが、致し方がない。こうしなければ使えないのだ。このピッチの違いにあらかじめ気付いていれば、1.78mmピッチの基板を用意した物を!

追記:マルツパーツ館にてサンハヤトの1.78mmピッチ基板を扱っているようだ。しかし…ガラスエポキシで高価な上に少々小さい。この基板を使うときには10mm角のIFTでないと足が刺さらない。しかし10mmのIFTは7mmよりも少々安いのは救いだ。
 製作する回路はデータシートのリファレンス回路をほぼそのまま使うことにする。基本性能も解らず下手に改造するとタダの発振器になってしまうのはHA11123で経験済みだ。ただしFMのIF〜検波段は使わないので、割愛する。
パーツのレイアウトはこんな感じになる。基板用エディタを入手していたがイマイチ馴染めないのでDRAW系ツールで作成した。簡単に裏面にしたり表面にしたり出来るので便利だ。実際には万能基板なので、こんな立派なグランドパターンはないのだが…

この作業は効率よく組み立てるために是非やっておかなければならない。そうでなければ効率が悪いだけでなく、誤結線でICを壊してしまうかもしれないからだ。
 ひとまず完成した基板。これにNJM2073DのBTL接続のアンプを載せて動作状態となる。まずはクリスタルイヤホンを接続し、バリコンで局発を構成してアンテナ入力に同調回路をつけずリード線を繋いで聞いてみる。実にこれだけでもラジオになったのは少々驚いた。HA11123よりは性能が良いだろうとは思っていたがかなり期待出来そうだ。

 相変わらずバーアンテナに繋ぐ同調用バリコンと、局部発振器のバリキャップは非同期であり、手軽にチューニング出来る代物ではない。TS-520などの古い無線機のように「チューニング」と「プリセレクト」が独立しているのだ。これはトラッキングの苦労がない代わりに頻繁に受信周波数を変えようという気にはさせてくれない仕様だが、メーターやダイヤルが多ければ多いほど充足感を覚える類の人にとっては何の問題もないことだ(二連親子バリコンを使うと簡便ではあるが、手間をかけてトラッキングを取ったとしても全帯域で完全にトラッキングが取れるわけではない。それならば「チューニング」と「プリセレクト」を分けてしまえば、煩雑さ代償として全帯域で最適化が図れるハズだ)。

 バーアンテナに自作三本コアを用い、バリコン同調/バリキャップ選局という構成にしてみたが、いや、これはものすごい。夜間ならガンガンに入ってくる。低周波域の感度なら松下のBCLラジオ・R-1400に迫る物がある。しかし入力が過大なので、バーアンテナの二次コイルを巻き直す必要があるかもしれない。

 バリキャップの選局はなかなか面白い。安物のバリコンになれていると、低い周波数では楽に選局出来て高くなるほどクリチカルになるのだが、ほぼ一様であり、違和感を覚えるが、高い周波数での選局は楽になる。
 なお、今回は1SV149を対面直列にし、カップリングコンデンサを排除すると共に、可変範囲を適度に抑えることにした。

利点はバリキャップを使うことで高周波部の取り回しが短くて済むことと、周波数ピッチが高周波域で狭くならないこと、多回転型ポテンシオメーターを使うことが出来ること(バーニヤダイヤルよりも安く済むが、同時に周波数カウンタがないと選局に手間取る)。
 それでも局発周波数は600KHz〜2285KHzまでになり、150KHz〜1800KHzまで連続受信可能だ。バリキャップを使うときは印加電圧と最小容量を気に留めれば良く、最大容量が要求する物より大きければ問題ない。ボリュームを絞ったとき、半固定抵抗で適度な電圧を印加してやれば最大容量を小さく抑えられるからだ。

 今回は受信側の同調回路を複数用意するわけでもなく、基本回路での受信性能確認なので、受信範囲は520KHz〜1800KHz程度に抑えた(1.8MHz帯のCWも結構入っていた)。同調回路もバリキャップにすれば、連続受信出来そうな物だが、局発に比べダイナミックレンジが大きくなり、小細工しないとバリキャップでカバー出来そうもない。そのため、長波受信については後回しにする。

 バーアンテナの二次コイルを巻き直さないといけない(NHK東京が被ってしょうがない)が、巻直さない方が感度は良さそうだ…どっちにした方が良いのだろう?とりあえず549KHzのラジオマヤークや、657KHzの平壌はバリバリに受信出来る事は確認出来た。在京民放も問題ないし、558KHzのラジオ関西も良く聞こえた。

