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きょうの社説 2010年2月25日
◎石川県知事選告示 「新幹線元年」に力量問われる
きょう告示の石川県知事選で、県民が選ぶ県政トップの任期は、2014年度末に予定
される北陸新幹線の金沢開業へ向けた最後の4年間とぴたり重なる。石川県にとって、かつて経験したことのないほど貴重な4年間であり、知事の力量次第で、ふるさとの姿は大きく変わるだろう。石川県が大きく飛躍する「新幹線元年」に向けて、しがらみや目先の利害を超え、最も有能で行動力のあるリーダーを選びたい。金沢開業へ向けた足取りは、昨年、新潟県知事が建設費の地元負担金支払いを拒否する 「新潟の乱」で大きく揺れた。新潟県は09年度予算分については支払う意向を示したが、先のことは分からず、まだまだ安心できない。金沢−敦賀間の延伸についても政府・与党は今夏に一定の結論を出すとしており、県政トップには、この正念場を先頭に立って乗り切る強いリーダーシップが求められよう。 景気の低迷による税収減が追い打ちを掛け、県財政は窮状が続いている。新県庁舎や能 登空港建設などの大型プロジェクトに伴う県債の返済も重くのしかかる。旧県庁本庁舎を改築した「しいのき迎賓館」をはじめ、河北門の復元や宮守堀の水堀化など、都心部で進めてきた金沢城公園や県庁跡地の整備が大詰めを迎えるなか、地域に活力を生み出す次の一手をどう打っていくか、知恵の絞りどころである。 地域経済の活性化に向けた中小企業対策や雇用対策、農林漁業の振興策、医療環境の整 備、新たな石川ブランドの創設などを含めて、各候補が掲げる政策について県民が曇りのない目で評価を下してほしい。 谷本県政の16年をどう評価するかという視点も重要である。及第点を付けられるのか 否か、「多選イコール悪」などと短絡的に決め付けるのではなく、もし多選の弊害があるとするなら、どんなところに見られるのか。各候補は抽象論ではなく、具体論をもって主張をぶつけ合ってはどうだろう。 事実上の与野党対決となって注目された長崎県知事選と違って、民主、自民、公明、社 民の4党相乗りの現職と新人3氏の戦いとなる見通しであることから、県民の関心はいま一つのようである。それでも私たちの暮らしに直結する選挙であり、大いに関心を持って各候補の主張に耳を傾け、意中の候補に一票を投じたい。
◎殺人時効撤廃 捜査手法見直しも同時に
殺人罪の時効撤廃を柱とする刑事訴訟法改正案が法制審議会の答申を受けて今国会に提
出されることになった。成立すれば刑事司法の大きな転換点となるが、DNA鑑定など科学捜査の進歩や遺族の心情などを考えれば理解できる方向性である。凶悪犯罪を徹底的に追及する社会の強い意思を示すことにもなるが、現場への影響は小 さくない。警察に求められるのは時間が経過しても色あせない厳格な証拠収集や目撃証言確保であり、そうした初動捜査の基本徹底が早期解決を導くことにもなる。未解決事件を抱えすぎれば現場に大きな負担がかかり、捜査のメリハリも重要になる。法改正へ向け、捜査手法の改善についても議論を深めたい。 答申は人を死なせた罪のうち、殺人など最高刑が死刑の罪は時効を廃止し、無期懲役以 下の罪についても、人命を奪う犯罪を対象に時効を2倍に延長した。改正法施行時点で時効が未成立の事件にも適用するのが特徴である。 遡及適用の可否については、法律を事後につくって処罰することを禁じた憲法39条と の関係で論点になったが、実行時に適法だった行為を処罰するわけではなく、法制審のなかで示された「時効完成まで逃げ切れれば処罰されないという期待は保護に値しない」との見解は一定の説得力をもつ。 一方、日本弁護士連合会は時効撤廃について「長期間たつとアリバイ証明などが困難に なり、被告が不利益をこうむる」と反対してきた。時の流れで関係者が亡くなるなど立証が難しくなることは避けられず、そうした懸念をどのように払拭するかも課題である。 時効制度に関し、民主党は政策集で「検察官の請求で裁判所が時効の中断を認める制度 」を掲げていた。事件ごとの証拠に基づき、判断するのも一つの考え方であろう。憲法との整合性を含め、国会で徹底的に議論する必要がある。
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