奈良市は来年度にも、医師が救急車に乗り込んで現場や搬送の車内で治療する「ドクターカー」を導入する方針を決めた。市東部など、病院から離れた地域での救急医療体制を強化するのが狙い。救命率の向上につながるとして、全国の自治体で普及が進んでいる。同市は、乗り込む医師や運用開始時期について詰めの調整をしている。
市消防局の08年の調査では、通報を受けてから救急車が現場に到着するまでの平均所要時間は8・8分。現場から医療機関到着には、さらに平均25・7分かかっている。
医師が救急車で現場に出向くことにより、治療を始めるまでの時間が約3分の1に短縮できる見込み。市消防局の試算によると、医療機関の少ない市東部では、30分以上短縮できるとしている。
市の構想では、市立奈良病院(同市東紀寺町)に予備の救急車1台を配備。119番通報を受け、緊急性があると判断した場合、同病院総合診療科の医師1人が乗り込み、現場に向かう。現場が遠い場合には、分署から出発した救急車に患者を乗せ、途中で市立病院から出発したドクターカーに乗せ換える「ドッキング方式」を利用するなど、できる限り早く治療を始められるようにする。
市消防局は来年度中の運用を目指して、通信指令システムの改修などを進める方針。市消防局救急課は「今後は救急車に同乗する医師の確保も進め、運用を広げていきたい」と話している。【泉谷由梨子】
毎日新聞 2010年2月25日 地方版