 なお、灯台放送についてはまだ受信出来ていない。性能的には聞こえても良さそうなのだが…

 自作VFO+HA11123の性能が苦もなく実現出来ているところが何とも言えない…あの苦労は何だったのか?というぐらいだ。LA1265はなかなか高性能だ。
LA1265の問題点
 LA1265の最大の問題点は「ピンピッチが1.78mm」ということ。基板をエッチングするにしても大変そうだし…0.5mmの穴を1.78mm間隔で空けなければならないのだ。是非とも三洋には2.54mmピッチバージョンを出していただきたい。その他は及第点以上だ(1.78mmピッチの基板は高いのだ!紙エポキシの秋月基板を買う人間にとって、サンハヤトのガラスエポキシは幸寿司でお任せの握りを頼むくらいの覚悟が要る)。

 特に低周波域においては素晴らしい感度を見せ、ラジオマヤーク(549KHz)の受信では確実にポケットラジオを凌いでおり、R-1400に迫る物がある。リファレンス回路よりもセラミックフィルターを一段少なくしているにもかかわらず、AFN(810KHz)とラジオリェンマ(783KHz)は〜完璧ではないが〜分離する。

 ただし高周波域での感度低下は依然として解消出来ていない。

 先のHA11123で組んだときにRFアンプを使ったので、発振防止にバーアンテナと回路の間にシールド線を用いていたが、まずこれが感度低下の一因だった(低周波用のシールド線だった)。これを普通のビニール線に変え、長さを短くすることで結構改善されたのだが、灯台放送はうまく受信出来ていない。R-1400でハッキリ聞こえる「はちじょうじま」がカスカスに聞こえた程度だ。

 アンテナコイルのチューニングにバリキャップを用いたところ、やはり高周波域での感度程度が著しかったので、もしかすると局発のバリキャップのQ低下がALCの補正レベルを超えているのかもしれない。

 アンテナコイルのVCの容量が小さく、Lが相対的に大きすぎるのが原因かもしれないし、コイルの作り方がまずいのかもしれない。RFアンプをつけるかどうか迷うところだ。同調時のアンテナL,Cのリアクタンスは530KHzで1155Ω、1669KHzで3637Ωと3倍以上になる。このあたりは再検討を要する。

 もう一つ、受信インジケーターのLEDのスイッチングノイズが大きい。 これはLEDに流す電流が大きすぎることが原因かもしれないので、改善の余地がある。

 今ひとつはLA1265のせいではないのだろうが、局発の周波数ドリフトが大きい。LED5個とSi-Diで定電圧化を図ったが、うまくいってないようだ。ここは電源電圧を三端子レギュレーターでさらに安定化する必要があるだろう(その後LEDの発する熱量が思いの外大きく、筐体内部が熱平衡に達するまでのドリフトだろうと結論づけた。バリコンではなく半導体のバリキャップでのチューニングということが裏目に出たようだ)
改良
  1. セラミックフィルターをリファレンス通りに二段にした。全体に発振気味だったのは中間周波増幅段への入力が過大になっていたためかもしれない。少し改善された。そしてAFNとラジオリェンマは完全に分離するようになった。感度が若干低下したが、高感度過ぎてフィルターを通り抜ける信号があったり、ノイズが増えるだけよりはマシである(しかし挿入損失が大きくなるので、微弱信号を拾いにくくなったのは確かだ。むしろS/Nが良すぎると言った方が理解しやすいかもしれない)。
  2. 高周波域での感度低下について、Sメーター出力にテスターを繋いで確認したところ、Lが大きい場合約2.8「V]だった1.7[MHz]付近の信号は、Lを1/3程に小さくした場合3.05[V]程になった。このことからアンテナ同調回路のインピーダンスの高さ(あるいはQの低下)が受信効率の点で問題になっていることが解る。対策としてバーアンテナのコイルの1/3程の所にタップをつけ、スイッチで切り替えるようにした。この改善のおかげか、灯台放送の「はちじょうじま」がフェーディングを伴いながらもハッキリ受信出来た。
  3. バイパスコンデンサの増設と、セラミックフィルタの増設で、チューニングLEDのスイッチングノイズがほぼ消えた。そうでもなかった…orz、ので撤去。
  4. 寄生発振が治まらない。フィルターの接続に誤りが見つかり修正したが、中間周波入力がハイインピーダンスなのと、アンテナ入力を引っ張りすぎているのが原因らしいが、ICに足を継ぎ足していることも原因だろう。バーアンテナのコイルを巻き直せば改善されるかもしれない。現状では1530KHz(栃木放送・鹿沼)と1669KHz(灯台放送・若干ずれて被るようになった)に寄生発振のビートが載り、非常に聞きづらい(この"寄生発振"の正体はスイッチング電源の発するスプリアス成分であり、三端子レギュレータを使ったシリーズ電源に換えれば発生しないことが判明している)
  5. 灯台放送の受信状況は松下のR-1400よりもS/N比が良く、聞きやすい。感度は同等か少し悪いようだ。ハイウェイラジオは放送を確認出来る程度で、R-1400よりは悪い。
  6. フィルター二段重ねでは、低〜中周波数帯域ではRAD-S312Nと同等の感度以上の感度と思われるが、S/N比は格段に優れており、RAD-S312Nに比べて聞きやすい。これが312NのAFアンプのせいなのか、RF段を担うICのせいなのかは解らない。自作機はAFアンプにヘッドホンアンプにも使われるNJM2073Dを使っているせいもあり、S/N比に優れているようだ。

実装後外観図
(栃木放送・足利を受信中)
相変わらず小汚い仕上がり(笑)。ラダー型A/D変換とC-MOSロジックでSメーターを作った(ラジケーターを買い忘れたw)が、コンパレーターではなくタダのインバーターなのでアナログチックな表示。その上、A/Dコンバーターがリニアスケールなので単なる電圧計だ(笑)。ポータブルラジオでおなじみのチューニングインジケーターは、超高輝度のLEDを使ったら眩しくてしょうがないので、ケースの中に押し込んだ(その後撤去)。

NJM2073DのBTL接続のアンプには4Ωでも8Ωでもイマイチで、32Ωのスピーカ−を使用。結構厚みがあるのでケースに収まらず外から取り付けた。無理矢理中に入れるとIFTやOSCコイルに(電磁的に)干渉し、動作不安定となる。部屋に転がっていたケースの使い回しなので贅沢は言えない(その後、耐入力が小さなスピーカーを使ったことで起きたイマイチ感だと判明している)
 改良後の受信レポート(主な局)
 晩と日中に確認したところ、苦労して発振器になる寸前のHA11123を使った第一号機に迫る受信性能であることが解った。特に山梨放送や栃木放送・那須が(季節のせいもあるが)結構クリアに入ったので、まぁそこそこの性能といえるだろう。少なくとも「500KWのNHKすら入らない」という状態ではないので、ちゃんとラジオとして成立している。
改良:その二
  1. セラミックフィルターを挟帯域の物、一段に変更した。これで減衰量が減りS/Nは悪くなり選択度も低下するが、感度は上昇する(不感帯でノイズがでないと、アンテナチューニングを取りにくいこともある)。これでしばらく様子を見よう。
  2. LA1265へのアンテナ入力のパターンを短くした。感度低下と寄生発振に若干の効果が認められた。
  3. ポリバリコンを、秋葉でどこでも手に入る260pFのポリバリコンから、ALPSの物に換えた。これはかなり効果があり、高周波帯域での感度低下が改善された。有名ブランド品にはそれなりの価値がある。安い中国製品には期待してはいけない
  4. 足を継ぎ足して周波数特性が悪化しているだろうLA1265の上にシールド版を貼り付けた。特性は変わってしまうだろうが、発振対策として多少の効果が認められた。
  5. その後セラミックフィルターを二段にしたが挟帯域と広帯域の二段なので、フィルター特性が「階段状ピラミッド」みたいだ(笑)。広帯域二段で良かったかもしれない。リファレンス回路ではセラミックフィルターを47[pF]のコンデンサーで繋いでいるのだが、455[KHz]では7442[Ω]となり、少々リアクタンスが大きすぎるのが、不感帯での信号を微弱にしているので、これを大きな物に換えた。
  6. アンテナコイルを巻き直した。当初LW用に密巻にしたものをほどいて使っていたのだが、これが線間容量を大きくさせており、高周波帯域での損失を増大させていたと考えられるので、疎巻にして線間容量を減らした。これにより巻数が51回から70回に増えた。
  7. ピックアップコイルを密巻8回から疎巻20回に巻き直した。これにより分離が少々悪くなるかもしれないが、周波数特性の改善とICへの入力信号の若干の増加を見込める。バリコンの交換、アンテナコイルとピックアップコイルの巻直しにより、高周波帯での信号低下はかなり改善されたと思う。
  8. 依然として問題なのは要所要所で発生する寄生発振(スプリアス?)のスペクトルで、これが灯台放送をはじめ、中波帯にいくつも現れジャミングと化すことだ(何度も書いているがこれは電源の問題だと判明している)

ケースを換えてラジオらしさを演出

 改良を施し、何とか当初の目的であった灯台放送が受信出来た。なお、低周波域は531KHz以下も受信出来、アンテナコイルを少々巻足したこともあり500KHz近辺のAFSK?放送(ヒョロロヒョロロ)も受信出来る。今後は同調回路さえLWに合わせた物を用意すれば長年の懸案だった長波受信も不可能ではなくなる。2009年は長波受信に挑もうと思う。

 なお今回の作業にあたり、LCF_CALC.exeを大幅にバージョンアップし、LCFXCALC.exeにした。
この『同調回路電卓』では「Lが固定で周波数1と周波数2の間で同調する静電容量」などを求める事が可能で、必要な静電容量を満たすバリコン周りのコンデンサの組み合わせ(VC MATRIXとした)を求めることが出来る。

この他にもμ同調用に、Cを一定にしてLの値を求めたり、C,L,Rの直列・並列値の計算、逆演算も可能である。また、中間周波数と受信周波数から局発の周波数を求めたり、局発周波数からL,Cを再計算する事も可能である。

もちろん単にL,Cの同調周波数を求めたり、L,fからCを求める事も可能であるし、fとLやCからリアクタンスを求めることも可能である。

つまり
  1. アンテナコイルのインダクタンスを入力
  2. 受信周波数範囲を入力
  3. 同調コンデンサの値を計算
  4. 手持ちのバリコンに付加するコンデンサの容量を計算
  5. 局発周波数範囲を計算、代入
  6. 局発コイルのインダクタンスを入力
  7. 局発コンデンサの容量を計算
  8. 手持ちのバリコンに付加するコンデンサの容量を計算
という一連の計算が、手軽に出来る。これで電卓やポケコンのキーを酷使する必要は無くなるのである。

 難点はVC MATRIXの計算で10,000回ループを数度行うので時間を食うことだ。これはバリコンに直列に繋げるコンデンサCsを1〜10,000[pF]まで計算し、並列に繋げるコンデンサCpの最適値を求めるためだ。頭があまり良くないので、二項式の最適値を求める方法を知らず、実際に計算させるほか無かった訳だ。

 バリコンに並列に繋げるCpと直列に繋げるCsを計算するにあたり、CpからCsを求める場合と、CsからCpを求める場合とでは後者の方が最適値を求めやすい。

 このため、Cs:1[pF]〜10,000[pF]についてバリコンの最大容量と最小容量でのCpを計算し、Cp_maxとCp_minの差が一番小さくなるCsを最適値としている。無茶な組み合わせや1[pF]未満となる値については、エラーを吐いたりnullを出力する。厳密なエラーチェックは行っていないが、Delphiでは無茶な演算を行ってもプログラムが落ちるわけではないので、放置している。
ノイズ源の特定と排除
 懸案だったノイズ(というか無変調の、スペクトルが立っている状態)について、原因を特定出来た。

 回路の実験には常々、現役を退いたアイオーデーターのCD-ROMドライブのガワとそれに付随するスイッチング電源を用いている。これは+5[V]と+12[V]を使用出来、ショートしてもプロテクションが効いているので安心なのだ。

 自作ラジオにもこの電源を使っていたのだが、621KHzの朝鮮中央放送や720KHz付近、その他茨城放送や灯台放送近辺にこのスペクトルが立ち、DXを見据えて製作したラジオが台無しになっていた。

 またこのノイズはLA1265を触ると減少するので、IC内部の寄生発振だと思いこんでいたのだが、FM回路の入出力にバイパスコンデンサを繋いだり、回路定数を一部変更してみてもスペクトルにほとんど変化がないこと、また他のラジオでも同じ周波数にスペクトルが立っている事から、電源を三端子レギュレータを使ったシリーズ電源に換えてみたことろ、ぴたりと止まった。

 その効き目はガマの油を遙に凌ぐ。

 これにより非常に受信がクリアに出来るようになり、スペクトルに阻害されることもなく、LA1265本来の性能を堪能出来るようになった。

 灯台放送について、1669KHzを受信するように設計されていないRAD-S312Nより、受信感度が高いことが改めて確認出来た(もとよりS/N比が悪い312Nでは同じ感度だったとしてもLA1265機の方が有利なのは自明ではある)。

 「寄生発振」などとLA1265を不当に評価していたことをここに明記し、訂正しておきたい。
改良その三
 バーアンテナのコイルを巻き直した。従来0.4Φのエナメル線を単線で巻いていたのだが、高域での感度低下が(かなり良くなってきてはいるモノの)依然として目に付くので、これを四本縒り合わせリッツ線もどきにした。
 撮影後、ピックアップコイルも四本縒り線に換えた。

 高周波では表皮効果といって、導体表面にのみ電流が流れる現象が起きる。このため細い線を使っていると銅損が増えてしまい、Qが低下する事になる。リッツ線はこれを軽減するために用いられる線材で、細かい縒り線を絶縁し束ねた物である。今回これと似た事を単線のエナメル線でやってみたわけだ。

 単純に考えれば銅損は1/4に低下するはずなので、それなりに効果は期待出来るはずだ。しかし細かいことを考えるとキリがないので止めるのが吉である。

 なるべく疎巻にしたが、あまりコイル長が長いと漏洩磁束が増えるし、かといって密巻きでは線間容量によるQの低下が明らかなので、悩ましいところだ。 今回は僅かに密にし、70回から66回ほどに巻数が減った。これでも500KHzちょっとで同調するのでもう少し巻数を減らしても良かっただろう。

 必要最小限のインダクタンスにする事は、Qの低下を最小限にすると共に、高域でのアンテナ同調バリコンの操作性を確保するためでもある。高級品のバリコンは(ちょうどバリキャップを使ったように…)軸回転角度と周波数変化がリニアになるというが、今回使ったPVCではその様に作られてはいない。よって高周波域での操作困難性を少しでも減らすために、インダクタンスを最小にする必要があるわけだ。

 これで表皮効果がどれだけ軽減されたのか、定量的には解らないが、864KHz,1530KHzの栃木放送や1197,1458KHzの茨城放送がよりクリアに入るようになり、灯台放送も今までノイズに埋もれていた局も聞こえるようになった。

 時間や窓際かベッドサイドかにも依るが、朝方4時台の「はちじょうじま」は最大でS4ほどで強力に入感(ちなみに栃木放送・1062KHzはS5、山梨放送はS3程度)。今まで聞こえなかった北海道などの局も、Sメーターはほとんど振れないがキャリアだけではなく音声合成の局名アナウンスを聞き取れる程度に受信出来た(Sメーターは専用品ではないので0-10のリニア目盛り、Sメーター出力はノンリニア)。
 改善状況をまとめると
  1. 配線と取り回しを変更
  2. バリコンを高信頼性品に変更
  3. バーアンテナのコイルの巻直し
 この三点で高周波域での感度低下は劇的に改善されたといえるだろう。実に基本的な事なのだが、手持ちの部品でお気楽に済ませてしまおうと考えると、なかなか気が回らないポイントでもある。

 一般にバーアンテナは市販品を用いるだろうが、今回のように手巻きで自作する場合は要注意である。まとめると
  1. 密巻きにしない(線間容量を減らす)
  2. あまり疎巻にすると全長も長くなり漏れ磁束が増えるので、コアいっぱいの幅にはしない
  3. 少し細めの線でも良いが並列にして巻く(バイファラーならぬクアッドファラー以上に!)
 0.5sq程度のビニール線をバケツに巻く、というアンテナコイル製作例があるが、これをフェライトバーアンテナで行うと必然的に密巻きとなり、ビニールの誘電率もかかってくるのでお勧め出来ない。むしろクアッドファラーやオクタルファラーなどの巻き線を利用した方がよい。機械的な強度を持たせる必要はないので、0.3mm程度のエナメル線で良いだろう。あまり太いエナメル線をクアッドファラーにすると、縒りをかける段階で力尽きてしまうだろうし、コアに巻き付けるのにも苦労するだろう。

 なお今回の製作例では四本/6mほどのエナメル線を縒っている。

 今後の展開としてコアの数を増やすことも考えられるが、10本束ねたところでそれほどの効果はないという話もある。むしろ長さ方向に継ぎ足す方が効果があるのかもしれない。ただし現状でもかなりの高感度に仕上がっているし、あまりに長くあるいは重くしてもしょうがないので、コアを増やす改造を行うかどうかは未定である。
 ここまででようやく当初の目的である「灯台放送の受信」がかなったと言えるだろう。
改良その四
だいぶ改善されたがいくつか問題点が残っている。
 電池駆動を考えると100mAは流れすぎだし(どう考えてもどっかおかしい)、周波数がドリフトしまくり、待ち受け受信など不可能だし、ちょいとボリュームを上げると発振するし、チューニングするとピークがいくつも現れるのもおかしい。

 というわけで、各部を煮詰めてみた。
・バリキャップ電源の改良

 バリキャップにかけるチューニング電圧は、5個の赤LEDを直列に繋ぎこれを電源としていたが、周波数変動が大きく、安定するまでに時間を要した。これを7809+赤LED一つに変えた。

 これにより周波数安定度は格段に向上し、電源を入れ直しても同じ周波数にチューニング出来る様になった。

 もともとLED回路では安定度が悪かったことと、赤LEDの発熱(赤外線)が悪影響をもたらしたのではないだろうか?

・動作電流の低減

 これには二つの解があった。一つはLED回路に流れる約10[mA]。これは撤去する事で解決。もう一つはNJM2073DのBTL回路にて、スピーカーに直流がかかり、大電流が流れていたことだ。どうもそれほど音を大きくしていないのにチップが熱いので確認してみたら、1[V]以上かかっていたようだ。とりあえず応急処置として直流カットコンデンサを繋いで急場を凌いだ。

 これにより電流値は100[mA]以上から40[mA]程度になった(AF-AMPをLM380Nに換装後)。

・発振気味/音声の再現性

 NJM2073は低電圧で大出力を得られるが、高利得で低インピーダンスなのが災いしてか、単に実装が悪いのか、ボリュームを上げると発振する。このため12[V]動作が無理なく可能で、ゲインが低めのLM380Nに換えた。また電源のデカップリングに2,200[μF]、380Nの出力につける直流カットコンデンサに1,000[μF]を使用、スピーカーを50φほどから100φ超のモノに換えた。

 これにより発振気味なのはかなり抑えられた上、低音の再現性や効率も良くなり、あまりボリュームを上げなくてもクリアに聞こえるようになった(従来聞き取れなかった720KHz『ロシアの声』と『朝鮮中央放送』が被って聞こえる低周波のビートも聞き取れるようになった、しかしボリュームを絞れるためにそれほど耳障りではない)。

・選択度の改善

 LA1265のリファレンス回路ではIF周波数は450[KHz]となっているが、部品の調達性の良さからセラミックフィルタ(CF)はf0455±2[KHz]のモノを使ったのだが、どうも選択度が悪い〜ピーク(オバケ)が複数出る〜のでおかしいとは思っていた。

 ノイズだけを受信し、IFTを調整、既知の放送を聞くと、どうやらf0=450.6[KHz]あたりのようだ。CFのf0の許容範囲からずれているので想像出来なかったが、チップ自体に選択性があるのか?結局CFはそのままでIF周波数を450.6[KHz]と仮定し、追い込んだ。

 この結果、オバケはほぼ消えたようだし、選択度、感度共に向上したようである。


 これらいくらかのファインチューニングの結果、531[KHz]のNHKから1.8[MHz]の電信を連続受信出来る、LA1265ラジオは一応の完成を見た、と言っていいだろう。最終的にはRAD-S312Nよりも高感度でのラジオになったと思う。部品代で312Nの倍はかかってるしね。

窓際に置いたLA1265ラジオ
 あとは周波数カウンターをつけて、BFOを搭載すれば実用性が増すのだが…どうしよう?
 マルチバンド化して短波を聞こうと思ったのだが、バンド切り替えの取り回しで特性が悪化するので、これはこのままモノバンドラジオにしておこうと思う。短波は別の機会にLA1600+TA7358のダブルスーパーで試してみたい。